第81話:ユラとムツキ
(※ユラ視点)
私は浴場の脱衣所で服を脱いでいる。
先ほど、ある人物が一人で浴場に入る姿をみて、気になって後を追ってきた。
服を全て脱ぎ、一つに結ってある髪を下ろす。
・・・
「さてと・・・」
・・・
扉を開けて中に入ると、その人物は一人でお湯につかっている。
「一緒にいい?」
「ぬるいわよ・・・」
私はムツキに笑顔を返す。
洗い場で体を洗い、濡れた髪をアップに結び直す。
「ふう・・・・、これぐらいの湯加減も案外ちょうどいいわね。」
・・・
しばらくの沈黙が続く。
私から話を切り出す。
「1つ聞きたい事があるの・・・」
「なんでもどうぞ。」
ムツキは赤い顔をしながら答える。
・・・
「ムツキは八大将軍と同程度の力が使えると考えていいの?」
ムツキの肩がピクッと動いた気がした。
・・・
ずっと気になっていた・・・。
私たちが対峙してきた八大将軍のガジュラ、スカイハイはとてつもなく強かった。
私たちの命をかけて、全員で立ち向かいギリギリのところで生き残れている。
ムツキがスカイハイと対峙した時、スカイハイとムツキの強さには差があったのは事実だ。
ムツキは、ベリエルさんを探すために、自分の分身に探索させているので力がないと言った。
それは本当なのか・・・
八大将軍クラスの力があるなら、正直期待したく思い切って聞いてみたのだ。
・・・
ムツキがお湯を両手ですくう。
・・・
「私は・・・」
ムツキがゆっくりと話し始める。
「私はあの結界大戦の時、結界を展開するベリエル様を身を挺してお守りした・・・」
「その時に、自分の分身となる巨大なヘビを使って、数多のモンスターからベリエル様をお守りした。」
「だが、私の分身はモンスターの襲撃で焼かれてしまい・・・、同時に多くの力も消滅したよ。」
「生き残った私は、八大将軍の命を降ろされて、ベリエル様の捜索役になった・・・」
「王が裏切り者の私を殺さないのは、おそらく私しかベリエル様の魔力を探知する事ができないから。」
「王はベリエル様に多大な憎しみを抱いているからな・・・」
「だから私は、王に忠誠を誓うフリをして、ベリエル様を探した。」
手にすくったお湯を再び流す。
・・・
・・・
「やっぱり・・・」
「変化する前の八大将軍なら相手にもできるだろう・・・、だが本来の力を解放した八大将軍は無理だわ。」
・・・
・・・
「あのダークエルフはどう?一人でなんとかなる?」
「やつぐらいならなんとかするわ。戦力は他に回した方がいいでしょう。」
・・・
「わかった・・・、ダークエルフの討伐は任せたわよ。」
ムツキは大きく頷いた。
・・・
「ところで闇の王ってどんなやつなの?」
・・・
「影・・・」
「フードをかぶった影、私はその姿を見たことがない。おそらく八大将軍の誰もが見たことはないでしょう。」
「ただ、私たちでさえ、王に近付く時は体が震えたわよ。」
・・・
「相当ってことね・・・」
・・・
「ベリエルさんってどんな方だったの?」
私は横目でムツキを見つめる。
「ベリエル様は、それはそれはお強くて、イケメンで部下思いで・・・」
「本当に素敵な方・・・、そう私の全てを捧げていいくらい・・・」
ムツキは目をうっとりとさせて、人差し指を折り曲げて口にくわえる。
ムツキのあまりにも乙女のような素ぶりを見て微笑む。
・・・
「シトの事はどう考えている。」
「あの外見、力を間近でみて・・・」
ムツキが私に質問してきた。
・・・
「シトは・・・」
・・・
「シトは私の旦那や仲間を殺したガジュラから私たちを守ってくれた。」
「あんなひ弱そうな子だけど、それこそ自分を
・・・
「だから・・・」
・・・
「どんなになろうと、シトはシト!」
「これからもずっと私の大切な仲間よ!」
・・・
「仲間か・・・」
・・・
ムツキは顔を上げて、浴槽の天井を見つめる。
「そしていつか・・・」
「この戦いが終わったら、またみんなでワイワイ生活できたらいいと思っているわ。」
・・・
「あなたはどう思うの?」
私はムツキに聞き返す。
「初めはベリエル様が復活するなら、正直どうでもいいと思っていたわ。」
「でもね・・・、付き合えば付き合うほど・・・」
「いいやつなのよね!!!」
私たちの声が揃う。
「今は可愛くてしょうがないのよね、あの子。」
ムツキは微笑む。
「いつかシトとベリエルさんとの関係も解明されて、ベリエルさんにも何かしらのカタチで会えるといいわね。」
「ほら、八大将軍も昔やられて復活してるんでしょう。希望はあるかも知れないわ。」
私も天井を見つめる。
・・・
・・・
「そうだな・・・」
ムツキの顔が紅潮している。
・・・
「ユラ・・・、もう限界だ!」
「そうね!顔が真っ赤よ!」
私たちは笑い合って湯船からあがり、脱衣所の扉に向かって歩き始める。
「そうだ!そのうち、シズクからおっぱい揉まれるから気を付けなさいよ。」
ムツキの大きくてカタチの良い胸に視線を落とす。
「なによ、それ?」
そんな話をしながら、脱衣所の扉を開けた時、
・・・
なんと!!
目の前には、裸のシトが立っていた!!!
「あっ、あの・・・、二人が入っているとは知らなくて・・・、あっ、その・・・」
あまりの突然の出来事で、彼の下半身に目がいってしまう。
シトの視線が私たちの何もつけていない裸を凝視している。
・・・
・・・
「きゃああああーーーー!!」
胸と大事なところを隠して座り込む!
「シトったら、そんなにおっぱいが好きなの?」
わざとらしく自分の大きな胸を手で持ち上げて、ユサユサと揺らすムツキ。
私はシトに視線を戻す。
その瞬間、久しぶりにシトの鼻から大量の血が吹き出した。
その場にバタッとうつ伏せに倒れるシト。
・・・
・・・
腕をあげてヤレヤレという身振りをするムツキ。
私は微笑み、気絶しているシトのほっぺを突っついた。
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