第79話:偵察!神秘の森

「シト、いくぞ。」


僕とシズクさんの偵察隊は、神秘の森の入り口のあの石版の前にいる。


朝早くみんなの元を離れた僕たちは、途中でマーリさんが教えてくれた身を隠せるスポットで体を休め、夜を待った。


そして、夜も更けたタイミングで動き始め、ここまでたどり着いた。


幸運にも、ダークエルフには遭遇していない。


マントのフードを深く被り、石版の前に立つ。


小さな白ヘビが、僕の肩から顔を出す。


もし何かあった時の連絡用にと、ムツキさんが僕に預けてくれた。


僕とシズクさんは、この小さな白ヘビをチビさんと呼んでいる。


お互い顔を合わせて大きくうなづき石版に近く。


石版に近くに連れて、シズクさんの手の上においた光の勾玉が輝きを増す。


ブウウウン!!!


視界が急に揺らいだかと思うと、目の前には全く違う風景が現れる。


以前来た時に見た、木とツタでできた樹木の門だ。


僕とシズクさんは素早く、木の後ろに身を潜める。


シズクさんが気配を探り、ハンドサインを僕に送る。


見たところ、真夜中のために寝静まっているいるのだろう。


人の気配は感じられない。


ぼんやりと光る灯火があたりを幻想的に照らしている。


目指すはここからでも見える、村の奥にある大きな樹木だ。


そこにギルムンドがいる。


まずはそこから偵察することになっている。


僕とシズクさんは暗闇にまぎれて先を急いだ。


ぼんやりと灯火が揺らぐ暗闇を駆け抜ける。


しばらくして、僕とシズクさんは、村の奥の一際大きな樹木にたどり着いた。


昼間はとてつもなく大きく感じた樹木も、今は夜の暗闇に覆い隠され、その全貌は見えない。


樹木の下には、一際大きくて豪華な建物があり、そこには前日ギルムンドが座っていた玉座がある。


僕らは暗闇に紛れて、玉座の横を素早くすり抜けて、その奥の建物に近寄る。


建物の中はうっすらと灯火が光っている。


僕とシズクさんは、木製の壁の隙間から、中身をそっと覗き込む。


・・・


・・・


そこにマーリさんの読み通りの二人の影が!


・・・


一人は、あのハイエルフの男ギルムンド。


もう一人は僕らを襲ってきた不気味なダークエルフだ!!


二人の会話に耳を傾ける。


「あれからまだ見つかっていないのか!」


「はっ、ここ数日、私たちの魔力探知に引っかかるものはなく・・・」


「早く見つけて、連れてこい。あの嬢王は生かして捕らえよ。」


「はっ!今しばらくお待ちを。」


「ここのエルフどもの様子はいかがです?」


「ふん。イキュプスの力で、ここのクズ共は俺の言うなりだ。」


「そのうち、ヒューマン共を皆殺しにするコマにでも使ってやる。」


やっぱり!!!


エルフたちは何かしらの影響で操られている!


シズクさんと視線が合う。


その時、


ドスッ!!!!


壁に貼り付けていた僕の顔のすぐ横に、短剣が突き刺さった。


気づかれたっ!!!!


ゆっくりとシズクさんに目を向ける。


シズクさんは、指に手を当てて、静止の合図をする。


「どうした?」


「いえ・・・キレイな蝶が飛んでおりまして・・・」


「美しいものが死ぬところが好きでしてね・・・」


「・・・、嬢王の捕獲を急げ!」


「はっ!」


あっという間に闇に消えるダークエルフ。


僕とシズクさんは、建物の影に身を潜めて時が立つのを待った。


・・・


その時、


っ!!!!!


突然、大きな樹木の上で、何かが光り輝いた!


僕と、シズクさんは声を殺して上を向く。


僕はその光景に目を疑う。


大樹木の上に、紫の巨大な目玉が浮かび上がっている。


その巨大な目玉は何かを探すように、ギョロギョロと激しく辺りを見渡す。


シズクさんと僕は固まったまま動けず、その場で時間が経つのを待つ。


僕の頰を冷たい汗が伝っていく・・・


・・・


やがて、その巨大な目はゆっくりと閉じ、その姿を闇に隠した。


その光景をみて、僕とシズクさんは暗闇に紛れてこっそりとその場を後にした。

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