第223話 どちらでも良かった
カツヤに気付いたアキラが一気に警戒を高める。だが
(いつからそこにいた!? どうして気付けなかった!? 俺の気はそこまで緩んでいたのか!? なぜ攻撃してこない!? こいつ1人か!? 他の連中は!?)
カツヤも自分から戦闘開始に動き出すには切っ掛けが足りていなかった。カツヤをアキラの
アキラとカツヤの間に、困惑と戸惑いから生まれた沈黙が流れる。その後で、カツヤが口を開く。
「……取引の話は聞いた」
「それで、俺がちゃんとあいつを殺すか確認しにでも来たのか? ちゃんと殺したぞ。そこら辺に散らばってる肉片があいつだ」
「……そうか。あいつからユミナを助けてくれたことには、礼を言っておく」
アキラが思わず意外そうな顔を浮かべる。そして、この流れなら、と期待した。
「それで、取引は成立か?」
「みんなは撤退作業を進めている。すぐにビルから出て行くよ」
アキラは自分の提案が通ったと思って驚きながらも喜んだ。だがすぐに表情を
「みんなは、か。お前は?」
カツヤは答えなかった。だがその沈黙で十分に伝わった。アキラが大きな
「……まあ、俺もそっちを随分殺したからな。仕方が無い。当然と言えば当然か」
アキラの気配から殺意が
「単純にどうしても俺を殺したいのか。それとも仲間が逃げるまでの時間稼ぎか。後者なら撤退中の連中を背後から襲ったりしないから帰ってくれ、と言いたいんだけど、まあ、信じないよな。お互いに」
「お互いに? どういう意味だ?」
「何でもない。こっちの話だ」
アキラもカツヤが今更やっぱり帰ると言い出しても信じられない。深手を負っている姿を見られてしまった。この場で退いたとしても、この負傷なら後は仲間達と一緒にじっくり潰せば良いと考えて、今度は仲間を引き連れて殺しにくる。カツヤ本人がこの場では本当に大人しく帰るつもりだったとしても、多くの仲間を殺された他の者達に説得されて結局は殺しにくる。そう疑ってしまう。
相手はネリアのような狂人ではない。悩み、疑い、迷い、揺れ動く普通の人間だ。そう思っているからこそ、アキラはカツヤ達を信じられなかった。そして相手も同じだと無意識に思っていた。
言葉は尽きた。次は相手の命。どちらもそう認識し、ほぼ同時に動き出す。
アキラがだらりと下げていた刀を振り上げる。輝く刀身から光刃が放たれ、その斬撃が床を切り裂きながらカツヤに襲いかかる。
本来絶対に届かない距離で刀を振ろうとする相手の姿を見ても、カツヤは相手の殺意からそれが自身に届くと察した。素早く横に飛び、高速で迫る光刃を回避する。同時にアキラに銃を向ける。
アキラは斬撃を飛ばした直後にカツヤに向けて駆けだしていた。カツヤの射線は崩れた体勢から撃った
東部で剣術を学ぶと敵を垂直に斬る癖が付くことが多い。義体者などが相手では首や胴を両断しても致命傷にならない場合があるからだ。
縦に両断すると生身でも義体者でも大抵は致命傷になる。仮に相手が遠隔操作人形だったとしても通信機器を破壊し
アキラが斬撃の種類に偏りが見られる荒削りの剣技で刀身を振り上げ、振り下ろす。カツヤがそれを横へ横へと回避していく。輝く刀身がカツヤを追ってジグザグに波打った。
カツヤが回避中の崩れた体勢でアキラを銃撃する。アキラが射線から身を
斬撃で、銃撃で、相手の攻撃の機会と範囲を奪い合う攻防が続く。装備、技量、疲労、精神状態、それらに大きな差がある2人は、その総和が均衡したことで互角の戦いを見せていた。
アキラが
だがカツヤは
アキラは前蹴りの体勢から蹴り足を下ろす暇すら惜しみ、強化服の接地機能を使用して軸足だけで強引に前傾姿勢を取り、そのままカツヤを追って低い体勢で飛ぶように駆けた。無数の弾丸と擦れ違い、髪や耳や
再び至近距離での攻防が繰り広げられる。その攻防の中、アキラが自身の失策に表情を険しく
(クソッ! あの蹴り程度なら食らっても問題ないのか! 向こうの強化服が高性能なだけか、それとも俺の強化服の出力が落ちてるのか、どっちにしても格闘戦だと勝ち目は無い! 今の内に殺しきらないと
刀は切れ味の維持にもエネルギーを消費している。斬撃を飛ばせば更に消費する上に刀身への負担も大きく、加減を誤れば刀身が崩壊する。残弾も残り少ない。どちらかが残っている内に終わらせなければ、アキラは詰みだ。
一方カツヤは少しずつ調子を取り戻していた。余計なことを考える暇など無い強敵との戦闘が、揺れ動いていた意識を研ぎ澄ませ、動きの精度を向上させていく。互角だった攻防がほんの僅かずつカツヤの優勢に傾いていく。その僅かな余裕がカツヤに気付きを生む。
(こいつ、さっき距離を詰めてきた時は斬撃を飛ばさなかった。それに床の傷が短い……)
アキラの刀を後ろに退いて
アキラは崩れた体勢から斬りかかっていた
(俺に避けられると判断して、斬撃を飛ばすのを止める暇なんて無いはずだ! つまり、もう斬撃は飛ばせない!)
カツヤがアキラの振り下ろしを大きく後ろに退いて回避する。アキラが更に踏み込んで間合いを詰める。僅かに笑うカツヤ。更に表情を険しくするアキラ。その表情の差が、そのまま攻防の傾きを示していた。
回避行動の制限が無くなった分だけ攻勢を強めるカツヤに対し、アキラが体感時間の更なる圧縮で対応する。途端に頭痛が一気に
それでも攻防は互角までは戻らない。時間はカツヤの味方だ。たとえ互角の攻防が続いても、アキラの強化服のエネルギーが先に尽きる。カツヤはアキラの焦りからそれを見抜いた。そしてこのままなら間違いなく勝てると思い、勝負を焦らずに無理な攻撃を控え、思考を守勢に偏らせる。
それがカツヤの
アキラの
アキラとカツヤがお互いに銃口を向け合う。しかし状況は五分ではない。アキラは床に足を着けている。だがカツヤは宙に飛んだままだ。次の回避行動に大きな差が出る。視線が交差する中でアキラは勝利を、カツヤは敗北を思い描き、引き金を引く。無数の銃声が場に響き渡った。
アイリ達は本当に
辛うじて死なずに済んだカツヤの
「カツヤ。大丈夫?」
「ア、アイリ。どうしてここに……」
「カツヤを連れ戻しに来た」
きっぱりとそう答えたアイリに、カツヤが悲痛な表情を向ける。
「撤退しろって、ちゃんと指示を出したはずだ!」
アイリが表情を少し鋭くする。
「部隊の指揮を投げ出した人の指示に従う義理は無い。ユミナからも1人で飛び出すなと言われたはず」
アイリ達が決死の覚悟で助けに来たことぐらいはカツヤにも分かっている。部隊でアキラと戦っても、勝てずに多数の犠牲を出したのだ。その基準ならば、この場の少数では勝ち目などどこにも無い。
(また俺が仲間を死地に連れてきてしまったのか……)
カツヤの精神が再び沈み込んでいく。だがそこにアイリの厳しくも優しい声が届く。
「死ぬ時は一緒。私達を死なせたくないのなら、カツヤが生きて帰れば良い」
カツヤが
「……分かったよ。戻る」
仲間を死なせない
「それで良い。一応言っておくけれど、後でカツヤがユミナにぶちのめされる時に、
「な、何とかならないか?」
「駄目。ならない。
「そ、そうか」
軽口を挟んでアイリは少し楽しげに笑い、カツヤは苦笑を浮かべた。落ち着きを取り戻したカツヤは、一度は切断した仲間達との連携を取り戻していた。
カツヤが気を引き締めて真面目な顔を浮かべる。
「さて、問題はあいつが俺達を帰してくれるかどうかだな」
「難しい?」
「……分からない。取引を思いっきり蹴ったんだ。あいつが当初の宣言通り俺達を皆殺しにするつもりなら、このまま撤退してあいつをユミナ達の所まで連れていく形になるのは
「ユミナにはカツヤを連れ戻す努力をすると伝えた。待っているかもしれない」
「……そうか。通信が回復していれば、俺達の到着と同時に撤退できるようにタイミングを合わせられるんだが……」
ユミナの所には負傷で戦えない仲間達も多い。そこに皆殺し前提のアキラが現れれば多大な被害が出る。
「仕方無い。すまない。誰か1人戻ってユミナ達に状況を伝えてくれ。俺達は5分後に全速力で撤退する。俺達が合流したら、即ビルから脱出できるように
アイリが戻る者を選び視線で伝えると、彼女は心配そうな顔をしながらもユミナ達の所へ急いで戻っていった。カツヤ達はその場に
「……頼む。持ってくれ。5分後で良いんだ」
カツヤは祈るようにそう
アキラは離れた場所から情報収集機器でカツヤ達の行動を大まかに探知していた。自分を追わずにその場に
隊長であろうカツヤを殺せば、部隊は撤退するかもしれない。そう期待して、あと少しのところで失敗した。しかも逃げる時に残弾を大量に消費してしまい、あと僅かしか残っていない。その状況にアキラが頭を抱えて
(どうする? どうすればこの悪化した状況を切り抜けられる?)
カツヤだけでも手に余るのに増援まで加わった。残弾もすぐに尽きる。その状況で冷静に突破口を考えるが、落ち着いた頭で考えた常識的な判断は、もう勝ち目など無いという常識的な答えを返し続けていた。
アキラが思考を切り替える
(違う。考え方を変えろ。無理
自分でも
「……やるしかないか」
アキラが再び覚悟を決める。大人しくその場に
カツヤ達はアキラを退けた部屋から動かずに周囲を警戒していた。全員の情報収集機器を連携して各自が特定の方向の情報収集を受け持つことで、かなり広範囲の索敵を実現している。この連係機能も総合支援強化服の強みだ。
本来は車載の総合支援システムに収集情報を送信して情報処理を実施する。これにより更に広範囲高精度な索敵と様々なサポートを得られるのだが、今は通信障害の
カツヤはアキラが潜んでいる通路の方向へ銃を構えたまま警戒を保っている。アキラの位置はその通路の少し先だ。
(あいつ、あそこから動かないな。逃げる気配は感じられない。でもこっちをすぐに攻撃できる位置でもない。こっちの出方を
カツヤが僅かに苦笑する。
(……信じられないか。お互いに)
お互いに信じ合った方が無駄な戦いを避けられるので得だ。それを分かった上でお互いに信じられない、と相手も思っている。カツヤはアキラも同じように考えていると、それだけは通じ合っていると、その納得を不思議に思いながらも受け入れていた。
アキラの反応が動きを見せる。カツヤ達が表情を一気に険しくして銃口を通路に合わせた。
通路からアキラが全速力で飛び出してくる。その動きをカツヤは極限の集中で捉えて、違和感を覚える。アキラはSSB複合銃を握って構えていた。だがグリップではなく銃身を
覚悟を決めたアキラがSSB複合銃をカツヤ達に向けて勢い良く投げ付ける。銃が激しく回転しながら宙を飛ぶ。一瞬後、その銃口から残弾全てが周囲に無差別に撃ち出された。
SSB複合銃は簡易自律銃座の銃撃部品としても使用できる。荒野向けのバイク等に搭載されているアーム式銃座に組み込み、発砲を制御装置に任せることも出来る。その
アキラはSSB複合銃に10秒後に自動で全弾撃ち尽くすように設定した。そしてぎりぎりまで待って時間を調整し、絶妙な瞬間に飛び出してカツヤ達に投げ付けた。ほぼ水平に飛ぶ銃が空中で激しく回転しながら
多数の弾丸が撃ち出されているが、照準など
逆にアキラは回避を完全に捨てて、被弾を覚悟して全力で距離を詰めた。強化服と防御コートの出力を全開にして、時が非常に緩やかに進む世界の中を、自分とカツヤ達とその間しか存在しない世界の中を、被弾しながらも強引に突き進む。
SSB複合銃はアキラの体感時間ではかなり長く、現実ではほんの僅かな時間で全弾を撃ち尽くし、そのまま勢い良く壁に激突した。カツヤ達がすぐにアキラへの銃撃を再開しようとする。その銃弾を浴びるよりも早く、アキラがもう1
極限の集中に
(仲間がいるなら、お前は仲間の安全を優先する!)
SSB複合銃がカツヤの仲間達へ向けて飛んでいく。それは既に壊れているが、カツヤ達には分からない。
(この状況なら、お前は仲間を下がらせて自分が前に出る!)
アキラが全速力で駆けながら刀を抜く。
(そして仲間に被弾させない
その想定はエリオ達との模擬戦を基にしたものだ。カツヤがそう動く保証などどこにも無い。だがアキラはそこに全てを賭けた。
単純な才能であればカツヤの方が上だ。才能が五分であれば、アルファから非常に効率的な訓練を受け続けているアキラは、現在の装備性能の差もあって、カツヤを確実に蹴散らしている。
その才能で磨かれたカツヤの実力は非常に高い、しかし知らず
それでも類い
死をぶつけ合う直前に、アキラとカツヤの視線が交差した。一瞬後、敗者が鮮血を
カツヤはアキラの想定通りに動いていた。仲間を下げ、自身は前に出て、先に銃を撃ち落とした。そのどこかを僅かでも
カツヤを殺してもアキラの戦闘は終わらない。部隊長死亡による混乱に乗じて、逃げ出すか残りを始末すると決めていた。しかしそれは阻止された。カツヤが死んだ瞬間、アキラの
(そこには誰もいないはず!?)
アキラが
「お久しぶりですね」
ツバキが中指と人差し指で刀を摘まみながら
小型輸送機がクズスハラ街遺跡を飛んでいる。仮設基地を出発して既に大規模遺跡探索区域の内部に入っている。周辺のビルの屋上より少し上の高度を、胴体部の左右を大きく開けて飛行していた。
サラとシカラベ、パルガとヤマノベが左右に分かれて機体の側面に立ち、大型の銃を構えている。エレナが自身の情報収集機器と機体の索敵装置を駆使して迷彩状態の機械系モンスターを探知すると、その情報をサラ達に送信した。
サラがその情報を基に照準を合わせて引き金を引く。
シカラベが借り物の大型銃の性能に今更ながら舌を巻き、少し
「エレナ。これ、本当にどこから調達してきたんだ? やばい物じゃないんだよな?」
銃と輸送機を手配したのはネリアだ。輸送機は仮設基地に配備されていたもので、銃はヤナギサワ直属部隊の予備だ。自身の権限で持ち出せたので、ネリアが勝手にエレナ達に貸していた。
「経緯は軽く説明したでしょう? それ以上のことは私も知らないわ。不安なら自前のを使って」
シカラベは懸念の残る表情のまま追及を諦めた。エレナの態度から自分と似たような疑問を抱いている上で割り切っていると判断し、取り
パルガが苦笑に疑問を滲ませて口を挟む。
「シカラベ。銃の出所なんかより、あの女の出所を気にしろよ」
パルガの視線の先には、空中をまるで見えない足場を蹴って跳躍し続けているような動きを見せているネリアの姿があった。機敏な動きで空中の機械系モンスターに接近し、両手のブレードで切り裂いている。何も無い空中に突如十字に刻まれた機械系モンスターの残骸が出現し、そのまま落下していくという奇妙な光景が繰り返されていた。
「空中に強固な
ヤマノベも同じ光景を見て苦笑を浮かべている。
「近接戦闘特化のやつの実力は、頭のイカレ具合に比例しているって話を聞いたことがあるが、あれを見る限り納得だ。美人だが、お近づきにはなりたくないタイプだな。まあ義体者はその気になれば顔なんか幾らでも変えられるから、方向性の差異はあっても大抵は美人だけどな」
その時、ちょうど自身の側の敵を潰し終えたネリアが宙を駆けて戻ろうとしていた。そのままヤマノベの
「一応、生身の時からこの顔よ?」
「そ、そうですか」
ネリアは別に脅すつもりなどなかったのだが、ヤマノベは冷や汗を
そのまま輸送機の胴体部分を通り抜けて、ついでにブレードのエネルギーパックを交換して、逆側の空中に飛び出そうとするネリアをサラが呼び止める。
「ねえ、今更だけど、こんな高性能な銃を貸してくれたり、輸送機を手配してくれたりしてくれたのは助かるけど、アキラを助ける
「ん? 予備の人型兵器が無かったからよ」
ネリアはそれだけ答えて再び宙に飛び出した。その訳の分からない返答に、サラは表情を複雑そうに
「エレナ。意味、分かる?」
「さっぱりだわ」
エレナも似たような表情を浮かべていた。
仮設基地に予備の人型兵器が残っていれば、ネリアは人型兵器部隊の応援に向かっていた。しかし予備の機体はイナベの指示で全て増援部隊側に配備されており、他のハンター達の部隊と一緒に該当区域の制圧作業に割り当てられていた。それにより、今は味方、の判断の味方の対象が、元々所属していた都市の人型兵器部隊よりアキラに偏った。それだけだった。
シカラベが口を挟む。
「それでエレナ、そのアキラはどこにいるんだ? 見付かりそうなのか? 居場所は不明なんだろう? 見付かるまで遺跡内を探し回って、当てもなく飛び続ける訳じゃないよな」
「彼女が帰ると言うまでは、このまま探索を続行よ。それと、一応当てはあるわ。輸送機の高性能な情報収集機器で、アキラの貸出端末とかから送信されている短距離通信の波長とかを探しているの。通信障害が回復すればすぐに分かるんだけど……」
エレナの険しい表情を見て、シカラベも別の意味で表情を険しくする。
(時間や残弾、輸送機のエネルギーが許す限りは捜索を続けるつもりか。……早まったかな)
シカラベはドランカムの都合で今回の大規模遺跡探索に参加できなかったが、待機要員として仮設基地に待機していた。その後に都市が指揮する増援部隊に加わることになったのだが、必死になってカツヤ達の救援に向かう羽目になる気がして気乗りしなかった。
そこでエレナから連絡を受けたシカラベは、余り考えずにアキラの救援に加わった。増援部隊の編制を待たずに出発したい。都市側の指揮に従って順に制圧作業を進めるよりアキラの捜索を優先したい。その程度の内容だと考えていたのだが、輸送機に、強力な大型銃に、得体の知れない女にと、少々予想外のことが多かった。
大規模遺跡探索の周辺を包囲していた機械系モンスターは、迷彩状態で飛行しながら包囲の内に入る者は通過させるが出る者は攻撃する。シカラベはエレナ達にそう聞かされていたのだが、輸送機等の飛行可能なものは対象外なのか、一度出た者が再度入ろうとするのは防ぐのか、輸送機は包囲区域に近付いた時点で襲われていた。
エレナ達を責めるつもりはないが、初手で
(……幾らカツヤが嫌いだからって、少し安請け合いしすぎたか。俺も焼きが回ってきたか?)
シカラベは自身の選択に少々後悔しながら、追加で現れた敵の銃撃を再開した。
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