第10話


タクミ君にLINE をした。


タクミ君は

「何食べた~?」

と返ってきた。


アキが言った言葉が頭によぎる。


‘‘もう 会えないね‘‘


なんで?

どういう意味?


アキが部屋を出て行ったが、アキの匂いがまだ残っていた。

携帯は部屋に置いたまま、部屋を飛び出した。


階段を駆け下りた。

アキともう会えないの?それは嫌!と思いながら、、、



アキは、リビングにいた。

お母さんと話していて、私が駆け下りてきたことに2人は驚いていた。


「アズ、なに?静かに降りてきてよ」

「・・・・・・・。」

アキの顔を見れない。


「あ、ちょっとコンビニ行ってくる」

「え?今から?なんで?」

「ちょっと、雑誌読みたくなって」

「あら、めずらし。気を付けてね」

「うん」


と言って家を出た。

とっさに嘘をついて出てきてしまった。


「アズ!」


アキが出てくると思って、アキの家じゃない方に向かって歩いていた。

けど、アキがこっちに来る。


無視した。

そのまま歩いた。


アキが後ろからついてくるのがわかった。


「アズ!」


「アズってば!」


「アズミっ」


アキが大きな声を出したので、立ち止まってしまった。


「アズ」

「・・・。」

「俺のこと追いかけてきたんだろ?」

「・・・・。」

「ちがうの?」

「ちがう」

「アズ、、」

「・・・。」

「これで最後にしよう」




と言って、キスをした。


長いキスだった。

優しくて、あたたかくて、心臓が張り裂けそうだった。



首に回されていたアキの大きな右手が 器用に私の髪の毛に触れる。

そして、首元にキスした。


「アズ、キス返してくんなよ」

「っは?!」

「アズが返すから長くしちゃったじゃん」

「返してないっ」

「返って来たよ」

「・・・・・。」

「その顔、何の顔なわけ?」

「・・・・・。」

「怒ってんの?」

「・・・・。」

「じゃあな、アズ」


そう言って、アキは後ろを向き、元来た道を歩き始めた。


もう、この人とは会わない。

もう、この背中を見送ることもない。

もう、この人の大きな手とか、長い指で触れらることもない。

もう、この人が髪の毛を結んでくれることも、ない。


もう、この人と キスもできない。



この人が、、、アキが、、、、いなくなる。



「アキ!」


私は涙が溢れて、ポロポロと流しながらアキを追いかけた。




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