俺のラブコメは終わっている。
神無木メイ
第0話 それを彼女は気づかない
「異性からモテる」
このラベルはその人を評価する時に最も重要視される項目のひとつと言えるだろう。
なぜなら人は自分一人で知らない人の価値を決められないからだ。
知らない人の価値を決める時、人は外見と周りからの評価を参考にする。
つまりイケメンでモテているという2つの条件をクリアすれば他人からの評価は格段に高くなる。
モテるということはつまり、自分自身の価値を高めることに直結するのだ。
そしてこの俺、
「モテるは正義」
小さい頃に見たテレビで誰かが言っていたこのセリフ。妙に頭に残るこのセリフが俺を形作ってきた。
そして今の俺はこの言葉をまさに体現する男となっている。
「涼くんのことがずっと好きでした!私と付き合ってください!」
放課後の学校、俺はある女の子に告白されている。
「ごめん、君とは付き合えない。俺好きな人がいるんだよ。」
ここに来る前から決めていた言葉を彼女に放つ。
「そ、そうですよね……私なんか……」
俯いてあからさまにしょぼくれている彼女が自虐モードに入りかけたので俺は精一杯の爽やか笑顔を作って彼女を諭す。
「それにさ、俺なんかよりいい人がきっと見つけられると思うよ。」
俯いていた彼女の頭に優しく触れて俺は立ち去る。
颯爽と立ち去る俺の隣にさっきと違う女の子が小走りで来る。
「せーんぱいっ!」
花のような笑顔を浮かべて俺の顔を覗き込み、舌をチロっと出して顔をあからめる。
あざといが、とてもかわいい。
「な、なんだかほか」
彼女が来てテンションが上がったことを悟られないように平静を装う。
「なんだって酷くないですか!?先輩を待つために教室で待ってたんですよ〜」
このあざとくも可愛い女の子は春野かほ。その可愛さとあざとさでハートを撃ち抜かれた純情ボーイ達は少なくない。ただ少し欠点があるので敬遠されることもあるが……。
まあ、とりあえず!そんなモテモテ女子がなぜ今、俺の隣にいるのか。答えは単純、かほが俺に好意を抱いているから。
「いや〜、まだ先輩に告白する人っているんですね〜。」
彼女が不思議そうに首を傾げる。
「先輩の隣を許されてるのはこの私だけなのに!」
少しだけある胸を強調するように胸を張る。
「いや、許した覚えないんだけど」
「あれっ!?そーだっけ……」
隣にいることに文句を言った覚えはないが、隣を許した覚えもない。
けどやっぱ可愛いから許してるのも事実。
「あっ、確かに先輩から言われてないかも!」
先程言った欠点。そう、それはアホなのである。アホの子なのだ。今なんて俺の隣で、あれれ〜おっかしいぞぉ、などと独り言を呟いている。ちなみに彼女はメガネも蝶ネクタイもつけていない。
「先輩今日も振ったんでしょー?」
興味なさげに聞いてくる。
「まあな」
「やっぱそうだよね、先輩が好きなのは美咲先輩なんだもんね。」
安土美咲。俺の一個上で顔も良くてスタイルもよく、さらに文武両道というまさに女子の鑑。
「でも私は先輩のこと諦めないですからね!」
俺は美咲先輩のことが好きだから誰の告白も断っている。そう彼女は思っている。
しかし、いや、やはり彼女はアホなのだ。
確かに俺は美咲先輩のことが好きだった。でもそれはかほに出会うまでのこと。
俺が今好きなの人は、かほなのだ。
それを彼女は気づかない。
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