名探偵は謎を解かない【異世界ミステリ】
那西 崇那
プロローグ
科学とは、人類の至宝であり、不明を食らう生き物で¬幽霊、UFO、魑魅魍魎であってもだ。それらが既存の科学に当てはまらない法則を持っていようと、それが存在するのならば、いずれは『幽霊学』や『妖怪学』なるものでも設立され、それもまた科学の一部となる。ゆえに、すべての事象は最終的には科学に帰結する。すべてのことには必ず何らかの説明が付与する。
……そのはずだ。
そのはずなのに、だ。どうして俺は今、自身の状況について何の説明もつけることができないでいる?
敷き詰められた石畳。レンガに固められた家々。初めて目にするガス灯。耳に流れ込んでくる音は、石を打つ蹄の音と、目の前で発さている流暢な英語。なぜか俺のことをエイゲート・ハリソンという探偵だと思っている人々。目を引くは大きな時計塔。名はロンドン塔。
そう俺は気づけば、19世紀のロンドンにいたのだった。
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