第2話 ライノ先輩は本当に小言が多い
私がエリック様に一目ぼれしたのは一ヶ月前。
彼が隊長を務める王宮騎士団の第三部隊に、攻撃専用魔術師として加わり、巨大トカゲの魔物と戦った。油断して足元をすくわれそうになったけど、それでも致命傷を与えたのは評価されたみたいで、また魔物退治に加えもらうことになった。
わーい!
今度は、もっと強力な魔物で巨大オオカミの退治だ。
今回魔術師は三人参加する。
私とスヴィー、そして水の攻撃が得意なライノ先輩だ。
スヴィーは防御と治癒魔術が得意で、後方で私たち前衛を支える予定になっている。
ライノ先輩はちょっと苦手なタイプだ。
黒髪に黒い瞳の中性的な美青年で、見た目だけならモテモテなんだけど、なんていうか性格に問題がある。
表情はいつも一定で、口を開けば小言ばかりだ。
私は何か目をつけられているみたいで、何かと小言を貰うことが多い。
あまりにもネチネチ煩いので、いらっとして炎の魔術を使いそうになったくらいだ。
スヴィーに止められないと、やばかっただろう。
エリック様と一緒に戦えるのは嬉しいけど、ライノ先輩は遠慮したい。
本当に。
「メルヤ。エリックに見惚れてヘマをしないようにしてくださいね。この間のトカゲも油断して殺られそうになったそうじゃないですか」
「はい……」
いよいよ、巨大オオカミ退治に行く日がやってきたのだけど、早朝魔術師団で打ち合わせをすることになっていて、事務所に行くとライノ先輩に開口一番で注意された。
黒い瞳は感情の色を隠すみたいで、表情もかわらないから、呆れているのかわからなかったけど、私は素直に返事をする。
「スヴィー。私たちのことはいいから、騎士の皆さんへの防御魔術をお願いしますね。メルヤ、あなたは自分で防御魔術をかけてくださいね。無駄に魔力が多いのだから、スヴィーに負担かけないようにしてください」
「はい」
ムカッときたけど、スヴィーにそっと腕をつかまれて、私は余計なことを言わずにすんだ。
そうして私たち三人はエリック様たちが待機している騎士団宿舎前に向う。
「エリック様。おはようございます!」
彼を見かけ思わず挨拶をしてしまい、ライノ先輩にごつんと頭を叩かれた。
「いったい!何をするんですか!乙女にむかって」
「何が乙女なのですか?そんながさつな乙女がいますか?先輩の私よりも先に隊長に挨拶するなんて!」
「す、すみません」
確かにその通りです。何かいつもの癖で。
「まあ、怒るな。ライノ。メルヤとは早朝訓練で一緒になるから、思わず挨拶をしてしまったんだろう。俺たち第三部隊にそんなことを気にする奴はいないから」
「けれども、礼儀っていうものがあるでしょう?」
「メルヤ。次から気をつけるよな?」
「はい」
エリック様ににこっと微笑まれ、思わず見惚れてしまったが、ライノ先輩から刺すような視線を感じたので、慌てて返事をした。
こうして、第三部隊と合流した私たちは巨大オオカミ退治に出かけることになった。
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