第7話 レア・スキル保持者
『
そう、コレこそが、僕が神様から与えられた唯一のギフトだった……。
全ての始まりは10年前の選定の儀……。
僕が発現したスキルは、未発現のレア・スキルということもあって、当時はかなり話題になり、それこそ神殿は元より
それこそ身体能力向上の有無、魔法力発現の有無、あらゆる武具の装備の是非……。そして、それらはアイテム、ついには呪われた武具に至るまでと……。それはもうありとあらゆる方向から……。最早、人体実験に近いようなことまでも強いられ……。二年近い年月を擁して徹底的に調べに調べられた結果……。
導き出された結論はというと……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
レア・スキル……
効果
素直なイイ子になる。
副作用
非常に騙されやすくなるため、詐欺被害等に遭わないよう細心の注意が必要。
信頼できる然るべき友人、家族、又は配偶者が常に気を配る必要あり。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
結局、ソレ以上のことは何一つわからないまま、調査は終了することとなった。
この新たなレア・スキル発現に伴い、人類の更なる可能性を見出すことが出来ると狂喜乱舞していた大人たちの落胆は大きく、中には僕を蔑み見下した挙句心無い言葉を投げかけてくる大人たちまでも出てくる始末だった。
そして、興味を失うと同時に一人、また一人と村を後にしていき、ついにはこのレア・スキルについて口にする者すらいなくなってしまった。
そしてスキル発現以降、自分としては騙されている自覚はないんだけれど幾度となく騙され続けた(?)挙句、身ぐるみ剥がされること十数回……。巧みな話術に騙され(?)誘拐されること十数回……。他にも、ひょっとしたら僕自身が気付いていないだけで、未だに騙され続けていることもあるのかもしれない。
とまぁ、傍からしたら見え見えの嘘(?)と思えることまでもが、あたかも真実であるかのように思え疑うということを忘れ去ってしまうのである。
でもでも、そんなスキルであっても僕はこのスキルのことを疎ましく思ったことはこれまで一度もなかった。
それは村からの去り際に、あの日、僕のスキル発現の儀を執り行ってくれた
「リック・リパートン。今回の件で一番ショックを受けたのは他ならぬアナタでしょう……。しかし、かといって発現したスキルを憎むようなことがあってはなりませんよ。何故ならば、アナタがこのスキルを賜った事には必ず意味があるからです。神は無意味な行いはせず、人に恩恵がない行いもしません……。今はまだその本当の意味は分からなくとも、いつかきっと何がしかの形で答えが見つかることでしょう……。ですからアナタはアナタのまま、このスキルを発現したことを誰に恥じるでもなければ、むしろ誇りにすら思い、自らの信じる道を思うがままに進んでいきなさい……」
その言葉を信じ、僕は今日まで冒険者を志し生きてきた。
それこそ、お伽噺にあるような『勇者』さまになりたい! 等といった大それたこと考えるのでもなければ、ただ漠然とではあるが、冒険者になりたい! ただその一念でのみ走り続けてきた。
そして15歳になったのをきっかけに、僕は憧れ続けてきた冒険者に成るべく家出同然で
そして街へつくなりその足でもってすぐさまギルドへ赴いたところで、幼馴染のチャモアとの再会……。彼の
「
「ハァッ⁉ す、素直な、ボーヤ……?」
「…………――プッ‼」
「「「「「ギャハハハハハハハハハハハハハッ♪ な、何だ、そりゃああああああああああっ♪」」」」
「へへ、そりゃあ笑っちまうよなぁ? でも、ある意味じゃあ、お人よしのこいつには持って来いのスキルだったのかもしんねーけどな♪ なんせあれ以来、タダでさえお人よしだったお前が輪をかけたように騙されるようになったんだからな♪」
チャモアの意味深な物言いにほんの僅かに引っかかるもの感じつつも僕は為す術なくその場に立ち尽くしていることしかできなかった。
甦ってきた過去のトラウマに加え、場の空気に飲まれすっかり平常心を失いかけてただ呆然と立ち尽くしていたところへ、チャモアがゆっくりと近づいてくる。
「……え? あ、な、何? ち、チャモア? い、一体何を……?」
「あぁ~ん? 何って、そんなの決まってんだろ? ――こうするんだよっと♪」
――ガチャ
完全に油断していたこともあってか、あろうことか腰回りに帯剣していた僕の剣は鞘から抜き取られてしまった。
「なっ⁉ ち、ちょっと、チャモア⁉ い、一体何のつもり……?」
チャモアのこの突飛な行動に気が動転しつつも、すぐさま慌てて手を伸ばすも、
「――っ、か、返してよっ‼」
「おぉ~っとぉ♪」
――スカ
僕の手は虚しくも空を掻いた。
「ん~~~? へ~、安物の割には手入れだけは欠かしてなかったみたいだなぁ~。オッシ、丁度いい。
「め、迷惑料って……。そ、そんな……。そ、それに、
「あん? そんな心配、お前にはもう必要ねーだろ?」
「え? そ、それってどういう……?」
チャモアの言っている意味が分からずすぐさま聞き返してみるも、
「だってそうだろ? 何たってお前は、これからは剣じゃなくて
「…………へ?」
「分からねーか? じゃあ、ハッキリ言ってやんよ。ま、所詮はお前に冒険者の器じゃあなかったってことだよ……。この際、冒険者なんてすっぱり諦めちまって村にでも戻って畑でも耕すってのはど~よ?」
「なっ⁉ ふ、ふざけ――」
チャモアのその余りの言いように、思いがけずカッとなって噛みつきかけるも、
「私もその方がいいと思う……。いつまでも未練がましく剣なんか持ってたって意味なんてないと思うなぁ……」
「異議なしぃ」
そこにいたのはかつて(?)の仲間たちの姿。その目には皆一様に侮蔑の色が滲んでいて……。
「うぅっ、み、皆まで、そ、そんな……」
そんな仲間たちの視線に晒され、只々みっともなくも狼狽えることしかできないでいる僕の肩にポンと手を置いたかと思えば、チャモアが言い放った。
「ま、そういうことだからよ……。ココは素直に俺の忠告を聞いておけって。なっ、素直で良い子なリックさんよぉ~♪」
「「「「「――プッ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ♪」」」」」
チャモアの皮肉たっぷりのセリフに
「――くっ‼」
――ダッ‼
結局、僕は言い返すでもなければ、剣を奪い返すでもなし……。居てもたってもいられずこの場から逃げ出すことしかできなかった……。
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