現実?異世界?どっちがお好きですか?

きつねころり

第1話

 今の状況は非常にまずいかもしれない・・・。


 急がなくては。


 これ以上は・・・無理だ。


 どんなステータス異常よりも危機的な状態だ。


 だが・・・。ここを乗り切れればまだ助かる。


 全身から汗が噴き出てくる。頭が真っ白に飛びそうになるのを何とか堪え、必死に立っているのが現状だ。座ってしまったら、もう二度と立てない気がする。


 いや、立てないな。


 その時、閉じ込められていた扉が開いた。


 ここに一緒に閉じ込められていた戦士たちは我先にと脱出して行く。


 事前にチェックしていた「安全地帯」に辿り着けさえすればっ!


 焦る気持ちを抑えながら、最後の気力を振り絞り目の前に出現した階段を下りていく。見えている距離よりも長く感じる。

 ここを下って、左に曲がる。殆どの戦士たちは右に曲がるのは知っているので、こっちは人が少ない。そう。所謂「穴場」ってやつだ。


 もうすぐだ!気力は・・・まだいける!


 ここの角さえ曲がれば!


 角を曲がり入り口を確認する。そこにあった人一人が通り抜けられる空間を抜ける。


 誰も居ない!勝った!心の中でガッツポーズだ。


 そして、小さなドアを開け中に入り、カギを閉める。これでもう大丈夫だ。


 そう、自分は生還したのだと実感した。


 


 社会的に、死なずに済んだ。「安全地帯トイレ」に無事に辿り着く事が出来たのだった。



 今、何だよ。紛らわしいな。って思った方。チッチッチ。あまいな。

 極限まで腹痛に追い詰められた事はあるかい?あれは、本当にヤバイ。何度「あっ、もう無理」と死を悟ったことか。何度「」押さえつけている筋肉を開放したら楽なのに。と思ったことか。

 だが、このご時世、何処で誰に見られているか分からないだろ?それに、写真撮られて、ネットで出回ってみろ。もう、それは死だろう。


 そんなに追い詰められても、会社には行かなくてはならないのだよ。


 今思えば、会社も満員電車も自分の想像以上に負担になっていて、体からの悲鳴だったのかも。ストレス、まじ危険。




 だから、そこから逃げ出したいと思ってしまったんだ。あの時に。


 まぁ、自分の判断は正しかったのかはまだ分からないけど。


 それでも結局、何にしても生きていかなくちゃならない訳だし。


 もう少し出来るだけやってみようと思うよ。


 

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