第38話

今日は物理実験をしません。


次に見えてきたのは、お化け屋敷です。


二階のからくりがちょうど始まって大きな入道の顔が飛び出しました。


恐ろしいです。


私は絶叫系よりもこっちのほうが苦手です。


「楽しそうですね。」


「強がっているのがバレバレですよ。早くいきましょう。」


「楽しそうですね。」


屋敷の中に入ると一気に視界が暗くなります。


つかんでいる手に、一層力が入ります。


「あっ、唐傘お化け。」


「唐傘お化けってさ、人を驚かせるときに、ばっ、て傘を広げるよね。だから普段は広げてないと思うんだけど、片足で傘を広げずに立ってたら足ががくがく震えるよね。だから、唐傘お化けってとっても健気な妖怪だと思うんだ。」


「確かに、かわいく思えてきた。」


さらに奥へと進みます。


「あっ、一つ目小僧だ。」


「一つ目小僧ってさ、目が一つしかないじゃん。だからさ、ものを見ても奥行きがなくなって見えてとっても生きづらいと思うんだよ。三つ目小僧は一つ目をつぶればいいじゃん。だけど一つ目小僧はどうすることもできない。だから、一つ目小僧も健気な妖怪だと思うんだよね。」


「あっ、ぬらりひょんだ」


いかに妖怪たちは健気であるか、という講義は延々続きます。


出口が見えてきました。


視界が開けます。


手を離せるようにはなりませんでした。

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