色移り

黒木裕一

色移り

「私は白に生きる。」


私たちの集落では15歳のお誕生日に自分の色を決める儀式を行う。一度決めたらもう変えられない。一度決めた色を変えるのは集落の重大な禁忌だから。

15歳の私は白にした。何にも染まりたくないと思ったから。ずっときれいなままでいたいと思っていたから。

でもね、失敗だった。白は何にも染まってない色だけど、染めることができてしまうの。今、私は22歳。色は黒色。


私を最初に染めたのは黄色の友達だった。彼女は明るくて、少し気が強いけど優しい、とてもいい友達だったわ。

私は彼女のようになりたいと思ってしまった。そう。私は思ってしまった。願ってしまった。その時、私の心に薄く黄色が流れてきたの。本来の私にはない、異質なものが流れてくる感覚が、なんだか気持ちがよくて、犯罪だと気づいた時には遅かった。私はそれを赦してしまったの。次の日、「なんだか変わったね」なんて言われて、少しドキッとしたけど、それもまた気持ちが良かったのを覚えてる。

そのあと、何人もの人に染まり続けて、一番濃く染まったのは18歳の時に初めてできた青色の彼氏だった。

彼は私にとても優しくて、私を守ってくれて、私のすべてを受け止めてくれた。彼と過ごした時間、一緒にしたこと、すべてが楽しくて、私は彼を欲しいと思ってしまった。

あっという間に私の中に青色が流れてきて、私はそれを受けとめた。そのころにはもう黒に近い色だったかもしれないわ。でもそのときは楽しかった。そのときはね。


はい。もう回想はおわり。この集落にはもう私しかいない。私は人に染まりすぎた。もういいの。私は黒色。集落から追われる存在。もう追ってくる人もいないけど…ね。。。


彼女の最期は、彼女の黒色から生まれた赤色に染まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

色移り 黒木裕一 @yuuichi_write

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ