旅立ちの準備

八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラはコルサント城下町にある自宅にて

旅立ちの準備をしていた。


「すまぬな、 ソーラ殿」


序列八十四位『熊手』のジェンパが礼を言う。

ソーラに準備の手伝いをして貰っているのだ。

八十八剣聖は下位と上位で扱いに差が有り、 下位に与えられる物も大した事は無い。

事実ソーラの自宅は普通の民家と大して変わり無い物である。


「構わないよジェンパ殿、 貴方は実家への仕送りが大変だろう」

「あぁ・・・八十八剣聖になれば安泰だと思っていたが

給金が一般将校と変わり無いとは・・・」

「うむ、 我々の事を軽く見ている証左だな、 許せん」


一般将校でもそれなりの給金を貰えるが、 ジェンパの実家は子沢山であり

かなり苦労しているのだ、 更に八十八剣聖だからと

立派な格好をする事を求められ、 出費もかさむのだ。


「これなら地元に居た方がマシだった」

「そういうな、 出世するのはこれからだ、 身勝手な行動だが

我々が手柄を立てれば陛下も認めざるを得ない」


コンコン、 と家の外からノックされる。


「・・・・・」

「誰でしょうか? ソーラ殿の知り合いでしょうか?」

「いや・・・俺を尋ねる者は宮廷からの者だろう・・・一応準備した物を隠して下さい

談笑していた事にしよう、 もしかしたら我々の行動がバレたのかもしれない」

「そうしましょうか」


準備していた物を隠しドアを開ける、 そこには帝国の伝令が居た。


「・・・如何した?」

「ハッ!! 陛下から出頭命令が来ています!!」

「出頭命令? 何故だ?」

「鶴帝国八十八剣聖序列九位『ガントレット』のウィンドゥ様が討たれたとの事です!!」

「「何だと!?」」


二人は驚いた、 『ガントレット』のウィンドゥは攻撃範囲がほぼ素手の時と変わらない事が

ネックだが彼の実力は非常に高い。

過去50年、 序列一位に留まっている伝説の剣聖『聖剣』ヨーダと

模擬線とは言え引き分けた事が有る。


「信じられない・・・」

「つきましてはウィンドゥ様の国葬の為に

八十八剣聖全員を招集せよとの陛下からの命です!!」

「分かった・・・参列しよう・・・しかしウィンドゥ殿は調査に向かった筈だ

その時に他の剣聖も同行していた筈・・・他の剣聖は如何したんだ?

彼等も死んだのか?」

「いえ、 彼等を置いて一人で先行して戦死したとの事です!!」

「そうか・・・彼らしいな・・・

分かった、 喪服を買い次第向かおう」

「分かりました!!」


ソーラとジェンパは一旦葬式用の喪服を購入してその足でコルサント城に向かったのだった。

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