第13話


成海は、なにを言いたいんだろう。

アキのこと?アキがなにか言ったのかな?

私のこと話したの?


昼休みになると、真っ先に成海のところに行った。

「成海!」

「おう、すぐ来た!」

「話ってなに?」


成海がビックリしてた。

私が超全速力で走ってきたから。



「お前さ、昨日アキとキスしてなかった?」

「え・・・?」

「してただろ?見たからさ」

「してない」

「うそつけ。俺がアキ見間違うかよ」

「してない」

「お前、先輩と付き合ってるくせに」

「・・・・」


成海は、中学の時に2度告白されたことがあった。

2回とも、アキに断ってもらった。

成海はずっといつもチャラチャラしてて苦手だったから。


成海が教室を出て、歩いて話すから、私もつられて歩いていた。

購買でパンを買ってそのまま屋上にいた。

「いいの?」

「なに?」

「俺、先輩に言うかもよ?」

「してないって」

「もう、いいから」

「だって・・・」


成海は私の顎を掴んだ。


「俺ともしてよ、アズ」

「は?なに言って・・」


成海の唇が私の唇を塞いだ。


「ちょっと!!!」

「そんな睨むなよ」

「なんで?!」


私がその場から逃げようとしたが、成海は私の腕を離さなかった。

「俺、アズのこと、今はもう好きじゃないよ」

「そんなのわかってるよ、前のことだし」

「でも、お前はいつでも欲しい」

「は?何言ってんの」

「マジだし」

「やめてよ」

「やめないよ」


成海がこわかった。

私を壊すのだと思った。

こわされる壊されるのは、嫌だと思った。


やっとタクミ君が好きで、大事だということに気づけたのに。

なんで、うまくいかないの。


もうどうしていいかわからなかった。

だけど、これでいいと思った。


成海の首に手を回した。

精一杯背伸びして、成海の唇にキスを。

長いキスをした。舌も入れた。


「これで、いい?成海」


タクミ君が可哀そうだと思った。

私が最低で、自分でも嫌いだ。



もう、これ以上自分を嫌いになりたくない。

タクミ君にこんな思い、させない。

なにも知られたくなかった。


もう、私はこのままではいられない。



今日の放課後、タクミ君と一緒に帰る。



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