第34話025「驚愕の種明かし」



「いくぞ、ハヤト・ヴァンデラス!」


 ゴォォォォォ!!


「「「「うわぁぁ〜〜〜!!!!!」」」」

「「「「きゃぁぁ〜〜〜!!!!!」」」」


 そう言うと、ソフィア先生が魔力を解放した。


『魔力解放』とは、S級魔術士クラスSA級魔術士クラスAといった魔力量の多い魔術士が普段の生活で魔力が過度に漏れないよう『蓋』をしているものを取っ払うものだ。当然、S級魔術士クラスSのソフィア先生であれば『魔力解放』は当然行うのはわかっていたので俺たちは身構えていたがS級魔術士クラスSの魔力解放の威力が予想外だった為、俺たちはその魔力解放の衝撃に驚愕する。


「⋯⋯」


 ハヤトはそんなソフィア先生の魔力解放には動じていない⋯⋯ように見える。


「準備はいいか、ハヤト・ヴァンデラス?」

「ああ、問題ない」

「では⋯⋯⋯⋯ゆくぞっ!!」


 ソフィア先生が魔力解放と同時に身体強化で引き上げた超加速でハヤトに迫り拳を繰り出す。一瞬で勝負がついかと誰もが思ったが、しかし、ハヤトはその動きに反応し拳を躱した。


「おおおおお⋯⋯っ!」


 だが、ソフィア先生は一発で終わることなく連撃でハヤトを襲う⋯⋯⋯⋯が、ハヤトも信じられないことにその連撃をすべて躱している。ちなみに俺たちは皆、ソフィア先生の拳が何発飛んでいるのはまったく視認できておらず、ただ数十発ものパンチが放たれているだろうぐらいにしかわからない。しかし、


「う、嘘だろ⋯⋯ハヤトの奴、魔力で身体強化されたS級魔術士クラスSの攻撃を躱しているぞ?」

「あ、あれだけの連撃を見えるだけでも凄いのに躱すなんて⋯⋯⋯⋯何がどうなってんだ?」


 俺も含め、皆が下級魔術士ジュニア程度の魔力しかないハヤトが身体強化したS級魔術士クラスSのソフィア先生の連撃をすべて躱していることに驚愕を覚える。すると、ここでソフィア先生が拳を止め、一旦後ろへと下がった。


「信じられん⋯⋯いくら体術を得意としていると言ってもS級魔術士クラスSの連撃を躱すとは。いろいろ聞きたいことがあるがその前にもう少し相手をしてもらうぞ?」

「望むところだ」

「はぁぁぁ〜⋯⋯⋯⋯」


 ソフィア先生がハヤトに向けて火属性魔術を繰り出そうと火の塊をみるみる増大させていく。前の授業のときとは比べ物にもならないほど大きい。


「バーニングショット!」


 ゴウッ!


 強大に膨らんだ火の塊が物凄い速度でハヤトに迫った。


 誰もが『下手したらハヤトが死ぬ』そう思った。しかし、


「スウィングストーム」


 ハヤトが右手をかざして風属性の魔法スウィングストームを放った。通常、下級魔術士ジュニア程度のスウィングストームは少し強い風で相手を吹き飛ばす程度だが、今、ハヤトが放ったスウィングストームは今まで見たことがないほどの⋯⋯⋯⋯『巨大な暴風』だった。


「なっ?! なんだ! そのスウィングストームの威力はっ!!!」


 ソフィア先生を驚愕させたその巨大なスウィングストームはソフィア先生の炎の塊であるバーニングショットを巻き込み、上へと舞い上がらせ消失させた。


「な、何が⋯⋯何がどうなっている⋯⋯」


 さすがのソフィア先生もハヤトのそのスウィングストームを見て愕然とその場に立ち尽くす。それはそうだ。下級魔術士ジュニアのハヤトがS級魔術士クラスSのソフィア先生のバーニングショットを完全に防いだんだから。


「どういう⋯⋯⋯⋯どういうことだ、ハヤト・ヴァンデラス。お前、本当に下級魔術士ジュニアなのか?」


 さっきまでの動揺を少し落ち着かせたソフィア先生がハヤトに問い正す。


「もちろん下級魔術士ジュニアで間違いない。ただ⋯⋯」

「ただ⋯⋯なんだ?」

「ただ、俺は⋯⋯⋯⋯魔力を体内からではなく『周囲から』魔力を取り込んでいる」

「な⋯⋯っ!?」

「「「「えっ?!」」」」


 皆がハヤトの言葉の言っている意味がわからなかった。いや、わからないわけではないが、でも、そんなの⋯⋯、


「しゅ、周囲だとっ!? バ、バカな! そ、そんなことができるわけ⋯⋯⋯⋯いや、しかし、そうでもしないと⋯⋯」

「そうだ。下級魔術士ジュニアの俺がソフィア先生の物理攻撃や魔術を防いだ道理が通らないだろ?」

「し、しかし!? そ、そんなの⋯⋯⋯⋯聞いたことないぞっ!!」


 ソフィア先生が再び動揺しながらハヤトに迫る。


「ああ、そうだろう。なんせこれまでずっと自分の中にある魔力だけで魔術を使うことしか⋯⋯教えられていなかっただろうからな」

「!? そ、それはつまり⋯⋯⋯⋯お前のその周囲から魔力を取り込むやり方はずっと隠されてきたとでも言いたいのか?」

「そうだ。そして俺はこれまで隠されてきたこの『魔力の取り込み方』を皆に教えるつもりでいる」

「し、しかし⋯⋯そんなことが私や他の者にできるのか?」

「できる。まあ具体的に言えば『魔力がある者』であれば⋯⋯だが。ただ、学院ここに通っている学生なら皆多かれ少なかれ魔力は持っているだろ? なので、基本、学院の生徒であれば誰でも身につけられると思う。まあ、身につけるスピードに個人差はあるだろうがな」

「?! な、なんと⋯⋯」

「「「「マ、マジかよぉぉぉ〜〜〜〜!!!!!」」」」


 ソフィア先生がショックを受ける横で俺たちは絶叫した。


 それはそうだ。あのハヤトが放ったS級魔術士クラスSレベルの魔術を俺たちにもできる可能性があるっていうんだ。今まで魔力の少ない自分に絶望していたところにこんな大きな希望が出てきたんだ。興奮しない道理などない。


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