平和な世界の後始末

春豆風

第1話 全ての始まり

 聖剣に選ばれた者、セルゲイ・デュノは騎士家の嫡男として生まれた。

 幼き日より民草を守護する為の訓練を受け、領民を愛し領民に愛され育った。


 成人の儀の最中、魔王軍の急襲を受けた。10倍はあろうかという敵軍の規模に対しデュノ家は果敢に戦ったが、領主アンドルフ・デュノの戦死、その妻ミリアン・デュノが捕縛され全員が殺された。

 セルゲイもまた戦闘中の爆発に巻き込まれ、吹き飛んだ瓦礫を頭部に受け城の裏手にる崖から転がり落ちた。


 激しい流血と複数箇所の骨折、ダルダノ川に流されるセルゲイは、数回の瞬き後には閉じる朧げな視界で生まれ育った街が焼け落ちていく様を見ていた。



 両親と家を亡くし、自身も死ぬほどの怪我を負った彼は、ダルダノ川の流れるままに森の奥の湖へと辿り着き、妖精に出会う。

 傷を癒し鍛練を続け、2年後の春、彼は森を出た。


 15の少年を、湖の妖精は幾度となく引き留めた。只人に教えてはならぬような事まで懇切丁寧に説明した。

 奴らの手の入らないこの森で生きていくべきだと言う妖精に、セルゲイは一言「妖精の森は焼かれずとも、人の街は焼かれる」と返した。


 復讐かと問う妖精に、セルゲイは言葉を返さなかった。

 次こそ人々を守るのだと、目に宿した意志で応え、妖精もまた彼の意志に加護と聖剣を渡した。


 授かった聖剣は邪を祓い魔を退ける力を宿す。

 妖精の加護はセルゲイの向かうべき先を照らしてくれる。


 セルゲイの新たなる旅は、二つの光と共に始まった。

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