092. 第二審:ウキウキ魔力
その後もクイズは続く。
頭の良さではガーベラの方が上のようだが、さまざまな小細工を仕掛ける事でレヴィアは正解を勝ち取る。ガーベラが自信満々に答えようとした時に「あ、これひっかけ問題」と言って答えを間違わせたり、「これは次元連結論のちょっとした応用で解けますね」などと見当違いの理論をつぶやいて惑わせたり……。
そうして五十問ほどの問題が出題され、最後のクイズが出題された結果。
『以上で知力クイズは終了ー! さあ、点数を見てみようか。上位三名は……クインちゃんが十五点! ガーベラちゃんが三十点! レヴィアちゃんが五十点! という訳で一位はレヴィアちゃんだー!』
ワアアア! と歓声が響く。点差を見れば割と接戦であった。
ガーベラは結果を見てぐぬぬと悔しそうにし、レヴィアをものすごく睨んでいた。賢者としてのプライドを刺激されたのだろう。当のレヴィアは彼女を無視し、ぺこぺこと恐縮したように頭を下げ続けている。
一方、その結果を見た仲間及びロムルスはというと……。
「うわ。レヴィア、本当に頭もいいんだ」
「……まあ、いいんだけどねぇ」
「小細工が盛りだくさんだったな。まあそうしなければ賢者には勝てなかったのだろうが」
感心する純花、溜息を吐くリズ、冷静な評価をするネイ。そして……
「……ロムルス様。アレを見て何とも思わないのですか?」
「ん? 頭がいい以外の何がある? フハハハハ、流石レヴィアだ」
「…………」
そして順調に知能が落ちているロムルス。彼の答えを聞いたルシアはさらに沈んだ顔をする。
『さあ! それでは次の審査に移りましょう! まずは準備を行うので、皆様方は少々お待ちください!』
司会者の言葉と同時に、再び武舞台が下りてゆく。地下ではスタッフたちが何かを重そうに運び、先ほど同様に準備を進める。
『王族には必ずしも必要なく、千妃に必要な者とは何でしょう? ……そう、王子の強さに匹敵するほどの才能です! 第二と第三の審査では、花嫁たちにその資質を見せて頂こうと思います!』
その後再び上がってくると、花嫁たちそれぞれの前に人間の二倍くらいある大きさの岩が用意されていた。黒曜石を思わせる真っ黒な岩であった。
『まずは前半である第二の審査! 名付けてウキウキ魔力チェーーーック! 皆さま方は魔石というものをご存じでしょうか!? そう、魔力をため込む性質がある魔道具ですね! 現代において数少ない、古代の遺物を再現できたもの! そのメインとなる材料こそがこの物質、魔鉱石なのです!』
司会者が解説すると、会場の反応は三つに分かれた。魔鉱石の存在を知らなかった者、知っているだけの者、審査の内容を予測し成程と頷く者の三つだ。
『そして魔鉱石は魔力を注ぐと色が変わる性質があります! 黒から赤、黒から青……という属性を表す色に変わる訳ですね!』
加工されていない魔鉱石の魔力吸収率はそれほど高くなく、吸収されずに拡散しやすい。故に、これほどの大きさの魔鉱石を満タンにするのは至難の業だ。しかし魔法使いなら時間さえかければ満タンにする事も不可能ではない。オドと違い、マナはそこら中に存在するからだ。
が、それは想定していたらしく、制限時間一分というルールが設けられた。戦士はどれだけ多くのオドを注げるか、魔法使いはどれだけ多くのマナを集められるか。そういうものを見るのだろう。
『では候補の皆様はご準備を! まだ魔鉱石に触れちゃ駄目ですよ? 私の合図と同時に始めてくださいね! ……準備はよろしいでしょうか? カウントいきます。3、2、1……スタート!』
瞬間、ものすごい魔力が膨れ上がった。
主な発生源はガーベラ。だが彼女だけではない。知力クイズ三位の女クィンや、その他の女たちの魔力も中々のものであった。触れている手を中心に、魔鉱石へとぶわーっと色が広がっていく。反面、得意でない者の速度はミミズが這うような遅さ。
その光景を見たリズとネイは感心している。
「へー、流石賢者と呼ばれるだけの事はあるわね。周囲のマナがどんどん込められていってる」
「他の者も中々だな。相当な鍛錬を積まねばあの量と精度は無理だろう」
どちらかといえば吹き荒れる魔力量に驚く観客たちだが、リズとネイは魔力操作自体にも目を向けている。魔力量が大きければ大きいほど制御は難しいのだから。熟練の戦士、そして魔法使いだからこそあの凄さが分かるのだ。
「あれ?」
一方、その凄さが未だ分からない純花。彼女は不思議そうな顔をした。
「純花、どうしたの?」
「いや、レヴィアがさ。何もしてないから」
純花の言葉通り、レヴィアは岩の目の前で突っ立ってるだけ。顔をしかめ、何かに悩んでいる様子。
「ホントだ。レヴィアー。何してんのよー。アンタも頑張りなさいよー」
観客席から激励をするリズ。それを聞いたレヴィアは彼女の方をちらりと一瞥し、ハァーっとため息をつきつつ手を魔石鉱に。
「ふっ!」
そして魔力を込めたらしいのだが……全く光らない。
「あー……。もしかしてレヴィアって、魔力があんまり無い?」
「いや、そんな事はないはずだ。膨大な魔力を放っていたのを見た事がある。……いや、一瞬だったから総量はそうでもないのか?」
純花の問いに対し、ネイは答えながらも考察した。魔力操作は上手いが、オドの量は少ないのかもしれない、と。実際そのように考えれば一般的な見地と合致する。鍛え上げられた戦士ほどオドが多いという。
『終ーーー了ーーー! そこでストップです! さあ、審査に入りましょう!』
そこで一分が経過し、計測担当らしい魔法使いたちが魔鉱石へと向かう。候補者それぞれが込めた魔力量を評価しているようだ。
中でも明らかに多いのはガーベラだ。魔鉱石の大半が黄色に染まっている。他の候補者たちの倍くらいはありそうだ。
「ふふ~ん。どうですか。今度は私の勝ちですね~」
自慢するように胸を張り、レヴィアへとドヤ顔を向けるガーベラ。その彼女に少しだけ顔をしかめるレヴィアだが、深呼吸をして気を取り直す。
そして数分後。審査員たちによる精密な測定が行われた結果、ガーベラが五十点、その他優秀な者が三十点前後、不得意な者は十点そこらと発表された。ガーベラが頭一つ抜けた形であった。因みにレヴィアはゼロ、零点である。
『さて、ここまでの合計点を見てみましょう! トップは八十点のガーベラちゃん! いやあ、流石魔法使いですねぇ! 次に五十点のレヴィアちゃん! 第一審査とは両極端の結果でした。三位はクィンちゃん! バランスよく点を取ってきてます。次の審査でもその安定感を発表できるのでしょうか!?』
さらにここまでの合計点がスクリーンにて発表される。トップは八十点のガーベラ、次に五十点のレヴィア、そして四十五点のクインという結果。
その結果を見た純花は少し焦った表情になる。
「ああ、逆転されちゃった。大丈夫かな?」
「ここまでは魔法使い有利だったからね。仕方ないといえば仕方ないわ」
「うむ。審査はまだ半分だ。ヤツの実力を生かす機会もあるだろう」
そんな彼女をリズとネイがフォロー。実際、第二審査は剣士のレヴィアの実力を生かせるものではなかった。恐らく次からはそれを活かす審査があると思われる。
合計点を発表した司会者はさらに叫ぶ。
『それではここで一時間の休憩を挟みましょう! 午後からはさらにハードなものになるので、千妃候補の皆様はしっかりと休んでくださいね! それではまた一時間後に!』
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