グラウンドZERO

「見てっ!ちょっと、クウコさん!カゼハさん!見てください!」


のんびりとした木漏れ日の中、ジゼルがはしゃぐ声が木々の隙間を縫って響き、それに呼応するように、すでに飽きて木陰でモゥモのジャーキーをかじるクウコと、その木陰とジゼルたちのちょうど真ん中くらいの位置を常にキープしていたカゼハは、声の発生源に向かった。


「どしたの?ジゼル」「見つかった?」


「おふたりとも見てください!セイムさんの振り子が揺れてますのよ!」


「えっ!ミズキ・・じゃないよね?」「違うと思う・・・」


そこは、人の体よりも大きな黒い岩石が散らばる特に森が深くなっている場所だった。


「初めは、この黒い岩のせいかと思ったんです。でも」


セイムはそう言うと、鎖を短く持ち直して黒い岩の上によじ登り、そのうえで再び鎖をもとの長さに伸ばした。


「その場所だけなんです。振り子が揺れるのは」


「お宝かな!?」「掘ってみよ!」


「はい」


4人は、それぞれの手に爪を立てないように気を付けながら。最も反応の強かった地面を掘った。


たとえ当初の目的と違っていたとしても、肩が触れる程の距離で一生懸命共同作業に励むのは中々に楽しい。


誰一人、口には出さなかったが各々が、そんな似たような感情を抱いていた。


黒い土と茶色い土が何層かに重なる地面は、手で掘れるほど柔らかく。小石や粘土は、ほとんど含まれていなかった。


やがて、小さな積み木を縦に重ねたような四角い物が土の中から現れる。

4人は、お互いの顔を見合わせ、それから、セイムが振り子を近づけるとそれは、はっきりと円を描くように揺れた。


「発掘しちゃった・・・」


「セイム!早く早く!!」


「えっ・・・。はい」


7割ほど全貌をあらわにしたそれを、セイムが掘り出してゆっくりと大地から取り上げた。


「なんだか・・」「・・・・汚いね」


「いったい。なんなんでしょうかこれは?」


「わかりません・・・。人が作った物のようには見えますが。教会の博物館に行けば・・・もしかすれば何かわかるかもしれませんわ」


「ジゼル教会都市行った事あるの?」


「ええ、ええ!もうずっと前の事ですけどね」


「すごい、ねぇね!教会都市って道路ごと人が飛んで移動するとか、一日中昼間みたいに明るいとか、世界中の発掘品とか交易品とか特産物とか食べ物とか服が集まるってホント?!」


「道路の事は存じませんが、移動用のエレベーターやこの世界に芽吹いたありとあらゆる文化を研究し記録している機関はありましてよ?」


「すっごい!ミズキ見つけたら行ってみよっと!」


「これ。どうしたらいいでしょうか?」


セイムは、ほぼ解散してしまった3人の背中に質問を投げかけた。


3人は、発見こそが目的で品物には全く興味無しといった、生粋のリアリストのような無関心な態度になって教会都市の話に花を咲かせた。

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