人気女優の転生先が男子高校生だったので大好きな妹に本気で恋してみた。
ばちくです
第1話 終わりと始まり
あなたは今まで生きてきた中で予想通りに事が運んだことがあるだろうか。
大勢がこう答えるだろう。
『ほとんどない』と。
その通りだ。
良くも悪くも自分がイメージした通りになるならば、現状に不満を持っている人がいるわけがない。
だから目の前で起ころうとしていることも『予想外』の出来事である。
予想外であるが故に、青信号を渡っている男子高校生と思しき人物が今にも猛スピードの大型トラックに轢かれそうであるという出来事は誰も想像をすることができない。
私は女優という職業柄か、人より雰囲気や空気を読み取ることに長けている。
したがって、この状況を誰よりも早く察知して頭で考えるよりも先に体が、理性より直感が働いていた。
私は男子高校生とトラックの間に割り込むようにしてその高校生を抱き抱えるようにして庇う。
瞬間___。
ドオオオオオォォォォーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
轟音が鳴り響いた。
衝撃によって私は庇った男の子ごとふっ飛ばされる。
衝撃を和らげてくれるわけでもなく、容赦無くアスファルトに体が叩きつけられる。
青空、街路樹、標識、白線、そして庇った男の子。
コマ撮りのように切り取った場面が私の目に映る。
不思議と痛みは感じなかった。
そして全てを悟った。
ああ、私はもう死んでしまうのかな…
もっと女優としての仕事もしたかったなあ…
友人とももっとお話ししたかった…
何よりもせめて最後に大好きな妹の顔を拝みたかったな…
彩奈…
妹の笑顔が浮かんだところで私の意識は途切れた。
***
部屋の窓から差し込んでくる光に目蓋がピクピク動く。
光を遮るように手を目元にあて軽く目蓋を擦りなんとかこじ開ける。
まだ明るさに適応しないのか焦点が合わず視界がぼんやりとしている。
瞬きを何回か繰り返すうちに鮮明に景色が見えてくる。
視線の先には見慣れない天井が映っている。
ここは…?と場所を確かめるために私はむくりと起き上がる。
服を見るとグレー色で静謐な印象を受け、着ているととてもリラックスできる。
腕を動かそうとしたら点滴のコードが引っ張られた。
室内にあるもの、今の状況と過去の出来事から私は推察する。
そうか…私は交通事故に遭って…それで…病院に運び込まれたんだ…。
私の身体は特に痛みや不都合なことはないといった感じね。
庇った男の子の方は大丈夫だったかな…。
妙な違和感を感じる気がするのだけれど、これは一体?
現段階で分からないことはひとまず置いといて、とりあえず状況確認が大事ね。
そう考えた私はベッド付近のナースコールボタンを押して待つことにする。
待っている間、特にやることもないので時間潰しとしてテレビを見る。
私は近くの机においてあったリモコンを手に取り、テレビを点ける。
画面が色づいた途端、とんでもない光景が目に飛び込んでくる。
「え…?」
素っ頓狂な声が出てしまう。
それもそうだ。だってそこに映っていたのは
『大人気女優、七瀬彼方さん。交通事故により搬送先の病院で死去』
というタイトルの情報メディア番組だったのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます