うらがえし

莉菜

魔王の話

「ふっふっふ……私はこの”宇宙”の主の”魔王”である。これからこの宇宙について、宇宙に生きる生命体たちに説明しようと思う。

136億年前、私はこの宇宙を買った。

もう少し詳しくいう。その頃私はある種の好奇心に取り憑かれていた。”空間”ができ、”物質”ができていく様子をこの目で見たいという好奇心だ。それはある種のロマンで、昔から私の中にあり続けていた。いつの日か自分で空間を創造してみたいという気持ちを忘れてしまったわけではないが、私は生涯の半分を金を儲けるために使った。しかし、私が生きていくうちにどんどん宇宙についての謎は解明されて、私が億万長者になった頃には魚を水槽で買うようにミニチュアの私が住んでいる空間とは別の空間を家の中に置いておくことができるようになった。もちろん、それにかかる費用は膨大で、私の世界でも数えるほどしかそれほどの財産を持っている人はいない。それに、”空間の種”を作るのは運試しの要素が強く、ごく稀にしか空間の種はできない。

しかし、私はとてつもなく幸運だった。私が空間を買うと決めた次の日、知り合いの科学者が空間の種の作成に成功したのだ。

私はすぐさまその空間の種を家の中の機械にいれ、少しの刺激を与えた。すると一瞬でビックバンが起こった。その瞬間は私の生涯で最も感動的な瞬間だった。即座にこの空間に”宇宙”という名を付けた。それから毎日、私がダークマターを少しずつ注ぎ込むと空間はそれを吸い込んで少しづつ大きくなっていった。

そして、地球に生命が生まれた。現在、人間という我々によく似た生命体が生きているようだ。もちろん、それもそのはずで、この宇宙は私たちが住んでいる宇宙を可能な限り再現したものだからだ。宇宙という呼称も、私たちが住んでいる空間を宇宙と呼んでいるのが由来だ。

つまり、現在、宇宙の中にもう一つの宇宙が存在していることになる。もしかしたら、我々のいる宇宙もこのようにしてだれかの手によって人為的に作られた宇宙かもしれないが、それは我々にはまだわからない。

ここで、私の中にふとある考えが浮かんだ。私が所有している宇宙は正確には違うかもしれないが、我々の世界のパラレルワールドだ。私がここで少し手を加えれば、もしかしたら違うパターンの未来を見ることができるかもしれない。

私は早速科学者に依頼をして、私の持つ宇宙の未来を変える技術を開発してもらった。

今から私はその技術をあなたたちが住む地球に試してみようと思う。」

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