第59話049「ジュリオ・マキャヴェリ」
「ところでハヤト・ヴァンデラス。話を戻すがS級魔物は結局どうなったのだ? 気配は感じられないようだし、お前たちも軽傷程度ということはこの場からいなくなったのか?」
「ん? いや⋯⋯それは⋯⋯」
「わたくし⋯⋯いえ、わたくしとハヤトで倒しましたわ」
「「⋯⋯は?」」
ティアラとソフィア・ハイマンがパチクリと目を合わせる。
「い、いや⋯⋯それはさすがにないだろう⋯⋯S級魔物⋯⋯だぞ?
「そ、そうよ、ベロニカ。嘘でも言っていい嘘と言ってはダメな嘘があるのよ。つまり、今の嘘はあまり良いものとは⋯⋯」
「いや、ベロニカが正しい。S級魔物は俺たちが倒した」
「「そ、そんな⋯⋯嘘⋯⋯っ!!!!!!!!!」」
「ちなみに死体はあそこにボトボト転がってる肉片がそうよ」
ベロニカの言葉を聞いてソフィア・ハイマンがすぐにその場に転がっている肉片を調べた。すると、
「!? こ、これって⋯⋯⋯⋯もしかして倒したS級魔物とは⋯⋯⋯⋯クリムゾンオーク⋯⋯ですか?」
「ピンポン、ピンポン、ご名答っ!」
「う、嘘っ!? ク、クリムゾンオークですってーーーーーっ! そんなの⋯⋯あり得ない⋯⋯」
ティアラがベロニカの言葉に絶句する⋯⋯が、
「ハ、ハヤトが⋯⋯倒したの?」
「いや、トドメを刺したのはベロニカだ。まあ、俺がベロニカに魔力を一時的に譲渡したのだがな⋯⋯」
「ま、魔力の⋯⋯譲渡⋯⋯? そんなことができるの?」
「⋯⋯聞いたこともない、が⋯⋯これももしかして⋯⋯」
ハヤトの言葉にティアラとソフィア・ハイマンが驚きの表情をする。
「ああ。これも『自然界からの魔力供給』と同じ⋯⋯⋯⋯
「「!!!!!!!!」」
ティアラとソフィア・ハイマンがハヤトの言葉に驚く中、
「隠された技術?⋯⋯何の⋯⋯お話ですか、ハヤト?」
「「あっ!?」」
ハヤトの言葉に先ほどまでドキドキしながら会話していたベロニカがスッと真面目な顔になる。ティアラとソフィア・ハイマンがそのベロニカの態度の急変に「そんなこと喋っていいの?」といった緊張した面持ちでハヤトを見る。
「ティアラ、ソフィア先生⋯⋯問題ない。どうせ、ベロニカは俺の力の一端をすでに体験している」
ハヤトはティアラとソフィア・ハイマンの心配をよそに平然とした顔で二人を諭す。
「ハヤト⋯⋯その今言った『隠された技術』というのはどういうこと⋯⋯ですの?」
ベロニカがハヤトを探るような目をして質問をする。
「逆に⋯⋯ベロニカ。お前は俺の力の一端を受け取って何を感じた?」
「!? そ、それは⋯⋯⋯⋯あんな膨大で且つ、美しい魔力は初めて見ました。それに、自分の魔力を相手に渡すなど⋯⋯見たことも、聞いたこともありません」
「だろうな」
「教えて⋯⋯いただけるの?」
「構わん」
そう言って、ハヤトが説明しようとしたその時、
「皆さん、ご無事ですか?」
その場にいた皆がその声の主に目を向ける。
「やあ、皆さん。よくぞ、ご無事で!」
「カルロ・マキャヴェリ⋯⋯⋯⋯と」
そこに現れたのはカルロ・マキャヴェリだったが声の主は別の者であった。
「「「「ジュリオ・マキャヴェリ⋯⋯様っ!」」」」
カルロの横に立っていたのは、カルロの兄であり、また、アリストファレス防衛学院の生徒会長ジュリオ・マキャヴェリだった。
「やあ、皆さん。どうやら無事のようですね。それと⋯⋯初めまして、ハヤト・ヴァンデラス君。入学式以来ですね」
「⋯⋯」
「私が挨拶しているのに無言⋯⋯ですか? 相変わらず常識知らずの男で何よりです」
「⋯⋯それはどうも」
四大公爵家の中で王族に対し最も影響力を持つマキャヴェリ家長男ジュリオ・マキャヴェリの視界は、確実に「ターゲット」としてハヤトのことを捉えていた。
「我が国、アリストファレスの国王であるジャンノアール・アリストファレス様を呼び捨てにする男⋯⋯また、
「⋯⋯」
二人はお互いを探るような厳しいまなざしで対峙する。そして、その対峙する二人の圧力に周囲は唾を飲み込む音さえも憚れるようなピンと張り詰めた緊張感に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます