画家の道をなかば諦めた男が見出した、自分の作品への偏執的な愛。良識を裏切る行為に走らせる最後のシーンにそれは集約されていますが、画学生時代のお客さんの最後の注文をほったらかしにしてしまうあたり、芸術家的な良識無視の姿勢はそのころからほんのりと顔をのぞかせている気もします。いい作品ができあがること(それは反面、いい作品がなかなかできあがらなかったということ)のうれしさ、達成感、がむしゃら感が、趣味とはいえ自分で小説を書く我が身にとっても、強く共感します。