第13話
「まずは精霊の卵の状態をまず確認したいのじゃ。私たちの魔力を吸収していないところを見ると、もう大丈夫だとは思うがの。もし、まだ精霊の卵が危険な状態ならば、先に精霊の卵の方を癒やしてやらねば、アクア嬢の意識が回復せぬかもしれぬのでな。もうちょっと辛抱しておくれよ。」
「・・・わかりました。」
トリードット先生の言葉にしっかりと頷く。
「じゃあ、まずは精霊の卵を探さないとね。トリードット先生、精霊の卵はこの子の近くに落ちていなかった?」
「いや。近くを探したがみつからなかったわい。」
「そう。じゃあ、まだこの子が持っているのかしら。」
そう言うなりジェリードット先生がアクアさんの全身を服の上から触っていく。
どうやら精霊の卵がどこにあるか探しているらしい。
全身をくまなく探していたジェリードット先生だが、アクアさんの胸元で手が止まった。
精霊の卵があったのだろうか。
「・・・ちっ。私よりでかいなんて許せないわ。」
なんだか、ジェリードット先生が小声で呟いたがよく聞き取れなかった。
「ジェリードット先生?精霊の卵があったんですか?」
ジェリードット先生に確認をしてみる。
「あったわよ。」
そう言って、ジェリードット先生はおもむろにアクアさんの胸元に手を突っ込んだ。
「きゃっ!」
思わず私は声を上げて目をつむってしまった。
まさか、ジェリードット先生がアクアさんの胸元に手を入れるだなんて。そんな破廉恥な。
その次の瞬間、この治癒室にはトリードット先生という若干萎びれたが男性がいるということに気づき、慌ててトリードット先生がいた方向に目を向けた。
だけれども、そこにはトリードット先生の姿は見当たらなかった。
いったいどこに・・・。
と思って辺りを見回すがどうやら治癒室にはいないようだ。
どこに行ったんだろうか。
そう思っていると治癒室のドアが遠慮がちにノックされた。
「・・・もういいかの?」
「いいわよ。入って来てちょうだい。」
どうやらトリードット先生だったらしい。
ジェリードット先生が、アクアさんの身体を調べるとわかるなりすぐに治癒室から出ていったようだ。
トリードット先生ってば配慮のできる先生のようで安心した。
「精霊の卵は無事だったかの?」
「これよ。ヒビが入っているわ。」
ジェリードット先生はそう言ってアクアさんの胸元から取り出した虹色に輝く精霊の卵を私たちの目の前に差し出した。
ジェリードット先生が見せてくれたアクアさんの精霊の卵には、とても小さなヒビが入っていた。
それは、目を凝らさないと見えないほどに小さなヒビだった。
「このヒビを直さないといけないわね。」
「うむ。そうじゃな。しかし、どうやってヒビが入ったのやら。」
そう言ってトリードット先生が、考え込むような仕草をした。
「精霊の卵にヒビが入ることは珍しいのですか?」
「うむ。なかなかヒビを入れることは難しい。例えば精霊の卵を思いっきり地面に叩きつけたとしても割れないのだ。」
「普通は鋭利な刃物で突き刺してもヒビなど入らないわね。」
「火の中に入れても傷一つつかぬとも聞くな。」
「それって、火を通しちゃったらゆで卵になっちゃうんじゃないですか?」
「それが、無傷なのよねぇ。ゆで卵になることはないわ。」
トリードット先生とジェリードット先生が精霊の卵がいかに傷つけにくいのかを教えてくれる。
「ハンマーで叩いたら流石にヒビくらい入りますよね?」
「いいえ。無理だったという報告があるわ。」
「そうじゃの。むしろ、ハンマーが粉々になったと聞いておる。」
精霊の卵、頑丈すぎじゃないだろうか。
ハンマーで叩いてもヒビすら入らずにハンマーが粉々になるとかどれだけ頑丈なのよって話ですよね。
でも、逆に言うとそんなに頑丈な精霊の卵にヒビが入っているというのはどういうことだろうか。
「トリードット先生、ジェリードット先生。私には精霊の卵がとっても頑丈で、精霊の卵にヒビを入れることすら困難なように聞こえるのですが・・・。」
「うむ。物理的には不可能じゃな。」
「ええ。そうね。物理的には不可能だわ。」
先生方はそう言った。
物理的にはとはどういうことだろうか。
「精霊の卵にヒビを入れる方法があるのですか・・・?」
「うむ。あることにはある。」
「ええ。ただ、実際にできるかというと難しいわ。」
トリードット先生もジェリードット先生も難しい顔をして頷いた。
精霊の卵にヒビをいれることはできるようだが、その方法がかなり難易度が高いらしい。
でも、現にアクアさんの精霊の卵にはヒビが入っている。
「どんな方法なんですか?」
「精霊の力を借りるのだ。精霊の卵は精霊の力をぶつけることでヒビが入る。」
「でも、それって逆に言えば精霊を扱える人は誰でも精霊の卵にヒビを入れることができるんじゃないですか?」
精霊の力があれば精霊の卵にヒビを入れることができるのであれば、精霊を従えることのできるこの高等魔術学院にいる2年生以上の生徒なら誰でも可能だろう。
それに、外部にも精霊を扱える人はたくさんいる。
「それがの、誰にでも精霊の卵を傷つけることは難しいんじゃ。」
「ええ。その精霊の卵よりも高位の精霊でないと精霊の卵に傷をつけるのは難しいの。」
「つまりじゃ。アクア嬢の精霊の卵は聖竜の可能性が高い。その聖竜の卵を傷つけることのできる精霊というのは邪竜しかおらぬのじゃよ。」
トリードット先生は衝撃的な一言を発した。
邪竜しか聖竜の卵を傷つけることができないとは・・・。
邪竜がすでに孵化しているってこと・・・?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます