輪廻恋愛

三城 谷

時空を超えた百合

 この世界は歪んでいる。そう思ってしまう程、この世界は壊れている。何故ならそれは、目の前の景色が証明しているからだ。

 

 何も無い。あるのは破壊されてしまった道路。崩れてしまった建物と不可解に折れてしまっている電柱。視界に見える何を取っても、その全てが倒壊し、歪んでしまっているのだ。


 「……」


 この世界に生きている人間は、恐らくそう多くは無いだろう。それ程までに、この世界は衰退してしまっている。あるのは僅かな食料と水。この状況で生き延びる事が出来るのは、恐らく統率の取れた軍隊や他者を落とす事に長けた者だけだろう。

 

 自分が助かる為に他者を受け落とす事が出来る程、私は人間が出来ちゃいない。それでも出来る事はするべきだと思うが、出来る事が限られているのだ。


 「……あ~、もう死ぬかも」


 そんな事を呟く事が、どれだけ簡単な事かと思えてしまう。生きる事を続けるよりも、この場で死んだ方がどれほど楽なのかは自分が一番理解している。この状況だからこそ、生き延びて価値があるとは到底思えない。


 「……死にたいな」


 そう呟いた瞬間、目を疑った。それは天空から差し込む程の鋭い光に照らされ、そのそらを見つめて微笑んでいる妖艶な少女の姿を見つけたのだ。


 「っ……」

 

 彼女は小さく微笑みながら、まるで踊っているように……いや、実際に踊りながら優雅に舞っている。楽しそうに、荒廃した街でただ一人。太陽に照らされて笑みを浮かべている。


 「あ、あのっ……」


 そんな彼女を見た瞬間、私は耐えられずに声を掛けていた。声に反応した彼女は、踊りを止めてこちらを見つめてきた。再び笑みをまた浮かべると、近付いて来て嬉しそうな表情を浮かべて告げるのだった。 


 『やっとっ、会えた!!』

 「え?ちょっ……!?」


 突然と抱き締められた私は、動揺のままに言葉を詰まらせた。だが次の瞬間、彼女の言葉に耳を疑う事になったのである。


 『迎えに来たよ。――乃愛のあちゃん!!!』


 そのまま手を引かれ、私は彼女に連れて行かれたのである。天に昇るようなこの気持ちは何なのか。そんな事を思いながら、彼女から目を逸らす事が出来なかったのである。


 『往こう♪……乃愛ちゃん、私と一緒に。、ずっと一緒だよ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

輪廻恋愛 三城 谷 @mikiya6418

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ