第29話

「復活・・・?プーちゃん、何が復活するの?」


プーちゃんの言っている意味がわからなくて、私はプーちゃんに問いかける。


あの血溜まりの中にある肉塊が復活するというのだろうか。


プーちゃんの血を飲んだら不老不死になるというし。


でも、プーちゃんの血を飲んだ人物は限られている。


トリードット先生にジェリードット先生、それにシルヴィアさんだ。


地下牢だからあの肉塊は・・・シルヴィアさん?


「あそこにある肉の塊だ。直に復活するぞ。」


「プーちゃん、あれは何なの・・・?ううん、誰なの?」


声が震えてしまう。


知人があのような状態になっているかもしれないということに震えを感じる。


「ん?シルヴィアとかいう女だが・・・?その女に会いに来たのだろう?」


「・・・っ!?」


やっぱり!


やっぱりシルヴィアさんだったのっ!!?


思わず顔を両手で覆ってしまう。


まさか、そんな。という言葉が頭の中を駆け巡る。


「ああ、ほら。再生が始まったな。」


プーちゃんは何とも思っていないのか、ただ淡々とそう口にした。


「ふむ。あの再生速度から見るとシルヴィアという女は殺されたばかりだな。我々がここに来る直前に殺されたのだろう。なあ、メリードットよ。」


「えっ?」


プーちゃんは血溜まりの前に立っているメリードット先生に向かって話しかけた。


メリードット先生は驚いた表情も見せずこちらを振り向いた。


「ああ。そうだな。まだ犯人は遠くに行っていないようだ。もしかするとこの地下牢にいるかもしれない。」


「ええっ!!!?」


まだ犯人が地下牢にいるの・・・?


だから、メリードット先生はアクアさんと私に地下牢から出ていくように言ったのだろうか。


「そうだな。だが、我が感じる気配はこの地下牢に3つだけだ。そこにいるシルヴィアとここにいる我が母。それに、そなた・・・メリードットだけだな。」


「え・・・?」


ということは、プーちゃんが気配を感じられない相手ってこと?


それとも・・・。


私は驚いてプーちゃんを見つめる。すると、プーちゃんの前足がゆっくりとメリードット先生を指し示した。


「のぉ。シルヴィアとやら、お主を殺した相手はだれだ?」


プーちゃんが問いかけたのはシルヴィアさんだった。


私は恐る恐るシルヴィアさんがいる方を見ると、そこには綺麗に再生されているシルヴィアさんが呆然とこちらを見つめていた。


「もう、しゃべれるほどに回復しているはずだ。シルヴィアよ、答えよ。」


プーちゃんは威圧的にシルヴィアさんに問いかける。


「あ・・・あ・・・。」


だが、シルヴィアさんの口からは掠れたような声が出るだけだ。


「答えられぬのか?」


プーちゃんの鋭い声が飛ぶ。


その声を聞いてシルヴィアさんは竦み上がった。


目を大きく見開いて「ヒッ・・・。」と声にならない声をあげた。


「どうやら答えられぬようだな。メリードットよ、お主、答えはわかるか?」


プーちゃんがシルヴィアさんにあきたようで今度はメリードット先生に視線を向けた。


「・・・っ!」


プーちゃんの視線の鋭さにメリードット先生も竦み上がってしまいすぐに答えることができない。


「シルヴィアが我の血で不老不死になってしまったのは想定外。そうではないか?」


プーちゃんはそう告げる。


もしかして、最初っからシルヴィアさんは殺される予定だった・・・?


邪竜に殺されればそれでよし。邪竜に殺されなければ誰かがシルヴィアさんを殺す。


そういうことだろうか。


「答えよ。」


シルヴィアさんもメリードット先生も答えることなく黙っていたので、プーちゃんの怒声が地下牢に響き渡った。


だが、二人とも竦み上がってしまい答えることができないでいる。


「・・・プーちゃん。二人とも怖がってるから。」


プーちゃんの背中をトントンと軽く叩く。


するとプーちゃんはこちらを振り向いた。


「あれは我を怖がっているのではない。」


「えっ?」


プーちゃんが何を言っているのかわからない。


思わず聞き返すと、静まっている地下牢にコツコツと靴音が聞こえてきた。


・・・誰か、きた?


アクアさんがトリードット先生とジェリードット先生を呼んできてくれたのだろうか。


「ふむ。やっと来たか。」


プーちゃんがそう言って、足音のした方を向いた。


私も自然とそちらに視線を向ける。


そこにいたのは・・・・・・。


「・・・ランティス、様?」


どうして、ランティス様がここにいるのだろうか。


「ああ、エメロード。私の婚約者よ、今日もとても麗しいね。そんな麗しい君にこのような地下牢は似合わないよ。さあ、早く地下牢から出るんだ。」


にこにこと微笑んでいるランティス様だが、その目は笑ってはいない。


そうして、私に地下牢からでていくように指示する。


でも、こんなに気になる状態で地下牢からでていけるわけがない。


黙ったままその場にいると、


「おや。私のかわいい婚約者はここから出ていく気がないのかい?困ったなぁ。ああ、始祖竜よ、私の婚約者をつれていってくれるかい?」


と、プーちゃんに向かっていった。


プーちゃんがその言葉を聞くはずがないのに。


「断るのだ。」


もちろん、プーちゃんはランティス様の提案を断った。


「そうか。それは非常に残念だ。可愛い私の婚約者。エメロード。私はね、君のことをとても気に入っていたんだよ。だから、逃がしてあげようと思っていたのに。とても、残念だ。でも、仕方がないよね。」


・・・逃がして、あげる?


ランティス様は何を言っているのだろうか?

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