第35話「私の警察官の道理」

部署に戻った私は佐藤さんに今までの出来事全てを話した「えっ光ちゃん黒崎アリスを射殺したのしかも周君の前で?」「はい」橋部さんが私に「光さん大丈夫ですか?顔が真っ青です」








「大丈夫です、今周は翼君と一緒にいます、めぐみにも周を迎えに来てもらえるように連絡しました」「それは全然構わないけど光ちゃん本当に大丈夫?気分悪いんだったら早退していいから」「平気です仕事に戻ります」









「でも顔真っ青だしな辛かったねごめんね駆けつけてあげられなくて」「いえ佐藤さんが謝る必要はない何がありませんでも私のしたことは間違ってます、確かに黒崎は二十七人を殺した罪人です、私は昔から黒崎アリスが嫌いでした今思い出しただけでも腹が立ちます」







「光ちゃん……」「周をあんなに傷付けて本当に許せなかった、でも全部周の為なんです、周りの人間から周を守る為に……黒崎は私と同じで心から周を愛していた、自分の全てを懸けてまで周を守ろうとした」「もういい分かったから」佐藤さんが私を落ち着かせようと言う。







「それなのに私は黒崎をこの手で殺してしてしまいました、周を命懸けで守った黒崎の心臓を私は撃ち抜いたんです」橋部さんが「光さん一回落ち着きましょう」「私は警察官に向いてないと思ってはいましたがまさか黒崎にまで言われるとは思いませんでした」







そんな私を抱き締める佐藤さん「もういい分かった一回落ち着こう、ね?」「もしかして七海さんに聞きましたか?私の病のこと」「……どうしてそう思うの?」「佐藤さんは分かりやすいんです嘘が付くことが出来ずすぐに顔に出る」






「本当は七海さんに聞く前から薄々気付いてた」「美桜先生の事件の時からですか?」「えっどうしてそう思うの?」「佐藤さん嘘付く時の癖で口元に手を当てるんです」「嘘気づかなかった私にそんな癖があったなんてじゃ水族館の時も?」






「はい思い切りやってました、でも他に誰が知ってるんですか?」「私と川口社長それにめぐみちゃん周君は知らないよ」佐藤さんは口元に手を当てる




その姿を見て思わず笑ってしまう私を見て癖をしてることに気付き手をすぐに離す佐藤さんに私は「本当に分かりやすい人周は知ってるけど翼君は知らないってことですか?」「翼君は知らないよ七海さんが光ちゃんに口止めされたって言ってた」













「もうやめましょう光さん」「えっ橋部さん」「光さん本当に分かってるんですかこのままじゃ本当死にますよ」「言われなくても分かってますこの仕事は無謀なことだって」「たったら!」








「だからこそ守りたいです私に未来がないそれは何があっても変えられないだけど周は違ます、周の未来なら変えられる安藤を捕まえてこのゲームを終わらせれば周の未来を守れます、その為に私は警察官になりました」「光さん」







「私も死ぬのが怖いです、余命宣告されるまでは私はもっと長生き出来ると思ていました、ゲームも無くて周と当たり前だけど穏やかで幸せな日々が続くとずっとそう思って生きていました」「「……」」





「だけど突然ゲームが始まって余命宣告されて私の幸せな日々は全て奪われたあの殺人鬼達」橋部さんは「だから何があっても警察官を辞めないんですか?」「はい、せめて取り戻してあげたいです、ゲームが始まる前の生活を周が送れるように」






「光さんの気持ちは分かりますがこれ以上無茶しないでください」橋部さんが心配そうに言う「大丈夫です、ずっと警察官を続けるって訳ではありません安藤を捕まえてゲームを終わらせたら辞職するつもりです」






「だけど光ちゃんの体はもう限界に近づいてるそれ以上体に負担を掛ければ光ちゃんの命はどんどん短くなってく」「それでもいいんです周の未来を守れるなら」「光さん」







「橋部さんが私の為に言ってくれてることは分かってます、だけど例えこの身が滅ぼうとも今の生き方を変えるつもりはありません」





「光さんは本当に不器用で真っ直ぐですね、すぐに辞めてなんてもう言いませんでも一人で行動するのは止めてください」「はい分かりました」「光ちゃん今日はもう帰っていいよ」「ですが……」「光ちゃん体調悪いのに無理しちゃ駄目だよ」「分かりました」私は花園さん氷山さんに迎えに来てもらい車で帰った






そして別の医者に体の具合を見てもらい部屋で点滴を打っていたドアが開き「主!」「七海さんどうしたんですか?そんなに慌てて」「佐藤様からお聞き致しました、高校生時代の同級生を射殺したと」「私は警察官ですから市民を守るのが私の仕事です」






「ですが主お顔がお悪いです、それにその点滴は安定剤です」「えっそんなんですか?てっきり病の薬かと」「主のお心は今の不安定です体調が優れないのも恐らく人を殺してしまった罪悪感から来てるのでしょう」







「えっでも症状が進むのは負担が掛かった時だと説明されましたが?」「はいもちろん体に負荷を掛ければどんどん悪化しますが主のお体は今以前よりもデリケートになっております」「では肉体と同じで精神もストレスを感じると症状が進むそういうことですか?」






「左様でございます」「もう~黒岩め何て面倒な薬を私の体によくも注射したなこれじゃまともに仕事に出来ないじゃないですか」「本来ならお体の為にも辞職された方が宜しいんですけど」「それは出来ません」即答で答える私に「やっぱりですか」「はい」






「お待ちください今夕食をお持ち致します」「ありがとうございます」私は七海さん夕食を準備している三十分間の間に眠くなり寝てしまったそして夢を見た思い出したくない悪夢のようなぬくもり夢を私が黒崎を殺した瞬間夢とは思えないほどのリアル感に恐怖を覚えた






「うっうっ!」私はうなされる初めて人を撃ち殺した感覚が手の平に残ってるそして何度も繰り返し悪夢を見る最後には周が私に泣きながらこう言った〈光、警察官だからって射殺していい理由にはならない〉〈周……周!違う私はただ周を……〉「じ!るじ!主!!」








七海さんの声に私は悪夢から現実へ戻った。「七海さん……私は今夢を」「ずっとうなされてました、大丈夫でございますか?お顔色がとってもお悪いです」「大丈夫です」私が体を起こすと七海さんは「主の大丈夫は信用できません」







そう言いながら私の顔の汗を真っ白いハンカチで拭く「ありがとうございます平気です繰り返し同じ悪夢を見て少し驚いただけです」「主、神経にかなりダメージがあるようです、明日はお仕事をお休みした方が宜しいかと」






「そうですね……」私は七海さんの言う通り一日休むことにした。そして日々は流れ一ヶ月後次の日めぐみから連絡があった「おはようめぐみこんな朝からどうしたの?」≪光……≫めぐみは何故か泣き声で私の名前を呼んだ「もしかして泣いてるの?何かあった?」





≪周君が……周君が無差別殺人者に殺された≫「えっ何の冗談?周が殺された?ワケわかんないこと言わないでよ」≪信じられないなら自分の目で確かめればいい今言う葬式場に来て≫





私はすぐに電話を切り七海さんと車で向かった。言われた場所に行くとそこは本当に葬式場で、私は走り出す七海さんは私を追いかけるそして中に入ると「光!」翼君、佐藤さんそしてめぐみが立っていた私はすぐめぐみの所に行き








「どうゆうこと?何で翼君達までいるの?」「それは昨日の無差別事件の時二人が現場に居たから周君が撃たれた瞬間も見てる」「だから冗談やめてよ」「そんなに疑うなら確かめなよ周君はその中に居る」「えっ」めぐみの指した方角を見ると白い棺があって





私はゆっくり棺に近づくそして中を確認した時言葉を失った周の顔があった「!?」私は悪い夢であってほしいそう何度も願った何度も目を閉じ目を開ける動作を繰り返しても周は目を閉じたまま動かない






「周……こんなところで何をしてるの?早く起きて一緒に帰ろう」どんなに呼び掛けても周は全く動かない「周……大丈夫だよ何度でも何度でも私が必ず守ってあげる」私は舌を噛み切りリライフした





「リライフ成功でも検査結果が悪かったから今日一日休んでと言われたんだでも行かないと」私はスーツに着替えて必要なものを鞄に入れて準備をして前と同じで窓から氷の滑り台を作って抜け出した。部署に着くと「光ちゃんどうしてここに?」











「光さん今日休むって佐藤さんに聞いてますけど」「それど頃じゃないんです予知で見たんですけど周が大変なんです」「どうしてたの?周君に何かあった」






「はい一時間後に紅葉山広場に無差別殺人事件が起きて周がそこでその犯人に殺されます」「それが本当なら大変じゃないですか?」







「佐藤さんお願いです私を現場に行かせてください周を守りたいんです」「……分かった許可しよう」「おい香織光は黒崎のことがあってばかりなんだぞ、光の話が本当になら犯人を射殺しないといけなくなるかもしれないそれを分かってるのか?」







「私なら大丈夫だよそれにそれは一ヶ月前の話でしょ?万が一黒崎時と同じになったとしても私は迷わず犯人を射殺するつもりだから」「光……」「全員拳銃を持って現場に行って」「「了解」」






全員佐藤さんに敬礼をして拳銃を持って現場に行くそして現場に行き広場の責任者に事情を説明して一般人市民は出入り禁止にしてもらった。黒島さんが「犯人本当に来ますかね?」「来てるって言うかもう居ます」「えっどこですか?」橋部さんが私に聞く。







「犯人はあの森に隠れてます十時になったら出てきます」そして時間になり予想通り銃を持った男が森から出てきて広場に入ってきた。私達は建物の壁に隠れていて「どうして誰も居ないんだよ!!」叫んで弾を発砲する。






翼君が「あいつ相当ヤバイな口の周りに白いのが付いてる、態度も異常だ」「もしかしてあの男麻薬やってるんじゃない?」佐藤さんが言う「俺行きます」黒島さんが飛び出した。「黒島君!」佐藤さんが叫ぶと男は黒島さんを何のためらいもなく撃った。





五発撃たれた黒島さん倒れると私は飛び出して男の心臓に銃の弾を発砲した。男は倒れた「「!?」」「黒島さん!」駆けつける「今電話して後十分で救急車来ます」橋部さんが言う。「光大丈夫か?」翼君が私に心配そうに言う。






「うん平気でもあの男は助かりそうにないね」「光?お前どうしてそんなに平然としてるんだ?本当に大丈夫か?」






「翼君私やっぱり警察官向いてないし人助けとか向いてない警察官になればお母さんの気持ちが分かると思っていた、でも私はお母さんの気持ちは分からないしどんなに憧れていてもお母さんのような警察官になれないことが今分かった」






「光何訳分かんないこと言ってるんだ?」「私の警察官としての道理はきっと間違ってるだけど私は後悔してないよ、周を守る為に黒崎を殺したこともあの男を撃ったことも」「「!?」」黒島さん以外が私の言葉を聞いて驚いた表情で私を見ていた。






私は青空を見上げながらお母さんを思い出しながら〈ごめんねお母さん私はお母さんのような警察官にはなれない、だから私は自分なりの警察官の道理に従うつもりだよ私のやり方でこれからも周を守るつもりだよ例えそれが人の道に踏み外す行いだとしても〉









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