第31話022「演習スケジュール」



「では、これより演習のスケジュールを説明する。しっかり聞くように!」


 ソフィア先生に怒られた俺たちD組が列に並ぶのを確認すると、俺たちの担任アイドル『マリアちゃん』ことマリア・ウィンスター先生が演習スケジュールの説明を始めた。マリアちゃん、頑張れー!


「では、これより演習のスケジュールをご説明します。まず演習期間は全部で三日間です。一日目は各クラスごとに課題を用意してありますのでその課題を取り組んでもらいます。二日目は⋯⋯」

「「「「マ、マリアちゃんがめちゃめちゃ先生っぽいことしているっ!!」」」」


 俺たちD組のメンバーは普段のホームルームでのマリアちゃんしか見ていない。なので、正直、この演習スケジュールの説明がちゃんとできるのか不安だったのだが、想像以上に『先生している』のを見て驚愕した。


 ちなみにマリアちゃんの専門は『魔道具士』なのだが、魔道具士の授業は一年の後半から始まる為、マリアちゃんの授業は受けたことがなかった。なので、まさかこんな『できる先生』とは知らなかったのだ。


「二日目は各クラス対抗のチーム戦を行います」

「「「「チ、チーム戦⋯⋯っ!?」」」」


 ざわざわ⋯⋯。


 周囲が少しざわつく。無理もない。


「もちろん! 対戦する際、上位のクラスには『ハンデ』をつけて下位クラスと互角になるよう調整します。このチーム戦の趣旨は『力量差がある中での対戦』や『力を制限された中での戦い方』などを学ぶ為にありますので勝ち負けよりも『経験』を重視した演習なので問題はありません」


 なるほど。確かにその経験を今のうちから得られるのは大きい。


 俺たちD組は魔力が少ない分、体術や戦術で補うしかない。その体術や戦術が魔力を豊富に持つ上のクラスの連中相手にどこまで通用するのか確かめるには持ってこいの演習だと思う。


「そして最終日の三日目は、『結界』の外に出て実際に魔物を相手にしてもらいます」

「「「「ま、魔物相手に⋯⋯っ!」」」」

「大丈夫です。『結界』の外だとしても結界近くの魔物であれば最大でも『C級程度の魔物』程度しかいないので下級魔術士ジュニアでも対応できます。また、森の奥に行けば行くほど強力な魔物がいるので、ここでもクラスの力量に合わせて森の奥へと移動して魔物を狩ってもらいます」


 ま、とりあえず俺たちD組は結界近くの魔物を狩ればいいわけだからとりあえずは問題ないな。


 いや⋯⋯待てよ。もしかしてハヤトが、


「ライオット。もう少し手応えのある魔物を狩りにイカないか!」


 なーんて言い出さないだろうか?


 いや、でも、ハヤトは別に『実力を試したい』という感じはないからな〜⋯⋯まあ、大丈夫かな。


 多少の不安はあるが、これまでのハヤトの言動や行動から推測すれば無茶なことはしないだろう⋯⋯と俺は自分で自分を安心させた。


「ちなみに⋯⋯魔物の課題が終わった後は懇親会を用意してあるので皆さん三日間頑張ってくださいね!」

「「「「おおおおおお〜〜〜〜〜!!!!」」」」


 マリアちゃんの最後の言葉にほぼ全員が歓喜の声を上げる。無論、俺も例外ではない。


 しかも、もしかしたら演習が終わった後の週末には『合コン』ができる可能性もあるし⋯⋯いや〜、ハヤトに出会えて本当によかった。


「うるさい! お前ら静かにしろっ!!」


 シーン。


 ソフィア先生が喝を入れると一瞬で皆が静かになる。


 うん、だってソフィア先生怖いからね。


「では課題を始める前に各クラスの魔術担当官を紹介する⋯⋯」


 まあ、だいたい、一クラス15〜20人はいるから、さすがにソフィア先生一人で見るのには無理があるよね。となれば、おそらくソフィア先生は担当クラスであるA組を見るは⋯⋯、


「A組はエンリル先生、B組はマロン先生、C組はゴーシュ先生、そしてD組は私が担当する、以上っ!」

「「「「!!!!!!!!」」」」


 はぁ〜〜〜〜〜???


 ソ、ソフィア先生がD組担当っ〜〜〜!!


 確かにマリアちゃんは『魔道具士』専門だから別の魔術担当の先生が来るとは思ってはいたがまさかソフィア先生⋯⋯て。これには俺たちはもちろんだが他のクラスの生徒も動揺しているようだった。


「お、おい⋯⋯ソフィア先生ってA組の担任だろ? なのに今回の演習はD組担当ってまさか⋯⋯」

「あ、ああ⋯⋯もしかしたらハヤト・ヴァンデラスアレが原因か?」

「そ、それって、もしかして⋯⋯復讐?」

「あり得るな。いくら先生が手加減したとはいえ下級魔術士ジュニアのハヤト・ヴァンデラスが先生の攻撃を防ぎ渡り合ったんだ。それをソフィア先生が面白くないと思っても普通なんじゃないか?」


 パンーーーーーっ!!!!!!!!


「「「「ビクッ!!!!!!」」」」


 ソフィア先生の柏手かしわでで皆が会話を止める。


「お前ら一つ言っておくが、この配置は別に私の私怨などは関係ない。この配置の目的は一番鍛え上げる必要があるクラスをこの演習で集中的に鍛え上げ、能力の向上を図ることが目的だ。まあ⋯⋯今のようなくだらんことを言える余裕があるのは今だけだがな」


 そう言ってソフィア先生が不敵な笑みを浮かべた⋯⋯⋯⋯特にD組に向けて。


 先生の言っていることは納得のいくものだったが、しかし、それでもハヤトのことがまったく関係ないということはないだろう。


 いや〜⋯⋯『ハヤトに出会えて本当によかった』と言っていた数秒前の自分を殴りたい。


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