あなたの性体験はいつから?私は4才から(2)

 私には2つ年上の兄がいる。

 その兄が小学校に上がる前には彼女(以下Yちゃん)と遊ばなくなったと言っていたので、これは恐らく私が4才の時の話。

 その頃私の家はまだ裕福で、借家ではあったが市内の中心部に庭付き駐車場付きの2階建ての家に住んでいた。

 1階にはダイニング、キッチン、リビング、書斎、の他に3部屋。2階には大きめの部屋が2つあった。そして私と兄、2人の子ども部屋はその2階の一室にあった。


 私と、兄と、Yちゃんと、そして兄の友達のK君と、4人で毎日のように一緒にいた。

 無邪気に。


 私たち4人はセミを取りに行ったり、公園で追いかけっこしたり、泥を固めてツルツルにしたりして遊んでいた。

 そう、主に外で快活に遊んでいた。

 遊びから帰って来れば毎日のように怒られていた気がする。着ていた服はいつも土に汚れて体もぐちゃぐちゃだったから。


 その日は恐らく梅雨の時期で、いつものように外に遊びに行くことができなかったのだと思う。


「今日はうちでかくれんぼしようぜ!」


 と兄が言った。2段ベッドの2階から私たちに向けて。

 そういえばあの時はなぜかYちゃんとK君が家にきた。いつもはYちゃんとK君の家に誘いに行っていたので、雨が降ると聞いて兄が呼んでいたのだと思う。


 じゃんけんに負けたのは兄だった。


「100数えるから!家から出るのはナシな」


 そして兄が壁を向いて目を閉じて、K君が一目散に一階への階段を降りる音がして。私はそれを追って行こうとして。


 無言でYちゃんに腕を捕まれた。


 彼女は口の前で指を立てた。 

 静かにするように、と言っているのが分かったので、私は黙った。


「44、46、47、48、50」

 

 いくつか数字を飛ばす、兄の慌てた声。

 K君が勢いよく下に行ったので、私たちも下に行ってしまったと考えたんだと思う。

 そんな兄にYちゃんは言った。


「ちょっと、早いよU(兄の名)」

「おっ!?まだいたの?」

「石木がぼーっとしてたから。……ちゃんと数えて、ズルしたから1からね」


 えっ?と思ったけど、Yちゃんから見て私はぼーっとしてたのかもしれないと思って何も言わず頭を掻いた。

 4才の私にとって、兄を含めYちゃんK君は何でもできるすごい人たちだったから、疑問に思わなかった。


「わかったよ……」

「あと音でどこ隠れてるかバレバレじゃん。目をかくすんじゃなくて耳をかくしなさいよ」

「たしかに!」

「あとゆっくり数えてね。いまからどこかくれるか考えるから」

「はいはい」


 そして兄は再び壁を向き、耳を両手で塞いで1から数え始めた。


 するとYちゃんも再び口の前で指を立てた。

 そして二人して忍び足で、子ども部屋のタンスの前まで歩いた。


 Yちゃんがタンスの右側を開ける。

 見えたのは畳まれた布団、毛布。

 そして奥に私たち2人が入っても余裕そうな広さの空間があった。


 タンスの左側を開ければその空間に直通する、しかしおもちゃ箱が左の戸の前に置かれていた。

 だから私たちはタンスの右側から、布団と戸の間のわずかなスペースを通ってそこにたどり着いた。


「しめて」


 とYちゃんが言ったのを覚えている。

 私はYちゃんが開けた戸を音を立てないように慎重に閉めた。


 2人で居ても、体がくっつかないくらいの距離に座った。

 タンスの戸の隙間から光が差して、お互いの表情がどうにか目に見えた。


 じゅーう、じゅういち、じゅうに……。


「ぷっ、今度は遅すぎ」


 囁く声。彼女の髪飾りが揺れた。


 まだ私の腕は、Yちゃんの手の中にあった。


「――ねぇ、ここって何か知ってる?」


 薄暗がりの中で、彼女は確かに笑って、私の腕は彼女のスカートの中に引きずり込まれた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る