第32話 100億あっても端金
巡回依頼の集合場所だった広場は、今は緊急依頼などから帰還したハンター達で
取り
『終わりよければ全て良し。いろいろあったがやっと終わりだ』
アルファが笑ってアキラを
『お疲れ様。今日はもうゆっくり休みましょう』
『そうだな。久しぶりに風呂に入ってゆっくり休もう』
アキラは久々の入浴への期待に顔をほころばせた。しかしアルファが苦笑を浮かべてその期待を摘み取る。
『アキラ。残念なお知らせがあるわ』
『……何だ?』
『報酬がまだ振り込まれていないの。だから、風呂付きの部屋に泊まる金はないわ』
アキラが複雑な
『ど、どういうことだ?』
『緊急依頼の参加者が多すぎて、報酬算出計算に遅延が出ているらしいわ。詳細は依頼履歴で確認して』
アキラが少し慌てながら情報端末を操作して依頼履歴の報酬欄を確認すると、そこには確かにその旨が記載されていた。
『あんなに頑張ったのに……』
『
『…………分かった』
愚痴を言っても仕方が無い。アキラはそう自分を無理
『アキラ。それはそうと、バイクはどうするの? 駐輪場付きの部屋に泊まる予算はないわよ。そこらに
アルファの
『……よし。バイクはシェリルのところに預けよう。ちょくちょく顔を出してくれとも頼まれたんだ。あそこを駐輪場代わりにしてバイクを使う時に取りに行けば、顔を出したことにもなる』
アキラはそのままシェリルの拠点へバイクを走らせた。
自室で眠ろうとしていたシェリルの耳に激しいノックの音が届く。無視するには慌ただしすぎる様子に仕方無くベッドから降りてドアの前に行く。そして心地
「何? もう寝るところよ」
「ボス! アキラさんが来ています!」
半分寝ていたシェリルの意識が一気に覚醒する。同時に
シェリルは素早く身支度を済ませてアキラの
「お待たせしました。どうぞ中へ」
「ここで良い。こんな時間に悪かったな。ちょっと頼みがあるんだ」
「何でも言ってください。アキラの頼みなら可能な限り引き受けます」
力強く
「このバイクを預かってほしい。必要になったら取りに来る」
「分かりました。しっかりお預かりします。他には何かありませんか? 特になければ寄っていきませんか? コーヒーぐらいなら出せます」
シェリルはアキラの手を自然に握り、
「いや、今日はもう遅いし宿に帰るよ。いろいろあって疲れてるんだ」
シェリルがとても残念そうな寂しげな様子を見せる。
「そうですか。久しぶりに会えたのでいろいろ話したかったのですが、残念です」
「またその内に顔を出すよ。じゃあな」
「はい。お待ちしています」
シェリルは少し寂しそうな様子を見せながらも
シェリルが見張りの少年にアキラのバイクを拠点の中に入れるように指示する。
「言うまでもないけれど、慎重に扱って。皆にも勝手に触ったりしないように伝えて。アキラのバイクだってことも一緒に伝えておいて。無くしたり壊したりしたらどうなるかぐらい分かっていると思うけど、本当に慎重にお願いね。分かった?」
「ああ。分かった」
少年はその最悪の場合を思い浮かべて緊張した様子で
シェリルが少年に優しくも魅力的に
「私はもう寝るわ。頑張ってね。お休みなさい」
少年はそのシェリルに僅かに見
自室に戻ったシェリルが自室の鏡に、鏡の自分に向かって
「……ちゃんと効果はある。でもアキラには効果はなかった? 私が気が付かなかっただけ?」
シェリルは自身の優れた容姿を自覚している。それで相手の好感を格段に引き出せると理解している。
しかしアキラに対しては思ったほど効果がなかった。そこで見張りの少年に試してみたのだ。意図して浮かべた魅力に
言動に不手際は無かったはずだった。しかしアキラの気は引けなかった。そのことにシェリルが僅かに気落ちする。
「……いろいろ頑張らないと駄目ね」
シェリルはそう
翌日。宿の狭く風呂も付いていない安部屋で、疲労の
「……アルファ。おはよう」
『おはよう。アキラ。昨日の報酬が振り込まれているわ。気になるなら確認しなさい』
アキラはまだ眠気が残っていたが、報酬への興味に釣られて身を起こすと、少し緩慢な動作で情報端末を操作した。そして依頼履歴から報酬額の欄へ
「1200万オーラム!?」
アキラは思わず自分の目を疑い報酬額を再確認した。そして1200万オーラムで正しいと理解すると、半ば
報酬の詳細には、緊急依頼の基本報酬と、モンスターの群れを2度撃退した分の報酬と、助けたハンター達の人数に応じた増額分と、ハンター達に渡した回復薬の代金を合計した総額から、前払分のバイクの代金が引かれている旨が記載されていたが、アキラにそれを読む余裕はなかった。
『アキラが死にかけた代金としては、ちょっと微妙な額かもしれないわね』
アルファのその不満げな声でアキラが我に返る。
「……いや、でも、一応命を賭けて、実際死にかけたんだ。他のハンター達も山ほど弾薬を使っていた。でも、だからって……」
アキラも報酬の妥当性を迷い始める。しかし昨日の激戦の難易度も、受け取った報酬の桁も、どちらもアキラの感覚では高すぎて結論など出なかった。
その迷いを、アルファの次の発言が吹き飛ばす。
『今日はこの
「
『アキラ。一々驚かないで』
「お、驚くなって言われても、それは無理だって! 1200万オーラムが
『支払通貨がオーラムである限り、100億あっても
かなり慌てていたアキラだったが、アルファの発言の意味が分からず、その困惑と疑問で逆に平静さを取り戻した。
「……どういう意味だ?」
『詳しく説明すると長くなるわね。後で弾薬補充と装備更新にシズカの店に行くから、その時にオーラム払いでは買えない装備について聞きなさい。
食事を促された途端、アキラは急に空腹感を覚えた。そして昨日は余りに疲れていたので食事も取らずにすぐに眠ってしまったことも思い出した。
「……そうだな」
空腹時の食事は大抵の事情より優先する。アキラはいろいろな疑問を棚上げして食事の用意を始めた。
身支度を終えたアキラがシズカの店を訪れると、シズカがいつものようにカウンターから軽く手を振って出迎えた。
「アキラ。いらっしゃい。強化服の調子はどう? 役に立っているかしら?」
「はい。想像以上の性能で助かっています」
シズカは元気そうなアキラの様子を見て安心する。報道では都市が防衛隊を出撃させるほどの大規模な襲撃であり、防衛に参加したハンター達にも多数の死傷者が出たと報じていた。何となくアキラも参加しているような気がして身を案じていたのだが、元気そうな様子を見る限り
「それは良かったわ。私が変なのを選んだ
シズカの軽い冗談に、アキラが少し得意げな様子を見せる。
「今日は常連への
「AAH突撃銃ね。それと機械系モンスターに有効な銃か。いろいろあるけれど予算との兼ね合いもあるわよ? 幾らぐらいまで大丈夫なの?」
「AAH突撃銃と合わせて1000万オーラムぐらいまでなら大丈夫です」
笑顔で対応していたシズカが驚きで表情を一瞬だけ固めた。そして少し困ったような顔で続ける。
「……一応聞くけど、支払方法は? 売ってあげたいのはやまやまだけど、私も商売だからそんなに分割払とかには対応できないわよ? それともハンターオフィスのクレジットの限度額? 分割で支払に余裕があるとしても、借金に違いはないからお勧めしないわ」
「一括で支払えますから大丈夫です」
アキラは深く考えずに普通にそう答えた。だがそれでシズカの表情が変わる。
「……そう。強化服が届いたのは3日前よね。それと強化服が届くまでは、危ないハンター稼業は
シズカは優しく
アキラが少し慌てながら言い訳するように答える。
「そ、その、代金はですね」
「うん」
「き、昨日の巡回依頼でモンスターの群れと戦いまして、それ自体は想定外のことで、その報酬です。予想外に稼げました。自分でも驚いています」
「つまり、無理をしたのね?」
「それは、必死に生き延びようとした結果でして……」
「無理を、したのね?」
シズカの声には有無を言わせない迫力があった。
「…………。はい」
アキラが観念して認めると、シズカが表情を心配そうに少し険しくさせる。
「大丈夫だったの?
「見ての通り大丈夫です。強化服も別に
アキラは
「み、右足を負傷しましたが、回復薬で治った程度の負傷で、既に問題なく治癒済みです」
アキラはそれでもまだ致命的な何かを隠そうとしている雰囲気を出していた。その様子がシズカを一層心配させる。
「ちょっとこっちに来なさい!」
シズカは有無を言わせずにアキラをカウンターの裏まで連れて行った。
「強化服を脱いで下を確認させて。その下は包帯だらけとか、そんな状態になっていないでしょうね?」
「大丈夫ですって。もう治ってますから」
「それなら見せても大丈夫よね? 早く脱ぐ!」
アキラがシズカの勢いに押されて強化服を脱いだ。血
シズカは
「無事なら下手に隠そうとしない。余計不安になるでしょう」
「す、すみません」
アキラは抵抗せずに抱き締められていた。そして、シズカに胸を顔に強く押し当てられて照れながら、受ける必要のない緊急依頼を一人で引き受けた上に走って戦場に向かおうとしていたという、知られたら大変なことになりそうな無理
アキラ達は店のカウンターまで戻ってきた。シズカが注文の品の1
「まずはAAH突撃銃ね。後は機械系モンスターに有効な銃か。昨日の戦いで必要だと思ったのね? どんな戦いだったのか話してもらえる? それを聞いて考えるわ」
「分かりました」
アキラはキャノンインセクト達との戦闘を、細部をいろいろ省略して説明した。それでもAAH突撃銃でも何とかなりそうな補給機達を倒す
「……なるほど。随分
「はい。まあそれで、頑丈な機械系モンスターにも通用する何か良い武器はないかと思いまして」
「それならCWH対物突撃銃かDSS狙撃銃を勧めるわ。両方とも汎用徹甲弾が使えるから、頑丈なモンスターに効果が高いわ。射程と威力。どちらを優先させる?」
「遺跡探索をメインにするつもりなので、威力でお願いします。遺跡の中は入り組んだ場所が多いですから、射程はそこまでなくても良いと思います」
「そうすると、CWH対物突撃銃と汎用徹甲弾のセットがお勧めよ。通常弾も使用できるけど、AAH突撃銃と併用するつもりなら、CWH対物突撃銃は汎用徹甲弾だけを使った方が良いわ。かなり高いけど専用弾も保険に買っておけば、汎用徹甲弾では対処が難しいモンスターも楽に倒せるわ。万が一の時の保険として数発確保しておくのも良いかもね」
「じゃあ、いま教えてもらったものと、通常弾の補充と、強化服のエネルギーパックの予備をお願いします。他に何か買っておいた方が良い物ってありますかね?」
「そうね。あれこれ言ってもどれもあれば便利なのは変わらないし、……何なら
シズカとしてはちょっとした冗談のつもりだった。だがアキラは予想以上の食い付きを見せた。
「買います」
シズカの店はハンター向けの銃火器が主商品だ。他にはハンター向けの消耗品も仕入れている。戦闘服も頼まれれば取り寄せぐらいはする。しかし
だがアキラの態度は、実は冗談だ、などと今更言えるものではなかった。表情は期待の混じった真面目なもので、視線も非常に真剣で、声にも確かな意思が込められていた。
「……ちょっと待っていてね」
シズカは僅かに固くなった笑顔をアキラに向けた後、そう言い残してカウンターの奥に消えていった。そして少し焦りながら店の倉庫に向かった。
商品の搬入口を兼ねた倉庫には、売り物の銃火器類や弾薬などの他にも様々なものが保管されている。そこで目的の物を探し始める。
「……どこに置いたっけ。……そもそも本当にあるかどうか。邪魔だからって捨てた記憶はないから、その辺で
見付けた物は倉庫の隅で
現在の技術では再現不可能な品々など、旧世界の高度な技術力で作られた精密機械や医療品などには高額な値段が付けられる。しかしそうではない品には相応の値しか付かない。たとえ高い芸術性を持つ絵画であっても、原材料がありふれた紙とインクなら、ハンターオフィスの買取所は値を付けない。そこに技術的な貴重性はないからだ。
普通の買取所では
シズカは興味を持てなかった品を
「お待たせ。こんな物しかないけど、要る?」
アキラがカウンターに並べられた品を真剣な表情で見る。しかし
「シズカさんのお勧めとかありますか?」
「
アキラが悩みながら
『これが良いと思うわ』
『一応聞くけど、それを選んだ理由は?』
『縁起の良い数字が刻まれているからよ。多分、旧世界の賭け事の
アキラがアルファに勧められた
「これにします」
「分かったわ。品質保証が出来ないから、これはサービス品にしておくわね。注文の品を持ってくるから待っていてね」
シズカが注文の品を
『アルファ。縁起の良い数字って、この数字にどういう意味があるんだ?』
『その数字が現れると大金を得られる。だから金運関連で縁起が良い。そういうことよ』
『なるほど』
この類いの
シズカが注文の品を持って戻ってくる。
「お待たせ。時間があるなら商品の説明を聞いておく?」
「お願いします」
「分かったわ。CWH対物突撃銃は主に装甲の厚い機械系モンスターに対して……」
シズカが楽しそうに商品の説明を始めた。
CWH対物突撃銃は対モンスター用の銃火器の中でも、機械系モンスターとの戦闘を考慮して製造されている製品だ。
機械系モンスターはその多くが自律兵器や施設防衛装置などの機械類であり、生物系モンスターに比べて頑丈な個体が多い。強固な装甲や固い金属の体を貫けなければ
CWH対物突撃銃は機械系モンスターの強固な装甲を貫き、比較的
徹甲弾で機械系モンスターの装甲を貫通させて内部の制御装置のみを破壊すれば、少ない破損状態で機能を停止させることも出来る。機械系モンスターを内部部品の入手目的で破壊する場合、部品の損傷が少ないほど高値で売れるので
この銃を愛用するハンターには、荒野を
ハンター達が大型機械兵器類のモンスターと戦う際に使用する銃は数あるが、定番の品と言えばこの銃の名前が必ず挙がる。CWH対物突撃銃はそれだけ優れた銃だ。
「CWH対物突撃銃の専用弾は高価だけど、性能は折り紙付きよ。倒す機械系モンスターの内部構造を熟知していて、狙撃に
「
アキラがしっかりと
「よろしい。それと、使えそうだからって専用弾を他の銃で使おうとしないこと。最悪暴発してアキラの腕ごと吹っ飛ぶわ。絶対に
アキラが少し考えてから答える。
「それならAAH愛好家について教えてください」
シズカが何とも言えない表情を浮かべる。そしてどこか達観した感じの目でアキラに
「AAH愛好家か……。アキラ。その
理由は分からないが、アキラも自分が妙なことを聞いてしまったことは分かった。取り繕うように続ける。
「いえ、昨日の戦闘で同班のハンターがそんな単語を話していたので、聞いてみただけです。俺のAAH突撃銃を見て、俺かシズカさんがAAH愛好家だと考えたみたいで……」
「そうなの? そうすると、偶然だとしてもアキラはよほどの活躍をしたのね」
「活躍すると、AAH愛好家だと勘違いされるんですか?」
「何というか、その辺はいろいろあるのよ」
困惑しているアキラに、シズカが苦笑しながらAAH愛好家について説明する。
東部には多種多様な銃が出回っている。長期に
そしてAAH愛好家と呼ばれている一部の者達は、異常なほどに、時には手段と目的が逆転するほどにAAH突撃銃を愛用している。
AAH突撃銃を使用する
AAH愛好家にも様々な派閥が有る。改造を一切許さず、素の性能での有効な攻撃方法を模索する者。基本となる設計図から逸脱していなければ良いとする者。基幹部品が使用されていれば良いとする者。拡張部品の使用や開発で機能を高めようとする者。見た目がAAH突撃銃であれば中身が全くの別物でも構わないとする者。彼らは互いに
AAH愛好家の共通点として、非常に濃い人物が多いことが挙げられる。有能なハンターも数多くいるのだが、下手に付き合うとAAH愛好家に染められてしまうので、扱いに困る者達でもあった。
「AAH愛好家には企業の従業員も多いのよ。私は違うわよ? 巧みにAAH突撃銃を勧めたり、販売する品に非常に高性能な改造品をこっそり混ぜたりしているとも言われているわ。販売されているAAH突撃銃には
アキラが昨日の自分の行動を思い返す。AAH突撃銃を名銃と言ったり、キャノンインセクトのような機械系モンスターにAAH突撃銃だけで突撃したりと、確かにそう勘違いされても不思議ではない行動を取っていた。
「当たりと呼ばれる特に高性能なAAH突撃銃を求めて、同じ銃を大量に購入するハンターもいるわ。その当たりには本来コロン払いでないと購入できない高性能なものもあるって話よ。旧世界の銃火器のような性能のものまで混ざっているって
店主がAAH愛好家だと勘違いされた店には、
シズカの店にも
「シズカさん。その、コロン払いって何ですか? オーラムとは違うんですか?」
シズカはアキラがコロンについて知らないことに少し驚いた。その後で一瞬だけ
「アキラはコロンって知っている?」
「いいえ。単語も今初めて知りました」
「説明するとちょっと長くなるわ。構わない?」
「大丈夫です。お願いします」
シズカがアキラにコロンについて説明を始める。
東部には2種類の通貨がある。企業通貨とコロンだ。企業通貨の例を挙げると、オーラムは統企連の5大企業の一つである坂下重工が発行する企業通貨だ。
企業通貨は主にその企業が管理運営する統治都市内で使用されている。オーラムを含めて5種類存在しており全て5大企業が発行している。企業通貨を媒介に経済活動を行う者は全てその企業の支配下にあると考えて良い。通貨の流通範囲がその企業の支配圏であり、企業活動を支える生命線だ。
企業通貨の偽造は統企連への宣戦布告だ。偽造を試みた多くの犯罪組織が統企連に
そして企業通貨とは別に東部全体で流通している通貨がコロンだ。旧世界の通貨とも呼ばれており、現在の技術では偽造不可能な電子通貨で、遺跡から遺物として発掘されている。入手方法は様々でコロンカードと呼ばれる電子的な財布の中にその残高として存在していることもある。
コロンは東部では絶対の価値を持つ通貨だ。統企連を介して全ての企業通貨と高額なレートで両替できる。逆に企業通貨からコロンへの両替は、非常に高い手数料などで防がれる。それが東部でのコロンの価値を更に高めていた。大企業間の決済もコロンで行われることが多い。
そしてコロンの最も重要な価値は、旧世界の通貨として現在でも使用できることだ。
旧世界の遺跡の中には今現在も正しく稼動している工場などがある。当然その警備装置なども正しく機能しているので、旧世界の圧倒的な技術で製造された警備装置は、有能なハンター達でも企業の私設軍でも全く太刀打ちできない場合が多く、力尽くで遺物を奪うのは極めて困難だ。
それらの工場で生産された極めて貴重で極めて入手困難な生産物を、管理用の人工知能と交渉することで安全に購入する。それがコロンの価値だ。その事実はかつては秘匿されていたが、今では東部に広く知れ渡ってしまっている。
また遺跡に設置されている自動販売機では、四肢の欠損ですら短時間で治療し若返りさえする回復薬が売られていることもある。コロンがあればそのような貴重な遺物を買えるのだ。
それを力尽くで手に入れようとして、旧世界の警備システムと交戦して死体の山を築いた挙げ句に自動販売機を破壊してしまい、結局手に入らなかったという事例もある。
また、一部の企業は旧世界の軍事生産拠点からコロンで軍事物資を購入しているとも言われている。それらの性能は時に東部の勢力範囲を書き換えるとすら言われている。
そのような経緯も有り、統企連はコロンの収集に躍起になっている。その収集方法の一つとして、ハンター達に遺跡からコロンを回収させる
シズカが説明を締め
「そういう訳で、そんなコロン払い専用品に改造された異常に高性能なAAH突撃銃が存在するって
東部には企業通貨では買えない装備があることを知り、アキラはアルファが100億オーラムを
「教えていただいてありがとう御座いました。面白かったです」
「そう? それは良かったわ」
強化服を装備するようなハンターならば、それを目指す者ならば、コロンの存在など知っていて当然の知識だ。だがアキラは知らなかった。シズカはそのアキラの境遇を思って少し心を痛めたが、アキラを気遣ってそれを表には出さずに、いつものように
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