第13話 避難
車は郊外へ向かい幹線道路からそれ木の柵の間を抜け10分程で石と鉄の大きな門の前に着いた、15秒程止まって門が開き動き出した。
運転手が顔をカメラに見せ一言言って門が開いた。
実はこの一言に意味がある、何もない時の言葉と、異常、例えば、後ろに誰か強制されて乗せている時である、この時は無言か違う言葉を言う事になっていた。
門を潜って5分位で漸く家に着いた、車を降りた研一郎は、これは家なんて言う代物ではない、まるで宮殿だ、と思った。
「どうぞ、こちらです」
先に立ち歩き出した、その後を研一郎が従った、
玄関ドアが内側から開けられ男が立っていた、
「お久しぶりです、ジェニファーお嬢様、お元気でございましたか」
「ありがとう、じぃも元気そうね、お父様は、書斎?」
「はい、お喜びになりますよ」
「どうだか」と言って奥へ進んだ
どんどん奥へ行くが時々ドアがあり、広大な中庭も見え、まだ奥へ行った、ジェニファーは一際大きなドアを開けて大きな声で呼んだ。
「ダディー」
「ジェニファー」
大きな机の向こうに座った男が喜びの奇声を上げ、二人は歩みより抱き合った、
「ジェニファー、顔を見るのは嬉しいが、何か怖いのは何故かな」
「お父様ったら、私って、そんなに我が儘かしら」
「ジェニファー、我が儘とは、思わんが、悩む」
「お父様、今日は、良いお客様をお連れしたわ、こちら、岬 研一郎さん、日本人よ」
「岬 研一郎です」と礼儀正しく挨拶した。
「ジェニファーの父のジェフリー・ウインステッドてす」
「ウインステッドと言うとあの大企業のですか」
「ジェニファー、彼は何者かね、彼氏か」
「お父様、彼の話を先ず聞いてほしいの、彼は・・・」とMITでの出来事を話した。
父親は、ジェニファーが話を進める毎に興味をそそられて行った。
「君は、何処かの教授かね」と父親が聞いた。
「いいえ、ただの旅行者です、偶々、講演を知って潜り込みました」
「物理学者ではないのかね」
「日本では物理学を学びましたが、無職です」
「無職かね」と不快な顔をした。
「お父様、そんな事は関係ないの、どう彼に実験させてみない」
「幾ら必要で、成果は何かね」
「そうですね、1千万ドル掛けて、何ができるか今のところ解りません」
「まるで詐欺師とも思える言葉だな」
「お父様、物理学を学んでいる私が言うわ、彼は本物よ」
「5万ドル位で詐欺師ではない証拠をお見せできると思います」
「お父様、私も一緒だから大丈夫、それに、実験はこの敷地ですれば良いでしょう」
「ジェニファー、最初に言ったろう、我が儘ではないが、悩む」
「お父様、もし本物なら、何ができるか楽しみでしょう」と誘惑した。
「ジェニファー、詐欺師はお前の方だな、解かった、賭けてみよう」
「お父様、それから、先程の話の様に、彼をきっと、この国だけでなく、各国が探しているはずよ、警備を厳重にした方が良いと思うわ」
「本物と言う事か」
「そうよ、誰もが彼の頭の中を狙っていたのを、私がここに連れてきたの、解かった」
「その線を少し調べよう、ジェニファー、進めていいよ、直ぐに口座に振り込む」
と言って書斎から出て行った。
研一郎、本人は蚊帳の外だった。
「研一郎さん、ごめんなさい、突然連れて来て、でも、聞いて下さい、もし、ここに来なければ、あの教授に貴方の理論を盗まれていました。
そして強制的に国家機関の研究所で監禁状態で研究させられるか、外国の研究所かになっていたでしょう。
あの教授がと信じられないでしょうが、あの人は、自分の助手の理論を何度も自分の名前で発表し告訴されています。
何れも起訴には、なっていません、多分、買い取ったと思われています。
それよりはここで自由に研究して下さい、勿論、父の会社に利益は行くでしょうが、父は技術の軍事利用はしません、悪用は決してしません」
「もう良いですよ、機会を貰えて嬉しく思います、それに、貴方のような美人と一緒に仕事ができるなんて最高です」
「研一郎さんは、お口もお上手なんですね」
「いいえ、本心ですよ」
「研究所の用地を見に行きましょう」
その日は研一郎の求める設備を聞き研究所の大きさを決めた、
「明日から、早速、工事に掛かります、設備が整うまでに詳細設計をお願いします」
「プロトタイプは既に頭にあります」
「では、必要部品を一覧にして下さい、準備させます」
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