(前)スカイ・ワールド・エクスプローラー!!
うなぎの
星の奇跡
この世界の出来事は、この世界の中だけで完結し。
決して、外の薄汚れた世界に干渉することは無い。
それは、ほんの少しだけ残念な事だが、その分、誰もが羽目を外して、普段は考えない他人の事考えたり、その逆をしたり出来るのだ。
プレイヤーの一人であるセイムは、そんなことを言い訳にしながら酒場の酒に口をつけるふりをして、華やかで、これから暑くなる季節に備え、ふんだんに肌を露出した給仕服姿の色とりどりの胸の谷間やチラリと見えるガーターベルトが食い込んだ太ももを眺めていた。
「光の溢れる、鮮やかな世界は。どうしてこんなにも素晴らしいんだろう・・・」
一日中楽団の演奏や談笑が止まないこの酒場は実に50サイクル以上も前にこの地に降り立った探検者が起こしたもので、もし、この世界に教科書や歴史書の類が存在すれば、きっとその人物の名前くらいは教科書の隅にでも乗っていたに違いない。
「セイムっ!どうしたの?!」
下界を見下す賢者のような気分に浸るセイムを、さらにその上から押しつぶすようにやってきたのはこの酒場の女中の一人で艶やかな褐色の肌を持つドロシーだ。
セイムの後ろを追い越して、前の椅子に掛けるドロシーは、闇の花の吸い寄せられるような香りを微かに漂わせている。
ドロシーは、セイムの様子を窺い、セイムは無言の要求を受け入れるように頷くと、また別の女中が何処からか現れて、テーブルにプレグジュースの入ったジョッキを運んできた。
小さな胸の谷間まで滑り込んでいる銀色の細い髪を後ろで束ねてから、ドロシーはジョッキのプレグジュースを勢いよく煽った。
「頂きまーす、っぷは!いつもありがとねん」
「ドロシーこの辺りにパーティの募集はありませんでしたか?」
「PT?ちょっとまっててね」
探検者の中には、単独で行動できるほどの実力を持った奴等もいるそうだが、セイムは、その低い能力ゆえ、一人でできる事と言えば薬草集めが関の山だった、さらにその薬草集めも、凶暴な野生動物のおかげで何度も現実世界に帰されそうになるほどだった。
悲しくもそれが彼に与えられた現実だった。
「キャスターキャスター・・・・。あっあったあったよっ!」
「本当ですか?!」
セイムは、実に久々に、体の隅々にまで血液が巡るのを感じた。
「うん!畑の草刈り!経験不要!レコード提出不要!!どう?!」
「ああ・・・。そうですか・・・」
セイムはガッカリ肩を落とし、それから悔いた。
そしてもう一度ドロシーに質問しなおした。
「ドロシー、PT検索、遺跡探検、開拓」
「そんなに、硬い言い方しなくてもいいじゃない・・・?いけずね」
ドロシーは、頬を少し赤く染めて、年齢相応に瞳を少しだけ潤わせて、彼女の体の一部でもある上質な金属と魔力で装飾されたグリモアを開き検索を開始した。
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