第3話1日1回限定ガチャ箱は、1回まわすのにコインが1個は必要

1514年(永正11年)1月


 俺が転移したのは毛利家の拠点だった吉田郡山城の支城として造られた多治比猿掛城からそこそこ離れた山間にある廃村。中国地方の山間部にはよくある平家の落ち武者が開いた村だろう(たぶん)。ここ数年の天候不良で放棄したものと思われる。


「さて」


 とりあえず廃村中を駆け回って、ゴミといっても問題ない壊れた農具やら食器をかき集めてくる。なにしろ転移するときに貰えたのは、特典のガチャ箱とタブレット以外は何もなかった。つまり今の俺は真っ裸。パンツすらないフリーマン。神さまは非情である。

 元は村長が住んでいたであろう少し立派な建物の中でも辛うじて風雨が凌げそうな一室に入り込みアイテムボックスからガチャ箱を取り出す。見た目は小さな葛籠。

 蓋を取ってある程度の価値あるモノを入れるとガチャが引けるコインに変換してくれるエクスチェンジボックスでもあるらしい。


「よいしょ」


 集めてきたガラクタを葛籠の中に放り込んでいくと、底は見えるのに底に着く端からどんどんと消えていく。とても不思議。

 で、葛籠の蓋の端にあるカウンターがチョロチョロと上がっていく。

 このガチャ箱、基本は1日1回の限定だけど、最初の一回だけは10連らしいので、カウンターが10になるまで・・・

 ってカウンターが色別に5つある。上がっているのは一番端の鉄色のカウンターだな。

 あ、カウンターが10になってとなりの銅色のカウンターがひとつ上がった。

 ・・・これ、ガチャは1日1回限定だけど、エクスチェンジされたコインの価値で、出てくるもののレアリティが変わる奴じゃないか?


 俺は葛籠を抱えて一番ぼろい家に移動する。適当にコイン10個集めてガチャ作戦から、片っ端から葛籠にガラクタを突っ込んで一番高いコイン10個でガチャ作戦に変更だ。拠点作りで廃屋はいずれ整地するつもりだったしな。


『スキル解体【中】のレベルが上がりました』

『スキル剛力【中】のレベルが上がりましたレベルが10になりましたスキル剛力【中】がスキル剛力【大】に進化しました』


 廃屋のガラクタを持ち上げては葛籠に入れるという作業を繰り返していると、剛力というスキルが手に入った。剛力スキルで廃屋の廃材を適当な大きさに裁断していると解体というスキルが手に入った。

 再利用できそうな材木や家具、食器を選り分けていたら鑑定というスキルが手に入った。真っ裸で作業していたせいか豪胆というスキルが手に入った。変な称号がつく前に、手に入ったぼろ服を着込んだけどね。

 剛力、解体、鑑定、豪胆というスキルと家を3軒完全解体、日が暮れる頃に、葛籠の金色のカウンターは10を越える。


 で、エクスチェンジボックス付き1日1回限定ガチャ箱は、ガチャを1回まわすのにコインが1個必要だ。投入するコインの数や種類で排出されるレアの確率が変わるが、初回のみは10連。ガチャ箱を鑑定すると説明文が出るようになったので解ったことだけど、普通は曜日によってガチャで排出されるアイテムに偏りがあるらしい。では、ポチっとな。


SSR

鬼丸国綱

丈八蛇矛

SR

絹の反物

農耕セット(芋)

固定罠セット

R

防具3点セットA

防具3点セットD

C

綿の服2点セット

綿の服2点セット

火口棒


 なんというか、作為的なモノを感じるガチャ運だが、明日にでも戦に出れる装備が出たのは助かる。とりあえずコモンアイテムの綿の服2点セットである綿の下着と作務衣のような服に着替える。お股がすーすーしなくなった。ありがたい。火口棒は竹製の圧気発火器ファイヤーピストンだな。簡単に火が起こせるのは便利だ。


 レアアイテムは、額部分に金属板を縫いこんだ鉢巻(鉢金という)に剣道の胴のような硬い皮の鎧。鉄板の入った革の安全靴の防具3点セットのA。金属板を繋いだ手甲に剣道の胴のような硬い皮の鎧。革の脛あての防具3点セットのD。当分は鉢金、手甲、胴鎧、脛あて、安全靴、(これだけオーパーツだな)のフル装備で活用だな。


 スーパーレアの絹の反物はいざという時の献上品に使える。農耕セット【芋】ははねくり備中というテコの原理で土を掘り起こす農具とサツマイモの苗に植物生育というレベル1のスキルを封じた巻物。固定罠セットはトラバサミという踏んだら閉じて足を拘束する罠が5つと罠設置というレベル1のスキルを封じた巻物。食糧の定期確保の手段が手に入ったことになる。


 ダブルスーパーレアは太刀の鬼丸国綱と矛の丈八蛇矛。鬼丸国綱は鎌倉時代初期粟田口六国綱の作とされる名刀で、北条時頼が命名したのち北条高時、新田義貞、新田義貞の手を経て足利尊氏のモノになった足利家の重宝。丈八蛇矛は三国志演義で燕人張飛益徳が愛用した、先の刃の部分が蛇のように波打ったような長さが一丈八尺(約6メートル)の矛。それぞれに剣術と槍術のレベル1のスキルを封じた巻物が付いている親切ぶりである。さっそくスキルの巻物を解放して身につける。


 ステータスオープン!

名前 

年齢 15歳

性別 男

スキル

基礎:剛力【大】、豪胆

武術:

生産術:解体、鑑定

称号:なし


 名前と能力値の表記が無い。よくよく考えたら名前がないのは死んだのだから当たり前か・・・な?とりあえず名前は三四郎。そう死ぬ直前に思い浮かべていた漢の名前。顔も似ているからね。

 農家の三男坊で、成人する前に村を飛び出してきたという設定でいいか。武士になるなら、今ある名前はある程度は適当でいい。武士に仕えて活躍すれば名前は変わるからね。


「俺の名は三四郎」


 呟くと、ステータス画面の名前の所に三四郎と入る。思った通りだ。とりあえず安全靴を履いて蛇矛を脇にやり、それ以外のガチャで出たアイテムをアイテムボックスに収納した。

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