知識の館
天音川そら
序章
プロローグ
まどろみの中、トワはとある少女を夢にみる。
長い髪が印象的で、それは透き通るような黄金色。赤いアンダーフレームの眼鏡越しに見える優しい瞳。背丈は平均並みで、今にも壊れてしまいそうな程華奢な体格。
教室では笑顔を絶やさない彼女が、トワには弱音を吐く。どうすれば分からず、どうすることも出来ず、トワは言葉を失う。何を言えばよいのか、当時の彼には分からなかった——否、いま問われても反応に困るだろう。
彼女の持つ悩みはそれ程に大きなものであった。
黄昏時の海岸線。沈みゆく夕陽をトワは彼女と眺めていた。今にも肩が触れ合いそうな程に近い。でも、2人が顔を合わせることはなかった。
午後5時25分。次のバスが来るまで、十分に時間がある。
何を話せばよいのだろう。と、トワは悩んだ。彼女もどこか気まずそうに腕に巻かれたハンカチを眺めている。
「あのさ——」先に口を開いたのはどちらだったか。今となっては思い出すことも出来ない。
だが、はっきりとその言葉だけは覚えていた。
「わたしが人に見えますか?」
今にも泣きそうな表情を浮かべる、彼女の言葉を——
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