オーレアンズの街の話

 


 あれから約二十日。今はオーレアンズに向かっている最中だ。

 何故パリスより遠いオーレアンズなのか?そこには色々理由があるのだよ。


 まず宿を取る時に揉めた。金銭的に余裕が無いにも関わらず、ガレオットさんが「別の部屋にしませんか」と言い出した。

 勿論これには理由があって、男女同室だと外聞がよろしくないんだとか何だとか。


 カーアンがキレかけたけれど理由が理由なので渋々二部屋借りる事にした。

 次に問題を起こしたのはリリアーヌだ。お金の関係で良い部屋なんざ借りられないのに部屋のグレードに文句をつけたのだ。


 あまつさえ部屋に二つしか無いベットを一人で占領した。これでもリリアーヌからすると小さいらしい。

 確かにリリアーヌの部屋にあったベットはキングサイズだったから普通サイズのベットを繋げただけじゃ小さいだろうね。


 わたしはともかくアリスやカーアンはベットに寝かせてあげて欲しかったから、「もっと広いベットにする?野宿って言うんだけど」って言ったら押し黙った。

 野宿、キングサイズ以上の広さだよ。だって地面全てがベットだからね。


 更に予想外枠でアーサーが問題を起こした。

 埃臭いのが判明した為リリアーヌが寝ている間にアーサーを丸洗いしようとしたのだ。


 そうしたら何と脱兎の如く逃げ出した。どうも風呂が嫌いらしい。

 月が真上に来るまで探して探して、やっと見つけて捕まえた。


 アリスは完全におねむの時間だったし、カーアンは目がしょぼしょぼしてるしで早く寝る為に多少手荒に捕まえる事になったけれどまぁ良いか。

 アリスとカーアンを先に寝かせて水桶でジャバジャバ洗ってたら『クソガ……』と水の中から聞こえた。幻聴の類という事にしておこう。決してアーサーの文句じゃない。


 次の日、両替してからホンフレウルの街を出発して金持ちのいる街にひたすら寄っては炭枯怨を売ってを繰り返した。勿論、売るのは買い取ったガレオットさんの仕事である。

 炭枯怨は非常に人気でリピーターが出そうな勢いだとか。おばあちゃん、この事知ったら喜ぶかな?扱いは食べ物じゃなくて炭だけど。


 ガレオットさんは一文無しだったのにいつの間にかわたし達を越す金額を所持していた。

 一個につき金貨7枚分をわたし達に払う必要があるのにそれを越すって事は、それ以上の金額で買われてるって事。


 商売としては当然の事だけどあっという間に越したというのが恐ろしい。

 一体いくらで売ったのやら……。


 ガレオットさんが取引をしている間、わたし達も見世物を開いていた。

 特にカーアンとアリスの出し物が大人気だった。


 アリスは糸の無いマリオネットという事でとても不思議がられたし、カーアンは美声で男女問わず魅了した。

 ただしカーアンは例の如く人を洗脳状態にしたので途中で歌を取り止める事が多々あった。


 色々観察や考察を繰り返した結果、洗脳状態にかかりやすいのは特に男性だと分かった。

 人魚伝説で魅了される船乗りも男性だし、人魚の歌にはそういう効果があるのかも?


 それと、どうやら洗脳状態になった人が向かう先は海らしい。

 ガレオットさんも海に入ろうとしていたし、まさか入水洗脳ソングなのだろうか。


 人魚伝説でも難破させてたし、人魚の歌ってこっわい。

 でも素敵でずっと聴いていたくなるんだよね。不思議ー。


 反対に、わたしとリリアーヌはあまり稼げてない。

 リリアーヌ曰く蜂蜜は作るのに勇気がいる作業なんだとかで一向に作る気配が無い。


 得た利益でレイピアを買ってリリアーヌに渡してみたけど、そっちではあまり稼げないみたいだ。

 確かに見ていて感心する程流麗な動きだし、蜂人族アベイルが珍しいらしくて見物客は集まるんだけどカーアン達に比べるとイマイチパッとしないからかもしれない。


 カーアン達の近くでやっているってのも稼げない要因かもしれない。

 離れてやれば良いんだろうけれど、揉め事が起きた時にすぐ割って入れるようにしたいからね。


 わたしもカーアン達の近くでやっているのが悪いってのも一理あるけれど、それ以上に『安価な似顔絵屋さん』ってのが新しすぎて世間に受け入れられてないってのもある。

『絵は金持ちの物』ってのが一般的な考えっぽいし、例を貼っといても人相書かと問われるだけだった。違うよ!


 もっとこう、庶民に受け入れて貰えるような何かが無いとダメなのかもしれない。

 現状どうすれば良いのかサッパリパリだけど。


 どうでもいいけど最近カーアンの機嫌が異様に良い。

 お金の心配から解放されたからかもしれない。本当にごめん……。


 所で、何か忘れているような……ま、良いか。


 ガレオットさんについて行く関係でお城に泊まる事もあった。

 そういう時は大きなベットがあったからリリアーヌはご機嫌だった。


 ただ、どうも貴族のリリアーヌに対する態度が気になる。

 王族なら敬う態度をとって然るべきなのに、一切そんな事は無かった。


 それどころか信じられない物、例えば幽霊だとか幻だとかを見るような目で見ていた。

 どうも何かがおかしい。リリアーヌは本当に王族なのだろうか。思い込みじゃないよね?


 そんなこんなで金銭に余裕が出来た結果、少し遠回りしてパリスに行く事になった。それが次の目的地オーレアンズ。

 オーレアンズから暫く行くとパリスに着く。少し遠回りってだけでそんなに遠くはない。


 今までと違って街道沿いに行くから旅人だとか守護者に囲まれる巡礼者だとか商人だとかとすれ違う。

 これが旅の当たり前の筈なのに新鮮だ。今までどれだけ森の中の強行軍をして来たんだろ……。


 因みに虫人国にも子人国にも守護者はいた。ただし同じギルドだからといって連帯している訳では無い。

 呼び方も各国に沿った呼び方になっている。虫人国ならGardienギャルジャアン、子人国ならGuardianガーディアンといった具合に。


「そういえば、オーレアンズには天使伝説があるそうですよ」

「天使伝説?」


 のんびり街道を歩いていると不意にガレオットさんが話しかけて来た。

 これは初耳。天使の話は世界中にあるんだね。


「はい。なんでも、約二十年前に空から天使の赤子が降って来たとか。それが目当てでオーレアンズに観光に来る人もいます」

「へー!会いたいなぁ」


 約二十年前なら生きてるよね?天使と会話できるなんて夢みたい!面白そう!

 金髪碧眼なのかな?空を飛べるのかな?


「会いたいのですか?それなら残念ですね」

「何で?」

「天使の赤子はすぐに天に帰ってしまったからですよ。今はただ伝説が残っているだけです」

「なんだ……」


 一瞬でがっかりした。期待を上げて落とすなんてサイテー!

 わたしの空気が抜けるように凹む様子が可笑しかったのかガレオットさんはクスリと笑った。


「そんなに気を落とさないで下さい。ほら、見えて来ましたよ。オーレアンズの街です」


 ガレオットさんが指差した先にはオーレアンズの街の城壁があった。

 いつもの如く関所を通り抜けて中に入る。


 余談だけど、ガレオットさんやリリアーヌに教わって虫人国の文字は書けるようになった。

 それからガレオットさんから月人語を少し教えて貰った。


『月人語を教えて欲しい』ってガレオットさんに言ったらあり得ない物を見るかのような顔をされた。

 いつもニコニコポーカーフェイスなガレオットさんにしては珍しい事だった。


 驚いた理由としては基人グルントラーガは基本的に自国語に誇りを持っていて他言語なんざ知りたがらないし必要があっても基人語で押し通そうとするからだとか。

 自分の種族ながら傲慢甚だしいな!そりゃ他種族に嫌われるわ!


 その後は嬉々として教えてくれた。感覚は伊国イタリア語に近い。

 どんな種族でも「自国の言葉を教えて」とせがむと割とあっさり教えてくれる。わたしとしては嬉しい事だね。


「日本語を教えて」と外国人に言われたらわたしも嬉々として教えちゃう気がするから、似たような物かもしれない。

 自国に関心持ってもらえると嬉しいよね。


「ここはそんなに大きくない街なのですが、宗教施設が集まっています。それと、ワインが名産品です」


 ワインねー。お酒禁止令の出ているわたしには関係ないかな。一回飲んでみたいけどねー。

 ガレオットさんの言う通りあっちにもこっちにも教会だ何だといった宗教施設がある。天使伝説の関係かね。


「僕は領主の館に向かいますが、どうしますか?」

「んー、たまには観光でもしようかな。買いたい物もあるし……。カーアン達はどうする?」

「そうね、アタシもついていこうかしら。そろそろ休みたいって思ってたのよね」

「わたくしもついて行くのだわ。天使伝説に興味があるのだわ!」

「ならアリスもついてくの!」

「決まりだね」


 皆で観光となった。

 あまり稼いでないにも関わらず観光とか金食い虫のような真似したら怒られるかなと思ったけどそんな事はなかった。


「では、十六時にここへ来て下さいね」

「はーい」

「えぇ」

「はいなの」

「分かったのだわ」


 天使像の前でガレオットさんと別れて観光に繰り出す。

 リリアーヌの要望で天使伝説巡りをするけれど、その前に……。


「ところで、買いたい物って何なのよ?」

「あぁ、彫刻刀だよ。絵が売れないから、まだこっちの方が売れるかなって」

「えーと……えぇ、そうね、頑張ってね」

「うん」


 何かカーアンの反応が微妙だ。何故に?もしかして彫刻が出来ないとか思われてる?

 そんな事ぁない。木彫りの熊だって作れるし、仏像だって彫れるんだよわたし。


「それにしても、何でグリム先生の絵が売れないのかしら。この世界の人達は節穴ね」

「文化が違うから……」


 いくら良い物でも価値が分からなければ売れない。

 元の世界でも縄文人にスマホを見せつけたって首を傾げられて終わりだと思う。


「ま、さっさと買って来なさいな」

「うーい」


 そんな訳で鍛治屋に行って良さげなのを買って来た。

 持ち手に彫刻が刻まれたり宝石がはまってたりしたのもあったけどそんなの使いにくいし要らないよ。


「次は天使伝説なのだわ!」

「でも、何処に行けば良いの?」

「とりあえず教会?」

「そうね、行ってみましょう」


 近くにあった教会に入ってみる。天使をモチーフにした彫刻が沢山あって、人気の高さが伺える。

 ギィ、と木製の扉を開くと壮麗なステンドグラスがわたし達を出迎えた。


「まぁ……素晴らしいのだわ!」


 ステンドグラスは天使伝説を象っているらしい。

 手前から奥に進むにつれて物語が進行していく。


「おや、客人ですか……あっ!?」

「あっ!ルネ!」


 説教壇の更に奥、裏方部屋らしき所から出て来たシスターに声をかけられた。

 驚いて振り返ると、そこにいたのはで監獄島で別れたルネだった。


「良かった、出て来れたんだね!」

「えぇ!あなたのおかげよ!」


 お互いに手を組んでぴょんこぴょんことその場で跳ね回る。

 背中から生えた羽も嬉しそうにパタパタ動いていた。


「あれからどうしたの?」

「そうね、そこから話すわね」


 ルネ達はあの後自分達の使えていた貴族に鍵を渡してから逃げ出したらしい。あくまで渡しただけで貴族のその後は知らないという。

 逃げ出す時、海がモーセの如く割れていて酷く驚いたんだそう。


 中には『聖人様のお導きだ』と言って拝み倒す人もいたんだとか。

 あれやったの多分リリアーヌだと思うんだけどね。カラクリは分からない。


 逃げ出した後は各々散らばって、家に帰ったり月人自治区に向かったりしたんだと。

 ルネは家に帰ったタイプでオーレアンズは地元なんだって。


 帰った後、脱獄の容疑で捕まるのを防ぐ為に教会に入って法の手を逃れてるんだとか。

 虫人国も基人国と同じで法皇の管轄下の者は国王でも手が出せないらしい。


 因みに虫人国の法皇は基人国の法皇とは別人。教義違うし当たり前だね。

 お膝元はここオーレアンズ。天使伝説が出来る前からここにあるそうな。


「あなたは?」

「わたしはね……」


 わたしも監獄島から今までの旅路を話す。

 といっても大した事じゃない。ホンフレウルの街に行ってガレオットさんを拾って道なりに旅して来ただけだもの。


「ホンフレウルには脱獄の話は流れてなかったの?」

「うん。情報が伝わる前に来れたんだと思う」


 そんな事はない。寧ろ逆、遅かったのだ。

 遅すぎて噂も消えて検閲も緩くなった頃に着いたんだと思う。


「とにかく生きてて良かったわ。あ、そうそう。これを返さなくちゃね」


 そう言ってルネは奥に引っ込んだ。何やらゴソゴソと物を漁るような音が聞こえる。

 ルネが何やら探している間にリリアーヌが話しかけて来た。


「誰なのだわ?」

「あ、そっか。リリアーヌは知らないか。監獄島で囚われてた人だよ」

「罪人なのだわ?」

「冤罪……というか巻き込まれじゃないかな」


 どう考えてもルネ自身には非は無かった。政治闘争に巻き込まれただけなのだから、当たり前ではある。

 そうこうしている内にルネが鍋を持ってきた。わたしがあげた無限にお粥が作れるやつだ。


「返すわ」

「え、別に良いよ」

「そんな訳にはいかないわ。貸された物は返さなきゃ!

 それにしても、とっても助かったわ!道中、食に困らずに生き延びられたのもコレのおかげよ!ありがとう!」

「あ、うん。どういたしまして」


 本当にいいんだけどな。豪華な食事が出るテーブルあるし。

 そういや、前にも鍋を渡した人達がいたような……あ。


 あの村の人達か。わたしに鍋をぶっかけて来た人達だ。同じ鍋を渡したのに対応が全然違う。魔女バレしてるか否かってのもあるだろうけど。

 ルネはこんなに良い子なのにあの人達と来たら……。今どうしてるんだろ。


「そうだ、お礼に何か出来る事はある?ワタシに出来る事なら手伝うわ」

「なら、天使伝説について詳しく知りたいな。この人……リリアーヌがとても興味を持ってるの」

「お安い御用よ!ついて来て!」


 そう言われてまず案内されたのはさっきガレオットさんと別れた天使像の所だ。

 大理石で出来た白い像で、背中から天使の羽を生やし、頭には天使の輪っかを浮かべた赤ちゃんだ。


「これが天使様を象った像よ。観光名所として人気なのよ」

「羽は虫人と違うのだわ?」

「そうね、鳥みたいな羽ね」


 前の世界の天使のイメージそのまんまだ。転生わたし、カー者組アン、ルネは特に違和感無く受け入れているけれどリリアーヌにとっては驚く事らしい。

 首を傾げつつ像を見上げている。虫人リリアーヌにとったら羽と言えば硬い物、ってイメージが強いのかもね。


「頭の上にドーナツがあるの!」

「ドーナツじゃないよ。アレ光るんだよ」


 天使をよく知らないのかアリスは天使の輪っかをドーナツだと思ったらしい。

 美味しそうな天使の輪っかだね。可愛いらしい間違いだ。


「グリムお姉ちゃん、何でアリスの頭を撫でるの?」

「なんとなく……」

「さ、次に行くわよ」


 アリス可愛いなぁ、と思いながら良い子良い子してると引率のルネが次の場所に向かって歩き出した。

 途中、大きな時計塔のある古めかしい建物を見かけた。何か見覚えあるような……。


「アレは何?」

「あぁ、アレは大学よ」

「あー」

「あれが……」


 なる程、言われてみれば基人国の大学と似ている。ただしあっちの方が綺麗だ。

 時計塔があるのは大学の印なのかね。


「確か、基人国にも大学があるのよね?基人国のは虫人国の大学を模倣した物だそうよ」

「入れる?」

「うーん、あなたの頼みといえど難しいわね」


 ブランダーが入学式の時スピーチで言ってたね。

 本当は中に入りたいけれど流石に無理かぁ。……図書館……うぅ……。


「よくあの基人が虫人の物を模倣したわね……と、着いたわよ」


 ルネが次に案内したのは小さな家だ。ただ、薄汚れていたりする所か寧ろ磨き上げられていて綺麗だ。

 その家の近くの広場で人が集まっている。椅子に座った恰幅の良い虫人のおばあさんが人混みの中心にいて、その周りを騎士っぽいのが囲んでいる。


「アレが天使様が七日間お過ごしになった家で、あそこのおばあさんが天使様をお世話した人よ。あの家の主なの」


 天使を育てた実績があるから尊敬されてるのかな?広場で集まっている人達の中には拝み伏している人もいる。

 遠巻きに眺めているとおばあさんは威厳のある声でゆったりと話し始めた。


「皆様、これが天使様のお使いになったガラガラです」

「「「おぉーっ……」」」


 綿の敷き詰められた箱に入った古ぼけたガラガラを取り出すや否や沢山の人が涙を流しながら喜び始めた。聖遺物みたいな扱いなのかな?多くの人が順繰りにガラガラにキスをする様子は滑稽だ。


「あぁ!天使様!どうかずっと私めの近くに……!」

「無礼者!引っ捕らえろ!」


 順番が回って来た人の中にガラガラを返さない人が出た。

 と思ったら側に待機していた騎士に逮捕され、ガラガラと引き離された。


「中にはああいう人もいるのよ。信仰心が高過ぎたり、ただの強盗だったり理由は様々だけどね。

 だからおばあさんの近くに聖騎士様達がいて聖遺物とおばあさんを守っているのよ」


 ルネが呆れた物を見たような顔で解説してくれた。

 実際返さないのは呆れた物だね。ただ、物が物だから絵面が酷い事になってる気がする。


「あの後もあんな感じで他の聖遺物を紹介するだけだから、次に行きましょう。今から行く所が最後よ」


 集団に混ざりたそうにしているリリアーヌを引っ張って次の目的地に向かう。突撃しなかったのは偉いよ。

 段々街の外れの方に行ってるけれど、大丈夫かな?変な所に向かってない?


「どこに向かってるのだわ?」

「ロイレ渓谷よ。街の外になるけど、そこで天使様が発見されたの。行くでしょう?」

「勿論なのだわ!」


 へー、街中で見つかったんじゃないんだ。あのおばあさんは何しに渓谷に行ってたんだろう。

 街の外は基本的に畑か牧場か道くらいしかない。今は冬で人もいないし畑も土だけだし、代わり映えのしない景色を淡々と進んで行く。


「昔のわたくしなら音を上げていたかもしれない距離なのだわ。今は全然疲れてないのだわ」


 リリアーヌは基礎体力がかなりあるのか直ぐに長距離を歩けるようになっていた。

 ヒョロいカーアンや子供のアリスとは違って健康的な大人だからかな?


「そう言えば、天使様天使様って言っているけれど名前は無いの?」

「あるわよ。Jeanneジャンヌって言うのだけれど、畏れ多くて皆天使様って呼ぶのよ」

「ふーん、ジャンヌね……」


 どう頑張っても救国の聖女しか頭に浮かばない。

 聖女……ウッ!今度は宗教狂いの方が浮かんで来たぞ!ウワー!


「さて、着いたわ」

「石碑が立ってるのー」

「そうね、天使様が降臨された地ってだけで他は何も珍しい物は無いわね」


 渓谷と言っても日本のように崖のような急さは無い。寧ろ何も言われなければ平野だと思うくらいに平坦で、何も無い。

 石碑には点字で『天使様降臨の地』と書かれていた。


 ここに至るまでの道は整備されてたし、旅や巡礼のスポットとしては人気なのかもだけどいかんせん拍子抜けだ。

 丁国デンマークの人魚像みたい。


「ちょっとガッカリなのだわ」

「ここには他に見る物は無いし、飽きたのなら帰りましょう」


 ルネに言われてわたし達は帰途に着いた。

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