第10話

物理実験をしながら…


白色の線が空中に現れる。


シュッと表れては、白色の粒になって落下していく。


「これのためにさ、ドライアイスと発泡スチロールを買ったんだよ。ほかに何も使えないのに。」


「霧箱としてちゃんと使えてるからいいんじゃない。」


「うーん、そうだね。じゃあさ、もし、霧箱みたいに見えないものが見えるようになるとしたら、何が見たい?」


「別に、霧箱は軌跡が見えてるだけで実物が見えてるわけじゃないよ。」


「そんなことは知ってるよ。何が見たい?」


「妖怪。」


霧箱用のLEDライトが顔の下からあたっている。


もっと言えば、眼鏡に光が当たっているのでいまいち表情がわからない。


「物理室でそれを言われるとは。」


「君は何が見たいの。」


「宇宙人。」


「物理室でそれを言われるとは…。もう一回言って。」


「宇宙人。」


「もう一回。」


「宇宙人。」


「ドライアイス、ハンカチにくるんであげようか?」


「お願いします。」


「よかったね。霧箱以外にも使えたよ。」

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