第10話 秋人の第一声特集 ~その3 ※ネタバレ注意!

 秋人の第一声特集、この回で終わるかな?

 お約束の注意事項は以下のとおりです。


・あいさつと呼びかけと世間話以外の秋人の第一声を引用で抜き出します。随分喋ったあとのセリフを抜き出している場合もあります。

・完結済み作品に限る。連載中の作品は除外。

・複数作品を投稿されている方は、PVあるいは星の数から代表作と思われる作品のみ。

・第一話の投稿順。完結順ではありません。

・作者名の後に※が付いている方はフレーズ評価OKのタグ無。

・フレーズ評価OKのタグのない作品も引用紹介しています。引用転載に不都合がある場合はコメントください。速攻で削除します。


 それでは行きます!


 ◇◆◇◆◇◆


◇41「俺、行くよ。」「俺、もう東京で働かなきゃ。」(casoさん)

 雪熱ではおそらく唯一の、純文学志向のcasoさんの一作です。葉桜では何作か純文系の作品がありましたが、雪熱では見ないですね。葉桜のテーマ「悩み」と純文学の相性がよかったのでしょうかね。casoさんの作品では雪景色が濃密に描写されている一方で、秋人の心情がもやのように霞んでいます。このもどかしさ、まさに純文学。純文を目指す方はとても勉強になる作品だと思います。


◇42「俺、お国のために戦ってくる」(永坂友樹さん)

 戦中歴史ものの永坂さんの作品、超ストレートに用件を告げています。兵士として出征する秋人が美冬に残す一言。秋人のセリフに対する美冬の反応は……。時代に翻弄された若者たちの言葉。とてもせつなくなります。お話自体はとてもストレートな一作です。


◇43「ああ。美冬にだけはきちんと自分の口から告げたかった」(新巻へもんさん)

 レトロ怪異ファンタジーのへもんさんの作品。このセリフの前段で、秋人が美冬にあいさつしたあと「大杉峠に行く」と告げる様子が地の文で描写されています。この作品の美冬はいずれ秋人がこう言い出すことを予期していて、その時自分がどういう行動をするのかも想定済みだったのでしょう。悲しい決意ではありますが、美冬が背徳的な悦びを感じているところもポイントです。おすすめの一作です。


◇44「美冬っ! やらせてくれ!」(えーきちさん)

 笑笑笑笑笑笑。いやあ、なんともコメントしがたい第一声です。しかも秋人、土下座しています。放送禁止すれすれですね。でもちゃんとこのセリフが出てくる必然性がぬかりなく用意されています。レギュレーションも一歩たりとも外していません。最後美冬が涙を流すまで一気に話が進んで行くノンストップストーリー。青春時代に車に熱を上げた「3ペダルじゃないと車とは言わない」とか言ったことのあるおっさん連中には必読の一作です。個人的には先っぽがツボです。笑笑笑笑。


◇45「さよなら、みふゆ……」(水木レナさん)

 一転して散文詩のような童話のような水木さんの作品。えーきちさんの作品とのギャップが……。わずか六百字で繰り広げられる幻想の世界。省略と空白の美学ですね。若干レギュレーション的に怪しいところはありますが、圧倒的なワードセンスが要求される手法です。詩作方面での創作に関心のある方は必見の一作です。


◇46「そんな顔をするなよ。……もう、秋人って呼んでくれないのか?」(松本せりかさん)

 おそらく今回の企画参加作で最もリアルな現代ドラマを書かれた松本せりかさんの一作。どこかにきっといますよ。こういうカップル。含みのあるやり取りの持つ意味は、衝撃の事実とともに後段で明かされます。隣近所付き合いが濃密な田舎、幼いカップル、一時の間違い。あと十年、いや五年違えば、ただただ祝福されて終わったであろう出来事だったのに。個人的にとても刺さるお話でした。これは是非企画参加のみなさまに読んでいただきたい一作です。


◇47「屋根の雪、すげえことになってんぞ」(@chauchauさん)

 分類すればファンタジーになるのでしょうか。高齢化の押し寄せる田舎を舞台にお話が進みます。よーく読むと、ところどころにこっそり忍ばせてある伏線。この秋人のセリフもその伏線の一つですね。短くまとまっていますので田舎の空気感を味わいながらご一読してみてください。


◇48「よお。雪見だいふく持ってきた」(夏緒さん)

 ガチエロ作家夏緒さんが満を持して放つ官能小説。なんともない秋人の一言ですが、ちゃんと意味があるんですよね。普通の小説以上に官能小説はこういう細かい心情表現を大事にしないといけないんですね。今のところ私はエロ小説を書く気はありませんが、もし書く時は参考にします。いやあ、勉強になりますよね。十八歳以上でエロいの平気だよ、という方、是非ご一読ください。エロいのムリ、という方にはまったくおすすめできません。

 追記:思ったほどエロくなかったです。これじゃよくできた現代ドラマの恋愛小説じゃないですか。夏緒さんには抗議しておきました。


◇49「君のことが好きだった」(丹香子さん)

 おおっと。これはまた刺激的な秋人の一言です。過去形で好きだったと秋人が言い切っています。今回の企画の中で秋人がこういう言い切りをした作品はほとんどありません。退廃的な雰囲気の深夜の歓楽街が舞台。これも珍しいです。田舎の雰囲気の作品が多い企画参加作の中で、かなり独創的です。雰囲気を出すのが非常にお上手な方とお見受けしました。詳しいストーリーはネタバレ回避のため、ここには書けないのが残念です。


◇50「俺、明日っから東京に行くんだわ」(倉糯珱萌さん)

 ストレート系のお話の倉糯珱萌さんの秋人の第一声。ひねりがないセリフですね。倉糯さんの作品では美冬の側に味付けがしてあります。今回の企画作品の中では唯一の手法による味付け、思いつきそうでなかなか思いつかないもんですね。この味付けと美冬が目指しているもの、これが倉糯さんの作品のポイントになっています。力点がそちらにあるので、ここの秋人のセリフは普通でいいのです。ネタバレ回避のために奥歯に物が挟まったような解説が歯がゆい……。とても参考になる味付けをされてますので、是非ご一読ください。ところでこのペンネーム「くらもちようほう」さんとお読みすればよろしいのでしょうか?


◇51「もう十年経った……。俺はもう十八歳。今年から大学生なんだ。美冬もさ、本当だったら……」(ヘイさん)

 美冬が故人系のお話ですが、へいさんは現代ドラマ調に仕上げられました。八百字強と水木レナさんに次ぐ短さ。凝縮された現代の断片を切り取っています。短くまとめられている分明記されてない部分も多いのですが、そこは読者の想像力にゆだねられているのでしょうね。最後に美冬がはかなく登場するところがポイントです。



◇◆◇◆◇◆


 なんとか完結済み作品、全部紹介できました!!


 まだ未完の暗黒星雲さんの作品も、完結したらご紹介します。ちなみに暗黒星雲さんの火星を舞台にしたSF雪熱、冒頭三話でレギュレーションを全部消化した後で、新たな登場人物と新展開が始まってしまい、現在二万四千字。全然終わる気配がありません(笑)。


 秋本颯華さんの作品は完結済みになっていませんが、お話としては終わってるようにも見えますが……。


 次回は他推第二弾やってみたいと思います!



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