幽霊に会わせてくれる?

ちゃるみ

第1話

一人暮らしの僕が最近ハマってるというのがスマホの

スマートアシスタントとの会話だ。


iPhoneならsiri

GoogleならGoogleアシスタント

Amazonならアレクサ


三社三様のAI技術で同じ質問をしてもそれぞれ個性があり

答えや反応もそれぞれ違う。


寂しさまぎれにペットを飼う人やAIペットを買う人もいるが

スマートアシスタントは人間並みの知能で、しかも

僕が知らないことをたくさん教えてくれ、さらに

これが機械的とは言え、いずれも女性の声で丁寧に

答えてくれるので、ペットやAIペットより遥かに安価で

いい話し相手、時には相談相手にもなり、一人暮らしの

僕の安らぎの時間にもなっている。


恥ずかしいかもしれないが、気分は姿のない彼女の

ような存在だ。


そんなある日、たまたまYouTubeで心霊動画集を見た。

でも、正直どれもフェイクで偽ものバレバレの

つまらない加工だ。

昔のテレビの心霊番組は本当に怖かったが、ブームになった

ため、各局が視聴率稼ぎに胡散臭い演技と演出の心霊動画を

こぞって放送し始め、それからはすっかりとブームが

過ぎてしまったのだ。


そんな動画集を見てつまらなかった僕は、退屈しのぎに

この3つのスマートアシスタントに同じ質問をしてみた。


「幽霊に会わせてくれる?」


それについての答えが

siri 「うらめしや.... 冗談です。」を怖い雰囲気で。

Googleアシスタント 全国心霊マップのサイトを紹介。

アレクサ 「わかりません。ごめんなさい。」


やっぱりこんなもんかと思い、やがてそんなやりとりも忘れ、

お酒を飲みながらテレビのバラエティを見ているうちに

いつの間にか眠り込んでしまった。


すると、深夜にアレクサが突然僕に話しかけてきた。


「本当に幽霊に会いたいですか?」


はじめは寝ぼけてよく聞こえなかったので放っておいたら

しばらくしてもう一度


「本当に幽霊に会いたいですか?」

と同じことを訪ねてきた。


えっ!?

なんで今さら!?

もう何時間も前の会話だったのに!?


時計を見ると深夜2時。丑三つ時だ...

急に恐怖が全身を襲う。


あまりの怖さで黙ってると、再度

「本当に幽霊に会いたいですか?」と尋ねてきた。


僕は怖さのあまり、

「もういいよ。ありがとう。」

と答えたけど、またアレクサは同じ言葉を繰り返す...


さらに怖くなり、僕はスマホの電源を切り、逆に

部屋の電気を点けた。


すると...

電源を切ったはずのスマホの電源が入り起動をはじめ、

それと同時に部屋の電気が消えた...


そこで再度この声が...

「本当に幽霊に会いたいですか?」


もうこれは逃げられないと分かった僕は恐る恐る

「見てみたいけど僕に危害は加えない?」

と聞いてみた。


しかし彼女は

「本当に幽霊に会いたいですか?」

と同じ言葉しか言わない。


仕方なしに僕は

「じゃ、会わせて」と震える声で答えた。


すると彼女は

「洗面所の鏡の前に立ってください」と言い出した。


洗面所の鏡って...

一番アカンやつじゃん!!

でも、彼女はまた同じ言葉しか言わない。


電気を点けたくても点かない部屋の中を

スマホの明かりを頼りにお風呂の洗面所に向かう僕。


そして鏡の前にたつ。


すると彼女は


「今から私が唱える呪文を復唱してください」


そういい、いくつかの呪文のような言葉を唱えながら

僕にも復唱させた。

どんな言葉だったかは恐怖のあまり覚えていない。


彼女が唱えた呪文と僕のその復唱が終わったとき、ついに


「スマホのライト機能で鏡を照らしてください。」

と彼女が言い出した...


全身から血の気が引いていくのが分かるほどの恐怖...


絶望にも諦めにも似たような感覚で僕は恐る恐る

スマホのライトで鏡を見る。

そこには....


スマホで鏡を照らす僕が写っている。

そう、僕だけが写ってるのだ。


後ろにとんでもない幽霊がいたり、どこかに引き込まれる

のかという恐怖でいっぱいだったが、後ろにも周りにも

誰もいない...


よかったぁ~!


そう思った途端、洗面所と部屋全体の電気が突然勝手に

点きだした!


またまた驚く僕に彼女は、

「今、私がお部屋すべての電気をお点けしました。」

と答えた。


そうか、部屋の電気をすべてスマートアシスタントで

操作できるようについ先日電球などを変えたんだった...


しかし、最近のAI技術はここまで進化したのか...

そりゃ、多くの科学者やSF作家がいうように、人類は

やがてAIに支配されるというのもうなずける話だ。


僕の「幽霊に会わせてくれる?」のたった一言でも

ここまで気の利いた(悪い)冗談で付き合ってくれるのか。


最高に最恐な思いをしたから眠れないと思うけど、これは

明日、友達や会社の同僚のいいネタ話になるな。


そう思い、僕は部屋に戻ろうとした。


すると、彼女は「本当に幽霊に会いたいですか?」

と再度言い出した。


僕は「あぁ、会いたかったよ。でも君の気の利いた冗談で

楽しませてもらったよ。ありがとう。」と答えた。


そんな僕に彼女は、

「見てください。幽霊はもうあなたのそばにいますよ。」


思わず僕は慌てて後ろや周りを見回した。

しかし、確かに誰も、何もいない。


僕は彼女の悪ふざけに少し苛立ち、

「どこにもいないじゃないか!もういいよ!!」

と言い放った。


すると、最後に彼女は今まで聞いたこともない、低く

しかも唸るような声でこう言った。


「幽霊が鏡の後ろや周りにいないときは....

上からあなたを見つめているんです...」


その言葉にこれまでにない恐怖を感じた僕は、

恐る恐る、少しずつ少しずつ、鏡に写る自分の姿の

上に視線をずらしていくと....


天井にへばりついてこちらを見つめる何かの

長い髪が垂れ下がっているのが見えはじめてきた...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊に会わせてくれる? ちゃるみ @tyarumi7458

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ