自称Sと自称Mのカップルによる学校壊滅物語
円楓
序章
第1話カップル誕生は突然に
「どうして…」
「どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁ!」
午後8時、アニメグッズが散乱している家の角部屋にて机の上で頭を抱え叫ぶのは蘭華高校1年鳴上悟。彼は今日起こった出来事が余りにも大きすぎて認めきれなかった。
「うん。これは夢だ。顔をつねってみよう!」
しかし、顔をつねってみても夢から覚める事は無い。
これは紛れもない現実だった。
「な、なんで…」
鳴上悟は頭をガンガン机にぶつけている。
それは近所迷惑になるほどの煩さであったが鳴上悟はそれにすら気づかない。
その証拠に、
「悟!何やってるの!うるさいわよ!」
このような親の叱責からも聞く耳を持たない。
いや、聞こえないと言ったほうが正しいか。
彼はそれほどまで思い悩んでいた。
「今日、起こった事を思い出そう」
悟は頭を抱えるのをやめて、天を向き目を瞑った。
そして丁寧に慎重に出来事を思い出す。
「やっぱりそうだ。俺は今日佐野川美咲と付き合ったんだ!あのドM王女と」
俺は「バン!」と机を叩き椅子から立ち上がり叫んだ。
………遡る事4時間前
「今から部活へ行くか」
授業が全て終わり俺は自分が所属しているバレーボール部へ向かおうとした。
俺が鞄を肩にかけポケットに手を入れてクラスを出て行くときに陽キャが絶賛青春をしており、その反面俺はクラスの隅っこで絶賛陰キャしていた。
俺も陰キャの集まりに入りたいと思っている。アイドルオタクの陰キャ、アニメオタクの陰キャの会話に。
しかし、俺はその会話に入る事が出来なかった。
それには理由がある。その理由とは
「さとっちゃん。もう帰るの?」
「いや、部活に行くだけだぞ。雄星」
俺の目の前には幼稚園からの幼馴染みである松門雄星が後ろで腕を組んで立っていた。
「じゃあ、早くやらないとね」
「もう、それはやめてくれ」
「いや、もうやめられないんだよ。中毒者のようにね」
雄星は手を握りマイクのようにしてニヤニヤしながら俺の前に持ってくる。
「今日はどうでしたか?ドS王子?」
「だから、違うって言ってるだろ」
俺はため息をこぼしながら雄星に返す。
俺の返事に満足したのか雄星はニコニコしながらクラスを出て行き帰っていった。
振り返るとクラスの全員が俺を見ており、俺はその目に耐えられなくなりクラスを後にした。
そう、その理由とはドS王子という肩書があるためであった。
ドS王子というあだ名はもちろん雄星がつけた。
何故ドS王子かと言うと、はっきり言って雄星の勘違いのせいだ。
俺は3歳の頃、交通事故に遭ってしまった。
幸い命に別状はなくその後の体の不自由はなかった。
しかし、体には無数の傷が残ってしまった。
小学校の頃のプールの時間に雄星はこの傷に興味を持ちしつこく俺に聞いてきた。
そして、翌日。小学生の浅知恵と言えるドS王子というあだ名をつけた。
最初の頃は俺も調子に乗りさっきのような質問にも答えていた。
だか、中学生になるとその質問が鬱陶しくなり「はいはい」で聞き流していたが雄星はそれを毎日繰り返すため本当にドSと思われてしまっている。
今でも、行っており体操着に着替えるときに傷が見えてしまいクラスのみんなが雄星の言う事が本当だと信じ込んでしまっている。
「確かに俺はひどいコミュ症で対人関係が上手くない。女子からの会話も無愛想な返事で返してしまうし、目つきは鋭く、俺に近寄るなオーラが出てるけど、ドSじゃないんだよなぁ。しかも噂が大きくなって俺は喧嘩しかしていないみたいな事になってるし」
俺は肩を落としながら廊下を歩いて行った。
そして、これから部活へ行こうと靴箱で靴を変えていた時に女子生徒が近寄ってくる。
俺には関係ないと思い、無視して靴を履き替えていると
「あのぉ、すいません」
と声が掛かる。俺は振り向くが女子生徒は顔を伏せたままだった。
「はい?なんでしょう?」
「わ、私と」
女子生徒は深呼吸をする。
「私と付き合ってください!」
「へ?」
その時、時が止まったように感じた。
付き合う?フェンシングみたいに突き合うって事?
俺は頭の中がぐるぐる回ったように感じた。
そして、あたりから会話が聞こえる。
「ねぇ、見てよ。あいつ女の子からの告白を無視してるよ」
「確かに。あいつドS王子とかって言われたなかったっけ。喧嘩しかしてない」
「そうそう、確かそんな感じだった。でもあんなだけ勇気を振り絞った告白を無視するとかあり得なくない?」
「本当。最低よね。1人の男としてどうかと思うわ」
いや、だからドSじゃないし、喧嘩もした事ないし!
俺がそう思っていると似たような会話が流れて来た。
「それで、返事は?」
告白してきた女子生徒が顔を伏せながら聞いてくる。
「あぁ、返事は」
くそ!こんな事になっちゃったら俺の学校生活がもう終わるじゃねぇか!陰キャでいじめられるって。
ここは一ヶ月付き合って別れればいい!
「こっちこそ、お願いします」
「パン!」
俺が答えたと同時にクラッカーの音が鳴り響いた。
「おめでとう!これで最強SMカップルの誕生だな!」
そう言った雄星が隠れていたところから出てきてさらにクラッカーを鳴らした。
さっきまで俺をひどい目で見てきた女子生徒も近寄ってくる。
俺は告白してきた女子生徒を見るとひどい顔をしてこちらを見ていた。
状況が飲み込めない俺は雄星に話を聞く。
「これはどういう事だ?」
「簡単な事じゃないか。ドS王子の鳴上悟とドM王女の佐野川美咲を最強のSMカップルにしようとしたんだよ」
「何?」
「私達からは美咲を無理矢理告白させたんだよ。あんたに」
「いや〜まさか本当にこうなるとね」
俺は我慢出来なくなり雄星の胸ぐらを掴む。
「雄星!やっていい事と悪い事ぐらいわかるだろ!やってられん!これはなかった事に…」
「それはやめた方がいい。さっきの事を撮ったからなお前が美咲ちゃんを振ればこれを流す。そうすればどうなるか分かるよな?」
雄星はスマホを振りながら話す。
そして、女子生徒も佐野川美咲に話しかけていた。
終始佐野川美咲は顔を伏せており力関係があっという間に分かった。
「さぁ、これからの高校生活を楽しもうぜ!」
雄星は俺の肩に手を置き話しそのまま女子生徒と帰って行った。
佐野川美咲もその女子生徒と連れられて一緒に帰った。
そこからの記憶は余りない。
………時は戻り
俺は机と椅子の間に戻っていた
「まさか、雄星があんな事をするなんて」
俺は雄星がした事がまだ信じられなくいた。あれだけ仲かよかったのにどうして?
でも、それ以前の問題でなんで俺がドM王女と付き合わないといけないんだよ!
「俺、ドSじゃなくてドMなのに」
そう、俺はドMであった。
1人でする時はS女が M男をいじめる系のを見ているのに、それが両方 Mだったら反発しちゃうじゃないか。
俺は指で表現をしながら言う。
「それに佐野川美咲は虐められていたな。でもドMだからそれを快感になってしまうのがかわいそうだ。俺はそこまでのドMではない」
そう考えているとかなり遅い時間になってしまったため布団に入り眠りに入る事にした。
「あぁ、不登校になりそう」
そう呟き俺は眠った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます