第9話 ポンコツ転校生と同居することになりました

 ……グラグラ(家が揺れている)


男子「……地震かな?」


女子「ちょっと揺れたねぇ」


 ガチャ。


母親「大輔! ニュース見た? 学校の向こう側の古いアパートに小さなスペースデブリが落ちたらしいの。住んでる住民は出かけてたらしく、怪我人はゼロだって。でもね、そのアパートは古くて崩壊したらしいのよ。怖い世の中ね」


男子「(スマホのニュースで確認すると、記事が出ていた。画面を覗き込んできたかと思えば、何故か白目をむいて、倒れてしまった佐藤さん。はて……? 一体どうしてしまったのでしょうか。下着になったり、はしゃいだり、倒れたりと理解に苦しむ美少女です)」


女子「…………ぶくぶく……」


男子「泡ふいてる。重傷だな」


女子「……っ……ぁ…………っ……」


母親「大丈夫? 救急車呼ぶ??」


男子「(返答はなかった。が、母親が用意した氷水をおでこにのせると、意識だけははっきりしたようで、口を開いた)」


女子「さっきのニュース、あれ私のアパート…………。両親から離れたくて、引越してきたのにぃ。家なくなっちゃったぁ。公園生活かなぁ。それかぁ駅前で神待ち。人生って何が起きるか分からないもんだねぇ」


男子「(佐藤さんのめちゃくちゃ正気を失った笑顔。哀れすぎて見ちゃいられない)」


母親「佐藤さん、うちにいらっしゃい! 狭い家だけど、困った時は助け合う! これこそが日本人の心よ!」


女子「……っ! 本当ですかぁ? お言葉に甘えていいんですかぁ。山本君はそれでも平気?」


男子「(佐藤さんに見られて、ドキッとした。まだ思考がついていけてない。唐突すぎる。もちろん、佐藤さんとゲームした時間は楽しかった。けれど、まさか、宇宙のゴミが落下して……。まぁ冷静に考えると、公園で寝ると言い出した同級生を無視できるはずもない。母親の部屋で一緒に暮らせばいいだろ)僕にできることならなんでもするよ!」


母親「大輔、よく言ったわ。佐藤さん、辛いでしょうけど、家のことは心配しないで。後、妹の沙織がいるけど、出会ったら仲良くしてあげてね。父は単身赴任で全く帰ってこないの。部屋はそうね、片付いてる部屋がなくて、狭いけど大輔と一緒でもいいわよね?」


男子「っはぁあああ! 絶対あり得ない! 断固拒否する! 高校生の男と女だぞ。無理に決まってる! ただ席が隣ってだけだし」


女子「……えぇっと私やっぱり、公園で生活した方がよさそうぉ。ネズミと一緒に寝るねぇ。まさか私がそこまで山本君に嫌われてるとは、知らなかったなぁ」


母親「泣き出しちゃったじゃないの! あんたのせいだからね! 大輔、あんた最低な人間よ。こんな大変な時に、男も女もないでしょ。佐藤さんは転校してきたばかりで家を失って不安なのよ!」


男子「わ、わ、分かったっ!(……母親と山本さんが僕の返答待ちをしている。こうなったらもう知らない! やけだ!)今日から、山本大輔は――エッチな下心を捨てて、佐藤さんと同じ部屋で暮らすことを神に誓います!(決まった! 今日一格好いいセリフだったな! こんなセリフが言える思春期の男性はいないぞ! 佐藤さんは泣き止み、僕を見ている。お願いだからダサいとか言わないで?)」


女子「山本君ってやっぱり格好いいぃよねぇ。そういうところ、好きだなぁ」


男子「佐藤さんがとびっきりの笑顔を見せた。ってか、あれ? コイツ、こんなに可愛かったっけ?(こうして、僕と転校生の同居生活が始まった。)」


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