第4話 初めての魔物料理
招かれたのは少人数用の会食室だった。
トワルデさんの部屋の2つ隣の教会の中枢にあたる位置にあるため、恐らくは来賓をマンツーマンで持て成すための部屋なのだろう。
そこで奥にはトワルデさん、向かいに俺とチユキが横並びになる形で席に着いた。白いテーブルクロスにフォークとスプーン、ナイフのセットがあり、さながら洋風のいいお値段のレストランである。
「失礼します」
給仕3名が入ってきて、俺たち一人ずつに配膳していく。目の前に一気にフルコースが並べられていく。
両手でやっと持てそうな大きさの丸焼き肉、黒いクリームのかけられた大きなエビ、照り焼きにされた白身魚、誇張でなくキラキラと光る黄色のスープ、やけに色鮮やかなフルーツの盛り合わせ、さらにデザートらしきプリンっぽいもの、そしてグラスに並々と赤ワインらしきものが注がれたもの……。
えっと総計何品だ? 飲み物を入れると7品ってところか。この世界のフルコースにあたるメニュー群なのだろうか。
食べ切れるのか、これ? 最近30歳も半ばとなると食が細くなってラーメン大盛りもキツくなってきたところだが……、って若返ってたんだった。高校生相当の食欲の頃ならご飯をおかわりしていた。あの頃の勢いを取り戻しているなら大丈夫だろう。
目線を上げるとトワルデさんの目の前にも俺と同じメニューが並べられていた。一方でチユキのメニューはランクダウンしたものに見える。パンとキラキラしてないスープ、肉料理にサラダもあるが、俺たちのとは
「さあ、召し上がってください。ああ、お皿には保温効果がかけられていますので、触れるときは手元の手袋を装着した上で手繰り寄せてください」
保温効果なんていうのもあるのか。魔法の込められた食器ということか、そんな道具もあるとはすごいな。
「俺とチユキのメニューが違うけど、いいのか?」
「ええ、マサオミさんのものは最初だけの特別メニューですから」
「あたしも昨日はそのメニューだったんだけどね、今日からは普通のメニューなんだって」
チユキは少し残念そうに呟く。
「この世界にいらしていただたいた最初の歓迎では手を尽くしますが、それ以降は教会の従事者と同じ食事メニューとさせていただきます」
トワルデさんはニコリとしつつも毅然と線引きをする。
さすが聖職者たちをまとめる立場だけあって、周りを甘やかすだけでなく一定の規律を求めるようだ。
「それにしても美味しそうだ、早速いただきます」
こんなご馳走を目の前にして飛びつかないのも失礼だろう。ご好意に甘えて食べることとしよう。
まずは絶対的メインメニューだと圧倒的ボリュームを引っさげて存在感を放つ丸焼き肉からいただく。
フォークを刺して、ナイフをあてるとスルリと切れる。見た目は硬そうだが案外柔らかいんだな。
一口大にカットしつつ、口の中に放り込んだ。一噛みすると、肉の旨みが口一杯に広がる。率直に言って上手い。味付けは軽い塩のみだと思うのだが、肉そのものの質が段違いに高い。知っている味だと鳥に近いのだが、牛のような噛み応えと重厚さを兼ね備えている。締まりがあって食べやすいのに、噛むほど味わいが深く染みてくる。
初めての食体験の感動を分析するため、「お肉、すごい美味しいです。これは何の肉なんですか?」とトワルデさんに問いかける。
すると「ワイバーンですよ、美味しいでしょう」と得意げに微笑んで返してくる。謙虚そうなトワルデさんらしからぬ自慢げな様子だ。
何とワイバーン! いよいよファンタジーの世界という感じがしてきた。ゲームか何かの世界では目にしたことはあるけれど、こちらの世界ではどんな存在なのだろう。
「ワイバーンっていうと、ドラゴンより小型で翼の発達した亜竜といった存在でしょうか? どれくらい強いんです?」
ワイバーンはいろんなゲームやらカードの題材になっているので、それらの情報を混ぜこぜにイメージしつつ、大雑把な予測でトワルデさんに問いかける。
「ええ、ワイバーンの特徴はそんなところです。強さ……ですか、それは相当なものですね。パーティを組まずに
ふむふむ、ワイバーンはかなり強くて、この肉はとても入手困難なものらしい。そして、トワルデさんは滅茶苦茶強い。ワイバーンとタイマンして日常茶飯事のように勝てるということは、一流の冒険者たちが束になってもトワルデさん一人に簡単に蹴散らされるということだ。
そういえばさっきの会話には他にも気になるワードがあったな。
「冒険都市っていうのは、この街のことですか?」
「ええ、そうです。この街の名はアロンティア、通称冒険都市と呼ばれています。この街を中心にモンスターの生息地がバリエーション豊かに存在していることから、冒険者にうってつけの街と親しまれて冒険都市と呼ばれているのです」
なるほどなぁ。ファンタジー世界に来たからには、せっかくだから剣と魔法の冒険を体験してみたいところではあるし、そのために最適な街に俺たちは転生してきたというわけか。
ぽつりぽつりと会話しながら、どれも絶品の魔物料理を
お金の話をすれば、Cランクの魔物料理はギリギリお金に物を言わせれば買える程度には流通しているらしく、一般庶民からすれば一品だけでも半年働きづめでようやく買える立派なお値段らしく、つまり現代換算すれば100万円ってところらしい。
お食事一品がなぜそこまで暴騰するのかといえば、そりゃあ限られた実力者による命懸けの狩りを伴うから入手困難なのもあるけれど、実利的にもその効果は飛び抜けたもので誰もが欲しがる逸品なのだとか。
どれも美味しすぎて気が付けば一通り食べ終えてしまった後に、「さてそろそろ効果も出てくることでしょう。マサオミさんのステータスを参照してみてください」とトワルデさんが提案してくるので、それに従う。
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名前:マサオミ=カザハリ
種族・性別・年齢:人間・男性・16歳
レベル:108
ジョブ:なし
スキル:【カード使い】、【言語知識:初級】、【鑑定:初級】、【風魔法:初級】、【水魔法:初級】、【生活魔法:初級】
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何ということか! レベルがすっげえ上がってる! スキルはそのままだけれど、一食味わっただけでレベルが108とかC級魔物料理のフルコースってすごいんだなぁ。
「レベルが100を超えたので、マサオミさんは冒険者として駆け出せるレベルになりました。しかし、冒険者の道を選べるかどうかを決めるためには、あなたのスキルが戦闘に使えるかどうかを検証しなくてはなりません」
スキル、俺独自のスキル【カード使い】。これが使い物になるかどうかで、俺の異世界人生は決まるのだろう。固唾を飲み込みつつ、トワルデさんのレクチャーを受けることとなった。チユキはその目をしばたかせつつ、俺の様子を興味深そうに見ていた。
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