主題:未来に希望はあるのか

アネモネ

プロローグ

遺書

疑問:人はなぜ生きるのか。

人によってその答えは様々だと思われる。

俺はこう答える。

理由はない。

そこでもう一つ、疑問が生まれる。

なぜ、今まで生きていたのか。

これに関しても、人によって様々だと思う。

ちなみに俺の答えは、本能だ。

本能とはどういうもので、どう働きかけていたのかと聞かれても答えることはできないが、本能だと俺は答える。

今まで生きた20年間、少なくとも最近までは死を意識することはなかった。

親が離婚しようが、ただ一人の弟が殺されようが、死のう、なんて思ったことはなかった。

ただ対処に翻弄され、ひたすらに悲しかっただけだった。

だって死んだら全てが終わってしまうだろ?

そんな根拠のない固定概念がずっと俺を蝕んでいた。

思えば、どうしてそんなことを何も疑わずに口から出ていたのか、理解に苦しむ。

しかし、これこそが本能の正体であると思う。

だって、死は逃げることだから。

だって、生きていれば必ず幸せは来るから。

だって、だって、だって…

ならば問おう。

死んだ後の人が、周りの評価を気にしてると誰から聞いた?

生きていて幸せが来るのは、どれくらい後の話か正確にわかるのか?

確証なんてないけれど、確かに信じている事柄。

これを本能と呼ばずに、なんと呼ぶのか。

そして、それについて考え出してから、俺の頭は今までにないほど回転しだした。

仮に、もし仮に死んだとして、その思考はどこへ向かうのか。

まっさらに消滅して、同じ人間としてまた道を歩むのか。

はたまた違う生命体として、人間ではない個体として生まれ変わるのか。

もしかしたら、地獄や天国があったり、幽霊になるかもしれない。

物語であるように、異世界に行けるかもしれない。

周りから見れば異常かもしれないが、そんな事を考えてる時間が俺にとって何よりも楽しかった。

俺の人生、一般的にみると少し不幸だったのかもしれないが、俺自身はそう思ったことはない。

学力に恵まれ容姿に恵まれ友人に恵まれ、家族という一点を抜かせば、別に困ったことはなかった。

いや、だからかもしれない。

困ることがなくて、日常がマンネリ化していた。

それが生き死にを考えるきっかけだったのかも。

あぁ、この遺書を読むすべての人間に伝えよう。

俺にとっての死は、希望だ。

「…なんてな。」

俺はくすっと笑って、希望ある未来へ一歩踏み出した。

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