第5話変わることはない

きっと僕は変な人間なのだと思う。普通の人が考えないことをいつも考えている。なので、僕は常に黙っている。自分が変な人間なのだと自覚しているからだ。きっと当たり前のように喋った所で、受け入れて貰えない。なんて勝手に諦めている。そんな自分がきっと心底嫌いなんだと思う。

だから僕はタブーを犯した。自分で自分を愛したのだ。世界を確立してしまったのだ。そこには何人たりとも介入することを許さない。自分だけの世界が生まれた瞬間でもあり、他の世界と隔絶した瞬間でもあった。だから僕は僕であることに非常に価値を見出していた。でも所詮はまがいものの愛にすぎないのだ。それを知っていても、手放すことを僕は許してはくれない。

そんな僕だからこそ彼女は今までできたことはないし、女性と話したりしたこともあまりない。そんな無意味な世界に浸ってしまったばかりに、人を愛することを忘れたのだ。だから僕は怖いんだ。自分で自分を見捨てることが、如何に残酷で苦しいことなのか知っている。きっと彼女はそんなこと考えもしないで、気まぐれに自由に生きている。そんな彼女だからこそ土足で僕の世界に踏み入り、僕を見つけてくれるのかもしれない。

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