第305話「大皇の皇女」
「うう……」
俺は、畳の上に敷かれた布団の上で起き上がった。
そうか昨日は
久々に飲んだ日本酒は美味いけど、ちょっと後に酔いが残っちゃうね。
「あれ、なんだろこれ」
半身を起こした俺の手に、帯のようなものが触れた。
反射的に帯を引っ張ってたぐっていくと……。
「あーれー」
「み、
着物がはだけて、ええー!
この国の
やっぱり着物の下は、下着とか付けてないのか。
「勇者様、
「ええっと……」
いやいや、そんなしなをつくられてもですね。
「昨日は、あんなにも熱く語り合ったじゃないですか」
「え、そうだっけ。昨晩は酔っ払ってたから……」
そこに、カアラがふすまを開けて入ってくる。
「あら、国父様またですか。また嫁を増やしたんですか!」
「いや、違う。これはそういうんじゃないんだ!」
俺が、この国の
何もしてないよ!
俺が焦っていると、カアラとシズカはクスクスと笑いだした。
「な、なんだよ。冗談か。びっくりした」
あんまり冗談になってないような気もするけど。
俺がそう溜息をつくと、薄衣一枚で布団に寝そべる
「あら、冗談じゃないですよ」
「そうですよ国父様」
どうやら冗談じゃなかったらしい。
……って、どういうことだ?
※※※
オオザカの港に浮かぶ黒杉軍船の船上において、シレジエの大将軍である俺と、ヒノモトの元首であるヒノモトの大将軍、ミナモトのヨシイエ公との間に修好通商条約が結ばれた。
俺達が
あとは、カアラの魔法で一気に修理完了。
本当に魔法って便利だなと思うんだが、資材集めることまではできないからね。
ともかく、こうして綺麗に直った黒杉軍船が民衆にまでお披露目された。
オオザカの街の人にも大好評で、黒船を一目見ようとたくさんの観光客が訪れて大きなお祭りになった。
やはり、この
「それでは、調印ということでヨシイエ公もよろしいですね」
条約調印により、俺達が最初にたどり着いたカンドの港と、皇都の近くにあるオオザカの港を貿易港として利用することができるようになった。
ユーラ大陸の東と西に分かれて、かなり距離があるのでゆっくりした交流になるだろうが、これでシレジエ王国との航路が開かれたわけだ。
修好通商のご祝儀として、こちらからは航海地図と黒杉軍船の技術を提供することにした。
「この船をうちの国でも作れるのですか!」
世界地図を見て驚き、船の技術まで送られたヨシイエ公はさらにびっくりしている。
「ええ、さすがに黒杉はこちらでは手にはいりませんが、この船はガレオン船と言います。木材が豊富なヒノモトでも十分作れるでしょう。耐波性が高いこの船なら、世界を半周してシレジエ王国までも来ることができますよ」
「なんと、胸が踊ります。代わりと言ってはなんですが、こちらとしてはあらたに土地を提供したい」
「土地ですか?」
俺が皇都の近くの山地を平原にしてしまった地帯は、タケルヶ原と呼ばれるようになり、大きな未開地として残っている。
その土地を俺にくれるそうだ。
ふーむ、ここまでしてくれるとは思わなかったな。
せっかくなので、新しい佐渡商会の支店を立てて新たな産業を起こし、この国を更に発展させてみるのもいいかもしれない。
「しかし、他国人の俺が首都の近くの土地をもらってもいいんですか」
「なんの
「えっ、夫?」
「契りを交わしたと、
ええー。
あれって、そうだったのか!
準備を整えていたのか、船上にきらびやかな結婚衣装を身に纏った、
「
「これは、嬉しいプレゼントですね」
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
後ろでカアラが、これでこの国との繋ぎもバッチリと、笑って見ている。
どうやら嵌められてしまったようだ。
俺は嵌めてないはずなんだけども、まあこの際だしいいか。
シズカと出会った時に、何かしらの運命を感じたこともある。
同じアーサマと縁がある者同士、彼女ともどっかで繋がりがあるのかもしれない。
両国の縁を結ぶのに良いと言われたら、その通りだろう。
あと、結婚指輪のストックはまだあったりするのだ。
こういうのも、備えあれば憂いなしというのかなあ。
ともかく、こうして俺と
※※※
さて、味噌や醤油をたくさん手に入れて、おまけに嫁までできて、この国でできることも済んだ。
カアラが魔法陣を仕込んだので、ヒノモトへはいつでも移動できるようになった。
ヒノモトの人達が黒船と呼ぶ黒杉軍船に乗って、俺達は悠々とオオザカの港より出港して外洋へと出た。
「よーしでは、さらに東に進路を取るぞ!」
俺がそう言うと、カアラが驚く。
「国父様、ヒノモトは世界の東の果てではないのですか?」
「おそらくだが、世界の東の果ての海と西の果ての海は繋がってるんだ」
次の目標は、世界一周。
目指すは、アビス大陸の西端である。
「王将、じゃあこのまま東に向かうよ。ヨーソロー!」
俺の命を受けて、メアリード提督が船団を東へと出港させる。
船員達も、次々にヨーソローと景気良く掛け声を上げる。
「さてと、俺達が次に目指すのは世界一周だ!」
俺は外洋を進む船の舳先に立って、新しい海域の行く先を見つめた。
アビス大陸を東から探索しているはずのニコラウス大司教達もまだ到達していないアビス大陸西岸を目指して、俺達は船を進める。
まだまだ
新たな冒険の旅は、始まろうとしていた。
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