第28話 戦闘指導
防勢行動の主眼は、
「じゃあ始めようか、状況は敵の先遣隊――あるか分からんが、と
中隊長の分析を指導・承認して2日。戦闘団本部を開設し、戦闘指導を行うために中隊長を集めた。
戦闘指導とは、英語でブリーフィングとか言う、要は作戦前擦り合わせのことである。指揮官の意図は、何もしなければ指揮官の頭の中にしか無い。それを表現したものが作戦計画であり、方針であるのだが、それだけでは不十分だ。
それを埋めるのが、戦闘指導である。
戦闘団本部は鉱業地域の横、BP4に置いた。
BP4は、
HQCoをBP4に展開させ、本部はドーベック市街に置くべきか悩んだが、今の我々に部隊間で連絡を取り合い、有機的に連携する能力はない。(となるとBP5も十分選択肢に入りうるのだが、それだとBP5が突破された場合
「はい、先遣小隊の射撃により、敵先遣隊を撃破或いは制圧します」
「その目的は?」
そんな連隊本部の奥、本来なら
幕僚組織は
「
「そのためには何が必要だ?」
「敵を先んじて発見することが必要です。そのため、1Coは偽装した監視哨を利用します」
正直、1中隊以外は2中隊の本業が警察、3中隊が予備役動員部隊という有様なので、1中隊には戦闘間、戦場中を駆けずり回ってもらうことになるだろう。
「敵がなお前進を継続した場合は?」
「先遣小隊を後退させ、1Coは遅滞戦闘を展開します」
「その際、何に留意する?」
「はい、障害と地形を利用することと、情報を収集するため、眼鏡によりよく敵方を監視する一方、機動・射撃を分担、連携させることに留意します」
いくら隘路とはいえ、1コ中隊ができることは限られている。
部隊が携行できる弾薬には限りがあるし、何より、隘路ということはこちらが準備できる陣地や障害も小さいし、敵も戦力を集中するのだ。
「その通り。遅滞の時期は12時間を目標とするも、もうヤバいと思ったら一報の上、
「その際には煙幕を展開して後退します」
R3は、商取引にも使っている重要な街道だ。本当は道を尽く爆破して「もう通れませーん!!!」とやりたかったが、もし勝って
「それでは、COPが離脱して隘路出口からBP5へ向け前進したとき、2中長」
「中隊は臼砲小隊と連携して攻撃準備破砕射撃を実施、攻撃目標は判別できた場合敵指揮部隊を優先とします」
「敵部隊が突撃を開始した場合は?」
「はい、暫時小銃・
「よし」
我の勝ち目は、BP5に構築した巨大かつ周到な防御陣地と、障害、特に大量の鉱業用爆薬を用いることができる点にある。
幾ら旅団と言えど、これを強行突破した場合、絶対に無傷では済まない。
「発動にあたっては味方に巻き添えが出ないようにする一方、過早な発動はしないようにな」
理想的には、障害の発動を以て
「2中隊は障害発動後もなお敵勢力を押し留められない場合はBP4へ撤退。1Co、2Coは渡河直後の敵を撃破すべく戦闘を展開する。できればココで敵の行き足を完全に潰したいな」
R3上で爆薬を使えないように、橋を爆破して落とすことも、できればしたくなかった。どれだけあの橋を架けるのに苦労したことか!
「3中隊はCTからの信号を受信したらどうする?」
「はい、3中隊は後備中隊としてドーベック市内の警備及びBP1、BP2での防御戦闘を準備する一方、鉄道機動を準備します。
「その通り。できれば3中隊の戦闘参入は逆襲発動時まで控えたいが、臨機の対応を行う可能性があるから注意してくれ。但し、警戒中ドーベックへの敵襲らしい兆候を発見した場合、中隊長所定でBP1・2での防御を行って良いから、その際は信号を発信した上で中隊長判断を優先」
3Coは、いわゆる『予備部隊』だ。
予備部隊を最後の砦として運用することは本当は控えたかったが、
当初の構想では2Coをこのような運用に任じ、3Coを陣地に展開させようとしていたが、3Coの錬成状況、動員状況は、残念ながら芳しく無かった。(そんな部隊を下手すりゃ臨機に運用するのだ。最悪である)
「逆襲発動時には、警戒部隊を除きCTは主力を以てR3を回復すべく攻勢する。この際、地面は滅茶苦茶になっているだろうから特に不発弾等に注意」
更に、臼砲弾も一応は完成したものの、
この後も、
「最後に、一番大事なことを言っておく」
中隊長が疲れ始めたのを感じる。
注意を砂盤からこちらに向けさせる。
「敵は、戦闘は、
今までやってきたことが全部無駄になることだってあり得るのだ。
というか、作戦計画、戦闘指導の通りにコトが運ぶことの方がおかしいとさえ言える。そんなことが起こるほうが珍しいのだ。
だが、それはそれで良い。論より証拠、
「諸君らも分かってると思うが、正直、厳しい戦いになると思う」
おおよそ1コ旅団規模の攻撃を、だいたい1コ連隊で受け止める。
中隊長を見渡す。皆、表情は無かった。
「だが、我々はやるしか無い。そのための準備はしたし、勝ち目も無いわけでは無いが――、あんまり劇的に勝ちすぎると、もっと強い敵が来ちゃうかもな」
少し場を和ませようとしたが、逆に固くなった。
各中長の戦闘服は、滲み出した汗で変色している。
「これが終わったら、戦闘団の全員に一杯奢るよ」
負けられない、勝つしかない。その意思の硬さだけは、負けないという自信があった。
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