第15話


「アズ」


重たい足で歩く私にタクミ君が呼ぶ。

「アズ」


なにも言えない、言いたくない。



下を向く私。

タクミ君は優しく私の手を握りなおす。

いつもより熱い気がした。


「キスしてよ」

「・・・え?」

「キス・・して」

「キス・・・?」

「うん」

「・・・・」


「キス、しろ」


タクミ君は、私にそう言った。

私は後ろに一歩下がった。


だけど、タクミ君は逃がさない。


私の腕を引き、胸があたった。

タクミ君が優しい目をして、見下ろす。

タクミ君の手が熱く、少し震えていた。


少し背伸びをして 小さくキスをした。



タクミ君が「っふ」と笑った。

そしてなにも言わず、また私の腕を引き、歩き出した。


タクミ君の家に着き、タクミ君の部屋にきた。



ドアが閉まると同時に唇は塞がれた。


長いキス。

優しいキス。

舌が入ってくるキス。


ドアに背中が当たった。

タクミ君の傾けられた首が愛おしく、綺麗だった。


制服のブレザーを脱がされ、シャツのボタンに手がかかる。


タクミ君はキスを止めない。

首筋に唇を当て、息をする。


私は小さな声が漏れる。


綺麗で長い指は、下着に目掛けシャツを超えてくる。

乳首に触れ、そのまま後ろのホックを一瞬ではずしてしまう。


そのまま、ひょいっと抱えられベットに移動する。



「タクミ君」


私はやっと言った。

このまま流されてしまってはいけない、

そう思った。


タクミ君は私の上に乗ったまま、見下ろす。

シャツのボタンはまだ途中。


「なに」

「私・・」

その続きが言えない。


「俺としかヤらないで」

「・・・」

「俺以外の男とヤらないで」

「・・・・」

「俺だけとヤッテ」


そう言って、身体を重ねた。


いつもより、、

いや、今までに感じたことのないセックスをした。


身体の隅々まで タクミ君で満たされた。


終わってもまだタクミ君は私の身体に触れ続けた。

優しく、丁寧に。


「アズ」

「ん?」

「俺以外に、そんな顔見せるなよ」

「うん」

「俺以外に、そんな声出すな」

「うん」

「俺以外に、触られちゃだめ」

「うん」

「わかった?」

「うん」


タクミ君は、そう言うともう一度キスをした。


そして、服を着せてくれて、家まで送ると言ってくれた。



電車のなかでも手を繋いでいた。

駅について、改札を出る時も繋いでいた。


家まで歩く途中で何度もキスをした。



すぐ後ろにアキがいたなんて、私は全く気付かなかった。

そして、知ることもなかった。



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