冒険者は辛いが辞められない止まれない

@tagugu0503

第1話「転移、そして僕は自分の人生を生きる」

 いつものように朝起きて、いつものように学校へ行くはずだった。でもいま、俺は異世界にいる。思うように生きている。


「ようこそ冒険者ギルドへ。ご依頼でしょうか、それとも冒険者登録でしょうか?」


「冒険者登録をお願いします」


「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」


 今日から俺は、冒険者だ。



 時は遡り現代日本。俺は自転車をえっちらおっちら漕いで学校に向かっていた。友達に会うくらいしか楽しくない場所へ、将来のために役に立つか分からない勉強をする所へ。でも仕方ないと言い聞かせる。行かなきゃ親になんて言われるか分からないし、周囲からどんな目で見られるかを想像するだけで気分が下がるから。


 夢が持てればよかったが、それが叶えられるとは到底思えない。行動したとて夢を掴める人間の少なさを俺は情報として知っている。とにかく行動だと言われても、それで成功しなければピエロじゃないか。ただ金と時間を消費して、傷つくならば俺はただ無難に生きれればそれでいいーーそれでいいんだ。


「……え?」


 いつの間にか周囲は濃い霧に包まれていた。俺はこのまま漕いでいると危ないと思い、自転車から降りて辺りを見渡す。


(どうゆうことだ?)


 こんな天気は予報されていなかったし、第一ここは街中だ。こんな濃い霧が発生するとは思えない。


 俺は不思議に思いながらも、ゆっくりと歩みを進める。このまま車道にいては危険だと思ったからだ。


(……ん?)


 歩いている感触が急に変わったので見てみると、コンクリートではなくなっていた。


(なんとなく神殿みたいだなこれーーってどうなってんだ?)


 妙な事態に混乱していると声が聞こえる。厳かな気分にさせてくれる、そんな不思議な声だ。


「巻き込まれし者よ、そなたはこれより世界を越えるだろう」


(誰だ……?)


「巻き込まれし者よ、せめてもの償いに祝福を与えよう」


(巻き込まれし者……?)


「巻き込まれし者に、幸(さち)あれ」


(どういうことだ——うっ!!)


 突然襲いかかる網膜を焼き切るような光、上下感覚を失うような揺れ、聞いただけで不安定さを植えつけられる音。俺は何も理解できないなか混乱の渦に叩き込まれ、意識を失った。

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