第27話 手紙

「あ、お帰りなさいリックさん♪ 珍しく今日はお早いお帰りですね?」

「あ、お仕事お疲れ様です、ナタリーさん。ええ、そうなんですよ、結構汗とか返り血で汚れちゃったんで……。一旦部屋に戻ってシャワーでも浴びてから食事に行こうと思いまして……」

「そうだったんですか。確かに言われてみれば……。うわぁ~~、返り血とかも凄いですけど、鎧も随分ボロボロになっちゃってますもんねぇ~」

「あ、いえ、鎧は、元々こんなんですけどね……」

「へ?」

「………………」

「………………」

「――あっ、ご、ごめんなさいっ‼ わ、私、つい本音が出ちゃって……。――あっ⁉」

「アハハハ……。ほ、ホント、き、気にしないでください……」


 気まずい雰囲気も、最後まで笑顔で通すことができた――。



「――……うぅ、あれってやっぱり、ナタリーさんも聖鎧ラグナヴェルグのことをぼろっちぃって思ってたってことだよね?」


 余り気にしないようにはしていたんだけれど、この間のエリサちゃんとのことを未だ引きずっている自分がいたようで。


 そんな気落ちした重い足取りの中、ナタリーさんと別れた後、階段を上り部屋の前までやってくるなり溜息とともに部屋の鍵を開けドアを開いたその時だった。


 ヒラリ、ヒラリ……。


 ドアをあけ放つとほぼ同時に、何やら手紙らしきものがヒラヒラと舞い落ちて来て……。


「え? 手紙?」


 何とはなしにその手紙を拾い上げ、改めて差出人及び宛名を確認してみるも、


「あれ? リック・リパートン……。間違いない、僕宛だ……」


 そこには間違いなく、僕の名前、リック・リパートン様へと書かれていて……。一方で、差出人についてはどこにも名前が記載されておらず……。


 正直、僕としては全くといっていいほど心当たりがなかったんだけれど……。兎にも角にもいつまでもこんなところでボーっとしてるのも如何なものかと、とりあえず部屋に入ってから考えようと僕は部屋の中へと入るなりドアを閉じていった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る