物理実験をしながら

タケノコ

第1話

物理実験をしながら…


私と彼の前に一つのマシュマロがある。


二人で一つのマシュマロを見つめている。


取り合っているわけではない。


真空ポンプの先にある分厚いケースの中に、そのマシュマロは存在している。


「もしさ、今から空気を抜いていって、このマシュマロがずっとずっと膨らんでいって部屋中に広がったらどうする。」


「ケースの中の空気抜くね。」


「どうする。」


「この部屋自体を真空にはできない。もし、部屋いっぱいに広がるならここは真空になってるってことだからもう生きてないと思う。」


「いや、それはわかってるから。そうじゃなくて、真空とかもうどうでもいいから。」


「もし、マシュマロが膨らんできたら、切る。カッターナイフで。」


「(ストレス…!) なんか、ごめん。」


ケースの中のマシュマロが元の二倍の大きさに膨らんでいる。


「君ならどうするの」


「うーん、真空空間の中でマシュマロが膨らむとさ、マシュマロの気泡が大きくなるじゃん。だからその穴を通ったりして、アスレチックみたいにして遊びたい。」


「君の体重じゃ無理だと思う。」


「うるさい。」


ケースの中に空気が入る。しわくちゃのマシュマロがカサカサになってそのかわいさを失っていた。


液体窒素に入れて凍らせてたべた。


「やっぱりこれが一番いいと思う。」


「そうだね。」

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