異世界戯曲

Snowsknows

   1


語り「とある日の深夜。

   とある都会の、とある大きな交差点。

   そこで疲労気味のサラリーマンが、

   信号待ちをしておりました」


 青年、現れる。


語り「彼は、満員電車で出社し終電近くまで働いて、

   ただ家に帰るだけ。

   そんな生活を10年続けておりました。

   勤め先はいわゆるブラック企業。

   そして飼い慣らされた社畜でもありました」


 青年、大きなため息。天を仰ぐ。


語り「嫁なし。子なし。貯金なし。

   人生に希望を見出せず、かっと言って絶望まではしていない。

   まさに惰性で人生を送っている。そんな人物が彼でした。」


 青年、懐からスマホを取り出す。


語り「そんな彼の数少ない楽しみがスマホゲーム。

   今日も今日とてログインボーナスのために、

   アプリを起動します。

   そして信号が青になったのを見て、

   彼は歩きスマホで横断歩道を渡り始めました。

   と、その時」


 キキッーーーーー! 


 ドンッ!


 暗転。


語り「彼は哀れにも、

   信号無視のトラックに跳ねられてしまいました。」


 ゆっくりと明転。


 青年、何もない空間に立っている。


青年「ここは、どこだ?」


語り「彼は死んだはずなのに、変な空間に立っていました。

   そしてそんな戸惑っている彼に、威厳のある声が語り掛けます」


声 「青年よ。聞こえるか?」


青年「だ、誰だ?」


声 「どこにでもいて、どこにもいない。そんな存在だ」


青年「も、もしかして神様?」


声 「そなたの認識でそうならば、そうなのであろう」


青年「神様、俺はどうなるんですか? このまま死ぬんですか?」


声 「慌てるでない。このままでは死ぬが、そなたに頼みがある」


青年「頼みとは?」


声 「察しの通り。

   魔王の手により危機に瀕している異世界がある。

   そこを救ってほしい」


青年「やっぱり! じゃあチート能力はもらえるんですか?」


声 「もちろんだ。ただの人間を送っても意味がない。

   素晴らしい能力を授けてやろう」


青年「やった!」


声 「まずは雷すらも切り裂く強力な剣技を授けよう」


青年「おお!」


声 「次に、あらゆる属性を使いこなす魔法の力を授けよう。

   もちろん魔力は無尽蔵だ」


青年「すごい!」


声 「そして隕石の直撃にも耐えうる強靭な肉体と無限の体力」


青年「なるほど!」


声 「極めつけは、魅了の力。

   どんな女性もそなたに好意を抱かずにはいられない」


青年「…ま、マジか」


声 「これだけの力をそなたに授けようと思う」


青年「はい! ありがとうございます!」


声 「そうか。では、

   この力を持って異世界を救うという契約を了承する、

   と言うことでいいのだな?」


青年「契約? まぁいいか。はい!了承します」


声 「よかろう」


 青年の背後に、眩い光が現れる。


声 「ふむ。異世界の王族たちが勇者召喚の儀を行っておる。

   青年、いや勇者よ。

   異世界を救って来てくれ」


青年「はい! 今までクソな人生でしたが、

   この力で人生やり直しが出来ます!

   ありがとうございました! 異世界を救って来ます!」


語り「そう言うと、青年改め勇者は、

   異世界の扉へと飛び込んで行きました」


声 「………力の代価は、ちゃんと頂くがな」



 2


語り「そして勇者は、とある王城の召喚の間に現れました」


人々「おお! やったぞ! 成功だ!」


  「勇者だ! 勇者様だ!」


  「ああ、なんて凛々しいお方なの」


語り「勇者召喚の成功に、人々は沸き立ちました。

   勇者は今までの人生で、

   味わったことのない歓待に驚きました」


勇者「おぉ、俺のことでみんなこんなに喜んでくれるのか」


語り「歓喜の渦の中、

   威厳のある人物と可愛らしい少女が近づいて来ました。

   その国の王様と王女様です」


王 「あなたが勇者で間違いないか?」


勇者「は、はい! そうです!」


王 「そうか! 待ちわびたぞ!

   勇者よ、この世界は魔王の手により危機に瀕している。

   どうか救って欲しい!」


勇者「もちろんです! 俺の力でこの世界を救って見せます!」


王 「なんと頼もしい!」


語り「すると勇者は王様を無視し、

   王女様の前で片膝をついて手を取りました」


勇者「俺はこの世界を救うために来ました。

   しかし本当はあなたに会うためだったかも知れない」


王女「そ、そんな(頬を朱に染め)。…勇者様が私を」


語り「王女は、お淑やかで見目麗しい美少女でした。

   そして勇者の好みどストライクだったのです。

   王女様もまんざらでもないようです」


王 「はっはっは! これは一本取られたな!

   我が娘に早速気に入られるとは! 

   いいだろう! 勇者よ、魔王討伐の暁には、

   我が娘を妃にやり王位をくれてやろう!」


勇者「ありがたき幸せ!」


語り「こうして勇者は、

   老後の保障と王家代々の伝説の剣をもらい、

   旅立つことにしました。

   しかし、王都の門で立ちはだかる者がいました」


女騎「私は女騎士! 王家を守護する者だ!

   どこの馬の骨かわからん勇者よ!

   魔王を本当に倒せるかどうか、その実力を試させてもらう!」


語り「女騎士は問答無用に、勇者に襲い掛かって来ました。

   勇者は初めての実践を経験することになりました」


勇者「とりゃー」


女騎「うわぁーー!」


語り「勇者の一撃に、女騎士は吹っ飛ばされ、

   ダメージで上半身をすっぽんぽんにされてしまいました」


女騎「く、なんて強さだ。一撃でこんな目に合うなんて…。

   素肌を晒すなんて武門の恥! くっ、殺せ!」


語り「女騎士は屈辱感で一杯でしたが、

   勇者は殺すこともなく剣を収めました」


女騎「な、なぜだ?」


勇者「無益な殺生は嫌いだ。それに話せばわかる筈だ」


女騎「な、なんて高潔な人物だ。まさに騎士の鑑!」


勇者「そう言えば、どこに行けばいいかわからない。

   旅の準備も何もしていない。

   この世界は不案内だから、一緒に旅をしてくれないか?」


語り「女騎士は勇者の言葉に感激しました。

   力ある者が自分の事を必要としてくれたからです。

   しかし女騎士は素直ではありませんでした」


女騎「そ、そこまで言うなら仕方ない。共に旅をしてやろう。

   だが勘違いするなよ!

   貴様のためではないぞ! 

   この世界のために仕方なく共に旅をしてやるんだからな!」


語り「こうして女騎士が仲間になりました。

   その日は、旅の準備をするため、

   王都の宿で一泊することになりました。

   そして女騎士の綺麗な素肌にムラムラした勇者は、

   彼女に迫りました。

   女騎士は、嫌よ嫌よも好きなうちと受け入れ、

   勇者は魔法使いでしたが魔法使いじゃなくなりました。

   それに勇者は体力無尽蔵でしたので、交わりは朝まで続き、

   女騎士は気絶しました」


   3


語り「王都を出た勇者と女騎士が次に向かったのは、

   大聖堂でした。

   そこに魔王の有力な情報があるからです。

   大聖堂に着くと、

   神官様と僧侶の少女が快く受け入れてくれました」


神官「ようこそいらっしゃいました。勇者様」


僧侶「異世界からわざわざ、

   魔王討伐のためにありがとうございます。

   …とても凛々しい方なのですね(頬を朱に染める)」


神官「それでは、魔王様のことですが…」


勇者「む! ちょっと待て! なぜ魔王に様を付ける!

   さては貴様、魔王の手先だな! 正体を現せ!」


神官「…くくく、よくぞ気が付いた勇者よ!」


語り「なんと神官様は魔王の手先だったのです。

   神官様はおどろおどろしい魔物に変化しました」


僧侶「そ、そんな、神官様が! 全然気が付かなかった!」


女騎「な、なんて化け物だ! 勇者よ、どうする!?」


勇者「俺に任せろ!」


魔物「くくく、ひねりつぶしてくれる!」


語り「恐怖にまみれる女騎士と僧侶でしたが、勇者は怯みません。

   とてもすごい魔法を使いました」


勇者「くらえ!」


魔物「ぐわっーー!」


語り「魔物は一撃で霧散しました。大聖堂は守られたのでした」


僧侶「神官様がいなくなられた。……これからどうすれば」


語り「僧侶は悲しみくれました。そこで勇者は僧侶を慰めます」


勇者「大丈夫だ。魔王を倒せばなんとかなる。

   共に旅をしてくれないか?」


僧侶「た、確かに魔王を倒せばなんとかなります。

   ですが、私がお役にたてますか?」


勇者「もちろんだ」


語り「勇者は僧侶の頭を優しく撫でました。

   そして僧侶はすごい巨乳でした。

   そのまま大聖堂で交わりました。女騎士も参加しました。

   翌朝までに二人は気絶してしまいました。

   こうして勇者に新たな仲間が加わったのでした。」

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