第18話 誰!? 誰なの!? 本当に知らないおばさんが来たよぉ! 怖いよぉ!
「誰!? 誰なの!? ねえ誰怖いよぉ!」
異常事態だ。
何か私にとってよくわからない事が起きている。
なんで? なにあれ? なにあいつ? やっぱ顔からして気に食わなかったのよ。なんなのよあの頭のおかしい女!
「ゆ、ゆみ、大丈夫か!」
部屋から飛び出したお兄ちゃんがふらつく身体で私に駆け寄る。
ノックの音はお兄ちゃんが叫んだと同時に止む。
「お、おにいちゃ~ん! こわ゛かったよ゛ぉ~~~~~~~~!」
なんで私こんな目に遭わなきゃいけないのぉ!?
目からポロポロと涙がこぼれて、視界がぼやけていく。心臓が早鐘をうち、吐き気がこみ上げてくる。何がなんだかもう本当に訳が分からない。
私を抱きしめるお兄ちゃんだけが真実だった。
「う゛ぅ~~~~~~~~~!」
「よしよし、警察を呼ぼうな。怖くないからな。俺のせいだ。ごめん……傍にいるから……心配しなくていいからな……」
こうして警察が来るまで、お兄ちゃんは私のことを抱きしめていてくれた。
*
警察が来た時、既に
「今こうしている間にも……頭のおかしい女がお兄ちゃんに近づいているかもしれないのに……夜闇に乗じて……(私のせいで)弱ったお兄ちゃんに……」
そんな時だ。私の携帯に一本の電話が入った。
表示された名前は佐々木サクラ。肝心な時に役に立たなかった間抜けが今更何なのかしら?
「はい、ゆみです。どしたのおねーちゃん」
「先輩から話を聞きました。あの“ドアノッカー”が現れたようですね」
「は?」
この女、何を言っている。
「……ごめんなさい。まだ幼い貴方をこんな戦いに巻き込んでしまうなんて」
「待って待って待って。戦いって?」
電話口からため息が漏れる。
「サトルさんを巡る恋愛戦争ですよ。先輩ってば、モテモテだから……ふふ、悪い人です❤」
「ついでに惚気けないでもらえます?」
「ふふっ❤」
「お姉ちゃん、通話切っていい?」
「おむつを替えた仲じゃないですか……冷たくしないでください」
やだもうこいつと関わりたくねえ~~~~~~!
「まあいいでしょう。本題に入ります」
もう話し疲れたので大人しく聞くことにした。
「“ドアノッカー”は頭のおかしいストーカーです。以前、私がボコボコにしたのですが、私が病に倒れている間に私を襲撃してきました。迎撃した筈なのですが懲りずにそちらへ向かったようですね。先輩は私が守りますから、事件が解決するまでゆみちゃんは大人しくしていてください」
「大人しくって……何をするつもりですか?」
「ゆみちゃん。貴方は家で大人しくしていれば良いんです。これは私たちの戦い……貴方は巻き込まれてしまっただけ」
「私だって子供じゃないんです。教えてくれたって良いでしょ!」
「……ごめんなさいね」
それから少しだけ黙り込む。
「本当に、ごめんなさい。それだけなの。貴方が怖い思いをしたのは先輩に近づく蛆虫を潰しそこねた私のせいです。だから、謝りたかった」
「お姉ちゃん(コワッ)……」
私はお前に赤ちゃんプレイを強制された時の方がよほど怖かったが? 今でも偶に夢に見るが? 女児だぞ? 慈しめ?
「……お姉ちゃん」
この女はとてもむかつくが。
「私、お姉ちゃんのお手伝いできないかな」
あのキチガイと共倒れしてくれたら万々歳だわねぇ~~~~~!
「ゆみちゃん……! そんな、そんなこと……」
「私、お兄ちゃんとお姉ちゃんの家族みたいなものですもの」
「ああ、ゆみちゃん……!」
電話の向こうではお姉ちゃんが感動のあまり声を震わせている。
お姉ちゃんは一つため息を吐いた。
「お気持ちだけ頂いておきます。奴らは危険です。ゆみちゃんはお父さんが居る自宅でちゃんと大人しくしていてください」
「奴ら? ちょっとまって、奴ら?」
「申し訳ありません。言い忘れていました。“ドアノッカー”は」
ふと、奇妙なことに気がつく。
そういえば先程から家の中が静かだ。
確かに普段から静かな我が家だが、この時間ならパパがキッチンで鼻歌交じりに手料理を作って居るはずなのに。
「二十人居ます」
「はぁあああああああああああああ!?」
その悲鳴に合わせるように、それは来た。
ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ
ノックの音。
「しまっ」
突如終了する通話。
ガチャリと開く扉の音。
足音は近づいてくる。もはや一刻の猶予も無い。
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