異世界の魔王だった俺は現実世界に転生して……幼馴染の美少女とか美人のお姉さんとイチャコラするために頑張る。

岡村豊蔵『恋愛魔法学院』3巻制作中!

第1話 幼馴染と不思議な少女


 強さなんかに何の意味も無いって――魔王カミナギ=アキトは思っていたのだが。

 いざ、力を失ってみると……自分の無力感に苛まれることになった。


※ ※ ※ ※


 神凪秋人かみなぎあきとは――かつて自分が異世界の魔王カミナギ=アキトであったことを、突然思い出した。

 高校一年生までの十六年間の記憶と、異世界の魔王の記憶が融合シンクロする。


(何だよ、これ……)


 頭の中に入って来る膨大な情報の渦に翻弄されながら……神凪秋人としての意識を保とうと、必死に抗っていた。


「ねえ、秋人! どうしたの、ちょっと大丈夫……具合悪い?」


 同じ高校に通う幼馴染――九条涼香くじょうすずかが屈み込みながら、蹲る秋人の顔を覗き込む。

 黒髪のショートカットで、太い眉という大和なでしこタイプのくせに――推定Eカップの胸とくびれた腰は、物凄い破壊力がある。


「いや、これくらい……何でもないって。それより、涼香……今日は大事な試験なんだからさ。俺なんか放って置いて、先に行けよ」


 涼香は一年生ながら、戦乙女ヴァルキリー選抜試験の最終選考に残っていた。その最終試験が、今日行われる。

 人類の命運を担う十代の少女、戦乙女ヴァルキリーたち――こんな風に言うと、少し大げさに聞こえるかもしれないが。彼女たちだけが『深淵よりの侵略者アビス・アグレッサー』を倒せるのも、また事実だった。


「でも、私……秋人のことを、放っておけないよ!」


 涙目の涼香を眺めながら――秋人は混濁する意識の中で、彼女の事を想う。


「いや、そんなに大袈裟な事じゃないからさ……俺の事なんて心配するなよ……」


 フラッシュバックする無数の映像と、大量の知識と誰かの感情に――脳味噌が圧し潰されそうだったが。秋人はそれでも……自分の事よりも、涼香の方が大切だという気持ちだけで、何とか踏み留まる。


 そして秋人は――最後の力を振り絞って、必殺技を繰り出した。


「ていうかさ、涼香……そんな立派なモノを、目の前で見せつけられると……俺の下半身が元気になって、別の意味で立ち上がれないんだけど?」


「え……」


 前かがみの胸元を凝視する秋人の視線――バチンッと良い音が響く。


「もう……馬鹿! 秋人なんか、死んじゃえ!」


 真っ赤な顔で走り去る涼香を見送りながら……


「まあ、とりあえず……これで何とかなったかな?」


 秋人は息を吐いて、膝から崩れ落ちる……冷たいアスファルトの感触が、妙に心地良かった。


「えっと、あの……大丈夫ですか?」


 見知らぬ女の子が顔を覗き込む。


「あ……俺は大丈夫なんで。救急車とか呼ばないで、放置してくれて……」


 彼女に見守られながら……秋人の視界はブラックアウトした。


※ ※ ※ ※


 次に気が付いたとき――秋人はベッドの中にいた。


 見知らぬ天井と、嗅いだことのない心地良い匂いと……ベットの端には、俯せで寝息を立てるセーラー服の見知らぬ女の子がいた。


「え……」


 秋人がベッドから跳び起きると、そこは六畳くらいの部屋で。秋人は彼女と二人きりだった。


「おい……ちょっと待ってくれよ。まさか俺は、寝てるうちに……」


 思春期真っ盛りの高校生にありがちな、妄想力全開の想像が頭を駆け巡るが――


「そうだ……俺は、涼香のところに行かなくちゃ!」


 混濁としている記憶は、まだ曖昧なままだが……それでも、何が一番大切かという事だけは憶えていた。


「ほへ……あれ、君は……ああ、起きたんだね?」


 しかし、寝ぼけ眼の少女と目が合うと――秋人は思わず、彼女の可愛さに見惚れてしまう。


「えーと、君は……」


「へへへ……私が君を助けたんだんだよ。だから……もっと感謝してよね!」


 無邪気な笑みが――秋人の記憶と繋がる。

 ピンクゴールドに染めたツインテールの美少女は……ブラックアウトする直前に、秋人の顔を覗き込んでいた女の子だった。


「ねえ、君……名前は?」


「俺は神凪秋人……」


 応えながら――秋人は疑問を懐いていた。

 身長百六十センチにも満たない彼女が、どうやって自分を運んだのだろうか?


「私は……如月春奈きさらぎはるなだよ。ねえ、秋人君……」


 秋人の疑問などお構いなしに、春奈は可愛らしく微笑むが――次の瞬間、彼女がの台詞に秋人は固まる。


「私は秋人君のこと……食べたいんだけど?」


「え、それって……どういう意味だよ?」


「どういう意味って……そのままに決まってるでしょ?」


 春奈は満面の笑みを浮かべて……そう宣言した。


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